日本橋濱町Weblog(日々酔亭)

Quality Economic Analyses Produces Winning Markets

柳田由紀子著『宿無し弘文ースティーブ・ジョブズの禅僧ー』:<転依>考えぬくことで次がある

ジョブズの伝記を読んだ時から気になっていたジョブズ禅宗の関係。

mnoguti.hatenablog.com

mnoguti.hatenablog.com

伝記を読んだ感想を書いたブログの記事でも、1回目は「洗練を突き詰めると簡素になる」、2回目は「すべてが一体となって機能する」と見出しをつけていて、いかにも東洋的な思想に影響を受けたことがあるようなものになっている。

Apple製品

Apple製品の思想的背景には東洋的思想、禅の考えがあると言われている

それで当時気になっていたのが、「ジョブズの禅」という翻訳本。これを購入して読んでみようかと思っていたら、もっとすごい本が出たではないか。

ゼン・オブ・スティーブ・ジョブズ

ゼン・オブ・スティーブ・ジョブズ

 

それが今回読んだ乙川弘文の生涯、日本での弘文と米国での弘文をインタビュー記録を中心にして描いた本書だ。

 

日本での弘文、米国での弘文、まったく違う弘文がそこには存在して、それが矛盾なく存在するために彼に何があったのか、両極端の評価をうける弘文をどう理解すればいいのか、その答えを探すために日本をはじめ、米国、欧州の禅寺や関連施設で関係者にインタビューをしつつ、思索を回らす。

宿無し弘文 スティーブ・ジョブズの禅僧

宿無し弘文 スティーブ・ジョブズの禅僧

 

それが時系列にならんで、インタビューを受けた人が話すような文体でずーっと書き綴ってある。著者が表に出てこないこの形態は自分にとってはインタビューを受けた人と読者である自分が対面するような感じで読み進められるので考えながら読むという点で良かったと思う。

  • プロローグ
  • 旅Ⅰ 第1章 激賞と酷評と
  • 旅Ⅱ 第2章 生い立ちから渡米まで
  • 旅Ⅲ 第3章 アメリカで、ジョブズと出逢う
  • 旅Ⅳ 第4章 追うジョブズ、追われる弘文
  • 旅Ⅴ 第5章 ジョブズと離れヨーロッパへ
  • 旅Ⅵ 第6章 最後の日々
  • 旅Ⅶ 第7章 乙川弘文の地獄と手放しの禅
  • エピローグ
  • 旅 最終章

全体はプロローグやエピローグの他、最終章まで8章立てになっている。インタビュー中心の内容で、その中に著者の思いがよぎる。永平寺では将来を期待され、京都大学大学院でも学問としての宗教に真摯に向き合い、一生独身を誓い、仏教を極めることを目指した弘文。

 

それが米国に行った後は全く別人のような生き様になる。そこに何があったのか、著者の思索は、数々の関係者へのインタビューを通し、続けられる。

最後までそれは分からないままかと思ったが最後の最後で著者は一つの回答にたどり着く。これが正解かは分からないが、転依(てんね)を経た前後の弘文、そのきっかけが米国に渡った直後の引きこもりであったこと、ジョブズも弘文との交流が密だった、Appleを離れていた時期に転依を経験したのではなかったか*1・・・最後に著者がたどり着いた見立て。なるほどなあと納得しながら最後の数ページをめくった。自分に転依はあったのか?とか考えたりしながら。

 

正直、読んでいって最後の最後で「あっ!」という感じだった。そういうことかということ・・・この本は最初から順番にじっくり読むのがいいと思う。

 

*1:ジョブズ復帰後のiPhone以下の製品ラインができたのは、布教活動において弘文のすべてを受け入れるという生き様、考え方が、ジョブズに乗り移り、Apple製品の徹底したマーケットインの発想、顧客重視の姿勢、それがデザイン重視へと繋がっていたように思える。

観察手段としての分類学(整理学)と状況を説明するための分析ツール

調査、研究、コンサルなどの商売は、クライアントの問題意識を理解するために同じ目線で対象を見て、考えることが必要だが、それだけではクライアントと同レベルの思考しかできない。それでは商売にならないので、プラスαを付け加える必要がある。そのためには、分類手段と分析ツールを持つことが一つ考えられる。

 

調査対象が与えられれば、まずはその対象を観察することになる。

一見複雑な観察対象の構造を解きほぐすのが最初になるが、その時、観察対象の構造をどう捉え、どう分類するかがポイントになる。その構造を把握し、分類する方法はいろいろあるが、それを磨くためには、定点観測*1がいい。

そしてそれを他のいろいろな分野に応用していくことで、調査対象の構造を把握する手段が磨かれ、アウトプットの質が上がることになる。

体系的な分類手法

体系的な分類手法を持つことは自らを助ける

この時、手離れ良く、同じ分類方法が応用できる場合は少なく、分野が変わればいろいろ課題が出てきて、工夫が必要になる。その課題をクリアしていくことにより、分類方法の適用範囲を広げることができる。そうすると、初めての分野でもどこを見て整理していけばいいかあたりを付けられるようになる。そこまでできれば、課題に沿うように分類のフレームを修正していけばいい。この繰り返しが、ノウハウとして蓄積されていくことで調査対象の状況を確認する際の量と質が改善される。

社会科学の考え方―認識論、リサーチ・デザイン、手法―
 

分類、構造の体系化を意識しながらできるかがポイントだ。最初から情報が取れる取れないにとらわれ、取れる情報でどうまとめるかという思考を続ける限り、調査対象の状況を確認する際の質の向上は望めない。

 

さて、その次の段階になると、その構造を成り立たせている要因や関係性を分析することになる。これにはいろいろな学問分野の知見を応用することになる。当然、何らかの専門分野を持ち、その視点から分析することになるが、専門的な視点、視野を持つことによって、他の分野の物の見方も理解しやすくなる。一つの分野を掘り下げることによって、横にも広がりが持てることになる。

これも日頃から分析する際、意識することでより質を高めることが可能になる。定点観測するためのノウハウと、分析ツールとしての学問の専門領域に関する知識、どちらも大切だと思う。

 

これをビジネスとして考えた場合、全部をやる必要があるのかというのは検討の余地がある。最初の分類を外のリソースを使ってやることもあるし、分析について外の力を借りることもある。それは個人や組織として何を目標にするかに関わってくるが、理想は、観察し、分析できるようになることだろう。

個人的には、分類できて、構造が明らかになったら、その構造を分析してみて、何が言えるのか考えたいから、やはり両方できるようになることが目標になる。片方だけに絞るにしても、全く知らないというわけにはいくまい・・・と思う。

 

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*1:なぜ定点観測がいいかはここではあえて触れない。

北軽井沢での在宅勤務は可能か?・・・可能だけど今はできないことが判明^^;

この8月最後の週末に北軽井沢に来た目的の一つにこちらので在宅勤務の可能性を確認するものがあった。今までもこちらに来たとき仕事を持ってきて少しやったことはあるが、それは仕方なくしていたこと。在宅勤務となれば、通常の業務をやるということで切迫感が違う。通常の仕事をこの気持ちのいい高原でできるのかを確認。

 

結論から言えば、できないことはないというところか。やはりこの気候の中で仕事に没頭できるのがいい。そして周りには誰もいないので、あくまでも自分のペースでできる・・・と思う。

北軽井沢 在宅勤務 シミュレーション

北軽での在宅勤務をシミュレーションしてみた

一方、写真は在宅勤務する際のその場所を写したものだが、キッチンだ。居間だと座卓しかなく、それだと床に座ることになるので、長時間の仕事には向かない。座卓は炬燵なのだが、少し低すぎる・・・10センチぐらい脚をつけたし、かつ、その高さにあった座椅子が必要だと思う。

 

そこで現状の設備を考えると、キッチンのテーブルを作業場にするのがこの場所では最適だという結論に達した。下の写真はその場所にMacBookProとiPadProを設置し、作業をする際の机上の様子を写したもの。MBPの下にタオルを敷いているのは、MBPの底がどうも変形しているらしく、妙にガタゴトするためだ*1

Mac Book Pro iPad Pro 完全対応

Mac Book ProとiPad Proで完全対応w

これなら食卓を広々と使えるので、資料があってもスペースに困ることはない。実際は、MBPとiPadをMagicconnect*2で研究所のパソコンの仮想デスクトップを呼び出すので、基本的には全てディスプレイ上で済むと考えている。

 

ただし、Magicconnectはやはりインターネット経由になるためか、どうも映像がカクカクして使いづらい。これで作業をするには辛いということで、本来は仮想デスクトップを使う趣旨には反するが、ローカルに落として作業することになる。

外の景色 チラ見

外の景色をチラ見しながら

そうすればほぼ問題は解決。MBPの底が膨れて安定しないことを除けば、この環境の中での在宅勤務も十分可能だという結論になるわけだ。

これは、浜町の自宅でも同じことだが、自宅だとMBPはスタンド*3に載せ、別売キーボード*4て使っているので、底の不安定な点は関係ないのだが、北軽井沢までスタンドやキーボードを持ってくるのも面倒なので、そこだけしばらく我慢というところか。

そしてちょっと心配なのは、アクセス回線がモバイルの4G回線を使っていること。端末のデイスプレイに表示されるアンテナの立ち方がバリ3(懐かしい言葉だ)には絶対ならない。通常はYoutubeなどの動画のダウンロードやNetflixの視聴は問題なくできるが、動画のアップロードは難しい。それから場合によっては電波が切れてしまう可能性もなきにしもあらず・・・ということでオンライン会議なんかがあるとちょっとドキドキするかもしれない。

研究所ではWindowsを使っているので、MBPでWindowsを使えるようにした。今回はそのための設備投資に少々出資したが、在宅勤務を本格的に検討するのならこのくらいの投資は当然だろう。

mnoguti.hatenablog.com

この記事に書いてあるとおりだ。

これで準備は整ったということで、9月の2日から4日にかけて実施してみようかと思ったら、ルール上、自宅以外での在宅勤務は認められていないらしい・・・ということで延期になった・・・残念orz

 

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*1:いつも電源を差しっぱなしにしていたので、バッテリーにその負荷がかかり、膨れたか?と予想している。時期を見て、Apple Storeに持ち込むつもり。

*2:

www.magicconnect.net

*3:浜町で使ってるのはこのスタンド。

moku-woodware.com

*4:キーボードはこちら。このキーボードが打ちやすい。

www.apple.com

片山 修 著『豊田章男』:世界に冠たるトヨタの社長の今・・・MaaS、変革の時代の社長像

トヨタ自動車と言えば、世界に冠たる、日本を代表する自動車会社。自分はトヨタ車には乗った(所有した)ことはないが、乗ったことはある(当たり前か)。

 

そのトヨタ自動車の現社長の豊田章男氏の本を読んだ。主に彼の社長業の日々と社長としての決断、経営に対する考え方、その背景などが読みやすい文体でまとめられている本だ。

toyota.jp

現社長の章男氏と言えば、自分にとってはトヨタイムズのCMだろう。ある日突然トヨタの社長がコマーシャルに出てきていた。しかも自分が最初に認知したのはレーシングスーツを着ている映像ではなかったかと思う。そして俳優の香川照之氏がレポートする形も・・・ん?なんで?って感じだった。

toyotatimes.jp

実はそのトヨタイズムに対する疑問はこの本を読むまでずーっと頭の中に燻っていた。ネットで調べれば、すぐに分かるんだけどね・・・そういう点は物臭なんだよな(自分がです)。

豊田章男

豊田章男

  • 作者:修, 片山
  • 発売日: 2020/04/10
  • メディア: 単行本
 

自動車と言えば、最近では、カーシェアだし、電気自動車だし、自動運転だし、どれもこれも今までのビジネスモデルを否定するような技術革新ばかりだ。

 

自分が関わっている情報通信の世界で言えば、固定電話と専用線の世界から、モバイル通信とインターネットへ、そしてクラウド・ファーストの世界への激変*1と同じか、自動車業界の人からしてみたらそんなもんじゃないんだ!と言いたいぐらいの激変が徐々に始まっているという感じだろう。

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そのような中でトヨタ自動車の社長に就任した豊田章男氏の社長としての姿が描かれている。読みやすくすぐに読めてしまうけれども、そこを敢えてじっくり読みたい本だ。

章立ては以下の通り。

  • はじめに
  • 第Ⅰ部 人間
  • 第1章 原質ーいかに育ったのか
  • 第2章 居場所ーもう1つの顔
  • 第3章 ルールーなぜぶれないのか
  • 第4章 心象ーイチローとの対話
  • 第Ⅱ部 経営者
  • 第5章 門出ー逆風に抗して
  • 第6章 試練ーリコール事件に鍛えられる
  • 第7章 慢心ー何を恐れているのか
  • 第8章 転換ー何を改革したのか
  • 第9章 発想ー上から目線を廃す
  • 第10章 未来ーどこに向かうか
  • おわりに

以上、2部構成で、第Ⅰ部は章男氏を章男氏たらしめている出自や若い頃の環境、経験などを描いている。読んでいて、いろいろ考えさせられる。行間を読むというか、行間を想像しながら読み進めることになる。

 

著者の筆致は、第三者というか、あくまでも著者、取材を元にした表現者としての立場から描かれているが、実際はどうだったのか、もっと大変だったのではないかと想像しないではいられない。

豊田章男

豊田章男

 

第Ⅱ部は、社長になってからの苦闘の日々が冷静な筆致で描かれている。社長たるものどんな時でも大変な立場であることは変わりないであろうが、今の自動車産業を考えた時、その大変さはこれまでの歴代の社長の中でもなかったのではないか。

 

何しろ、10年後、自動車産業がどうなっているか分からないのだ。例えば、カーシェアが普及すれば、台数からみる市場はこれまでのように成長しなくなるだろう。電気自動車の時代になれば、これまで自動車産業を支えてきたエンジンを中心とする部材業界は転換を迫られるだろうし、さらに自動運転が実現された時、自動車産業やその関連産業がどのように変容するかは誰にも分からない。

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そのような変革期にあって、自ら先頭に立ち、トヨタ自動車はモビリティカンパニーになるということを社内外に宣言し、その実現のために日々動き回る。歴史小説を読む立場で見れば、ここをうまく乗り越え新しいモビリティカンパニーを実現すればこれほど痛快に楽しく読める小説はあるまい。

しかし、当人にしてみれば、実際は数多くの課題が正面から挑みかかってくる日々であり、それに対してどう対応していくか、そのために自分は何をすべきか、寝ている間も、ハンドルを握っている時も24時間365日戦っているようなものではないか。

それでも彼は前を向き、モビリティカンパニーの実現に向け積極的な戦略を打ち出す・・・こういう経営者の下で働けるのはなかなかないだろうと思う。

 

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今年4冊読了・・・少ない。

*1:情報通信の世界の変化はまだ続いていて、おそらくこれからも変化し続けるのだろう。次の時代は今はIOWNファーストを目指すことになる。

野村克也氏、逝く:無駄のない采配、考え抜かれた采配

野村監督(あえてこう呼ぶが)と言えば、自分にとっては水島新司氏の「あぶさん」がその最初だ。南海ホークスでのプレイングマネージャーとして描かれていて、主人公景浦安武を代打の切り札として使い、人間味のある監督として描かれていた。

ja.wikipedia.org

 

次に意識したのが、ヤクルトの監督時代*1神宮球場にヤクルト戦を観に行った時だ。

自分はヤクルトのファンでもなかったので、なるべくゆっくりビールが飲めるように観客の少ない下位球団との試合で3塁側スタンドの中段より上で見ることが多かった。野球を見るというよりビールを飲みに行っていた感じ。

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最初の頃はあまり野村監督の指揮を意識してみたことはなかった。ひたすらビール・・・そして得点シーンやホームランに一喜一憂してほどよく酔っ払い帰宅するって感じ。

 

ところがある時の試合、ヤクルトの完全な負け試合だった。詳しくは忘れたが、自分の感覚としては、その後の対戦相手やスケジュールを考えると、これはもう捨て試合になるなと思って、後半はみていた。選手起用もそれほど考えずに行われるだろうと。

試合が進んでもう最終回に近い終盤になって、代打に送られる打者やリリーフで出てくるピッチャーの顔ぶれを見てふと気づいた・・・明日以降を意識して起用しているって・・・そういう監督の意図が初めて見えた試合だった。

負け試合でも次の試合を睨んで布石を打つ・・・無駄がないというか、組織はそうしないと士気が緩むのだろうなとその時は思ったものだ。当たり前のことだけど、他のチームの試合運びでそういうことを明確に感じ取ったことはなかった。野村監督、すげえと思ったよ。

この時のことはずーっと記憶に残っていて、目標(優勝)に向けて、常に今何をすべきかを考えながら、状況が変わっても、不利になってもやるべきことはやり、それを丹念に実行していくことがいかに大切なのかということを改めて自分で認識したのはずーっと後のことだ。

 

偉大な選手であり、監督であった方であった。

衷心よりご冥福をお祈りいたします(合掌)

負けに不思議の負けなし〈完全版〉 上 (朝日文庫)

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負けに不思議の負けなし〈完全版〉 下 (朝日文庫)

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あぶさん コミック 全107巻完結セット (ビッグコミックス)

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*1:ヤクルトで監督をしていたのは、90年から98年だから、自分が青山一丁目のオフィスに通っていた頃になる。まだ若かったね。

岩井克人・前田裕之著『経済学の宇宙ー経済を考え抜いた格闘の奇跡ー』:自分の仕事とは、「研究」とは何か・・・を考えさせられた一冊

読み始めてから読了までだいぶ時間がかかってしまった*1。あとがきまで含めると478ページある。最近の書籍としては厚い。

 

岩井先生の学者としての足跡を本人がその時々の周辺の出来事と合わせて書き記した内容だ。 大学院から現在までおよそ半世紀にわたるその学者としての取り組みについて書かれており、非常に読み応えのある内容だった。

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本書はまえがき、あとがきを除き、以下の通り全8章で構成されている。

  • 第一章 生い立ちー「図鑑」から経済学へ
  • 第二章 MIT留学ー学者人生における早すぎた「頂点」
  • 第三章 エール大学ー「不均衡動学」を書く
  • 第四章 帰国ー「シュンペーター経済動学」から「資本主義論」へ
  • 第五章 日本語で考えるー「ヴェニスの商人資本論」から「貨幣論」へ
  • 第六章 再び米国へー「日本経済論」から「法人論」へ
  • 第七章 東京とシエナの間でー「会社統治」論から「信任」論へ
  • 第八章 残された時間ー「経済学史」講義からアリストテレスを経て「言語・法・貨幣」論に

本書を読み終えた今、なぜか学生の時、犬田先生から言われた「学問は一生のものだから」*2という言葉が自分の頭の中を駆け巡った。

 

岩井先生ご自身の問題意識に沿って、その時々の課題を突き詰めていく、その結果、不均衡動学から言語・法・貨幣という研究課題へ行き着く*3という一見ありえないと思えるこの研究テーマの変遷が明らかになっており、その時々のテーマについていかに格闘してきたかが書かれている。

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自分が岩井先生の名前を知ったのは、岩波書店からモダン・エコノミックスシリーズの一冊として出版されていた「不均衡動学の理論」を知った時で、すでに就職していたであろうか・・・。

モダン・エコノミックス 20 不均衡動学の理論 (岩波オンデマンドブックス)

モダン・エコノミックス 20 不均衡動学の理論 (岩波オンデマンドブックス)

  • 作者:岩井 克人
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2016/01/13
  • メディア: オンデマンド (ペーパーバック)
 

それと前後して読んだのが、「ヴィニスの商人の資本論」だった。不均衡動学は、自分には難しすぎてお手上げですぐに積読資産になってしまったが、ヴェニスの商人資本論は読んで、こういう解釈もあるのかと目から鱗の読後感だったことを今も覚えている。

ヴェニスの商人の資本論 (ちくま学芸文庫)

ヴェニスの商人の資本論 (ちくま学芸文庫)

 

今回、この「経済学の宇宙」を読んでみて、改めて「研究」とは程遠いところにいる自分を明確に認識することになる。具体的には、本書の380ページから381ページにかけて書いてある「信任論」に取り組むにあたって過去の文献を網羅的に調べなければならない件のところが該当箇所なのだが、こういう仕事の仕方は今、ほとんどありえない。おそらく無駄と言われてしまうかもしれないなあと思いながら読み進んだ*4

経済学の宇宙

経済学の宇宙

 

それから現状の研究に直接刺激を与えてくれた点としては、現在という時代が「産業資本主義の時代からポスト産業資本主義」の時代への過渡期ということだ。そして日本経済は、産業資本主義に適応しすぎたがために、ポスト産業資本主義の時代には、それに適応するために苦労しなければならないというところだ。

 

この記述は自分の中で「ポスト産業資本主義=デジタル経済(知識やデータの時代)」と結び付けられるが、本当にそれで良いのか?という思いと、仮にそれで良いとすると、日本経済は今後どうしなければならないのかなどと考えが進むことになった。

機械による差異化と農村人口の存在が付加価値をもたらした時代から、知識やデータによる差異化とグローバル経済が付加価値をもたらす時代へ移りつつあるという認識と、グローバル経済後がどうなるのかという問い。現状認識としては、我々のデジタル化された情報をほぼ無料で利用したGAFAによる一人勝ち(独占レントの発生)からの脱却として、知識やデータを投入要素として明確に位置付けるとともに、無料で利用されてきた状況から市場メカニズムへの内部化をいかに進めるかという政策課題としての認識・・・どうなのだろうか?

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本書の内容に戻ると、岩井先生の関心は、貨幣論、日本経済論や法人論そして信任論へと移っていく、それらは独立しているわけではなく、思考してきた結果として必然的に次の研究テーマとして出てきていることが書かれている。そして、それは経済学史*5への思索へと続き、現在では、人間科学と市民社会論の追求となり現在の研究テーマとして結ばれている。

自分にとっては研究とは何か・・・を再度考えさせてくれる内容であった。本書の書名が「経済学の宇宙」というのも読み終えるとなるほどと思う。そしてある意味、このタイミングで本書を読めたというのは自分にとって幸運であったと思う。

 

*1:本書の前に読了したのが、ティムクックの本で、10月下旬のことだった。それから読み始めたとすると、自分の知識が薄く読むのに苦痛?だった、あるいは苦労?した部分もあったこともあり、2ヶ月ちょいかかったことになる。

*2:過去の記事を見ると、「研究は一生のものだから」と言われたと書いてある。「学問」だったのか、「研究」だったのか・・・。

*3:元々は、最適成長論から研究生活を始めており、経済成長を一生の研究テーマとして突き詰めていくことが多いと思うのだが、そうではなかった。

*4:今は時間軸でしか商売していない。まだ人が知りえていない新しい事象をわかりやすくまとめて知らせるという軸だ。無から有を生み出すような知的作業は皆無だ。だから「研究」機関としての危機意識が同時に沸き起こってきたのだが、ここを理解できる人間は自分の周りにどれだけいるか・・・残された時間でどうするか?端的に言って仕舞えば、何のために我々は存在するのかという例の問いかけになる。今のままでいいのか?今の状況(今をそもそも危機と感じているかというところがポイントになるが)を脱するために何をすべきか?割り切って、今の内容で良いとする判断もあるが、それでは状況は改善しなし、存在理由としては弱すぎると自分は思う。

*5:経済学史については、「社会科学とは何か」や「物の見方考え方」についての社会哲学としての書籍として読めるのではないか。是非書籍にまとめて欲しいと思った。

慶春2020:今年はいろいろダイエット(走る、ゴルフ、食べる、研究する、それが仕事、そして北軽井沢)

2020年、ようこそ!

みなさま、本年もよろしくお願いします。

 

今年のみなさまのご多幸を祈念しつつ、自分の抱負などを簡潔に書いてみます。

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基本は、昨年の気づきを大切に、悠然と流れる吉野川隅田川のように動じず、やるべきことをやっていければと考える。昨年の振り返りとともに書き下してみる。

 

走ること:昨年久しぶりにフルマラソンでサブ4を達成した。まだ走れそうだと思ったのも束の間、3月の峠走、万葉公園の下り、公民館の手前で左足肉離れを起こし、その後はパッとせず。今年は怪我をしないことをまず第一に、毎月コンスタントに走ることを目指す。そうすれば、またタイムも上がってくるだろう。コンスタント≒継続することが大切。

 

ゴルフ:昨年は5回しかプレーできなかった。今年もそのくらいの回数になる可能性が高いが、是非スコアアップを実現したい。目指せ平均スコア90台

食べる食べすぎない(痛風を発症しない)。ゆっくりよく噛んで食べる。そして昨年よく指摘された茶色だけでないような色とりどりの食事を目指す。脱コンビニ弁当(脱ノグチ飯とも言うw)。関連して、減量を考える。今の時期、走るようになってからは75キロ前後にはなっていたのだが、今年は80キロ。これではいけない。スリムで脚への負担の少ない体型を目指す。

走ることと食べることは、自分にとって表裏なので、走ることの先にある目標と食べることをうまく連携させて1年間をやっていきたい。

 

研究する:将来、大学院に入ることを視野に入れ、読む力(語学含む)、考える力を鍛え直す。日常業務の延長線上ではデジタル経済の進展について考える。このブログにも過去に書いているが、産業資本のポスト産業資本化がどのような内容のものなのか、現在注目されているAIの普及、デジタル化がその中心となるのか見極めたい。

 

仕事:時間も少ないので日々大切にがまず第一。そして自分を安易に妥協させないこと大切に日々取り組む。

未来へ向けて:今年の後半から将来に向けた取り組みを始めたが、これを着実に進める。1分1秒をワクワクドキドキしながら日々を過ごせるように頑張る

北軽井沢:冬季を除いて毎月一度行くことは是非実現したい。北軽井沢での生活、ランニング、ゴルフの練習など全体に関わることも多いので、しっかり月一をこなしていきたい

以上、2020年の抱負でした。

みなさま、今年もよろしくお願いします。

 

2019年に読んだ本のベストはこの4作品・・・ジョブズ、アイブ、ピクサー、クック

2019年は、久しぶりに本を読もうと思ってそれなりに読んだ1年間だった。結果的に15冊14作品を読んだ。1ヶ月1冊以上の本を読んだことになるので、最近では多読の1年間だったのではないか。

 

最後に読み終えたのが、10月下旬で下で紹介するティム・クックについての本だった。その後、2ヶ月あったのでもう1冊ぐらい読めてもよかったが、今、読んでいるのが、岩井先生の「経済学の宇宙」で、現在、格闘中。早ければ正月三が日に読み終え、来年の最初の読了報告をこのブログに掲載することになるだろう。

経済学の宇宙

経済学の宇宙

 

さて、今年読んだ14作品の中でベストはこの4冊品。ジョブズ後のアップルがどうなるのかを考えたいと思い、読み始めた4作品。

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最初はジョブズについて書かれた作品。ジョブズの一生が克明に描かれている。内容はそれは興味深いものだった。特に書かれていない部分、行間を読むことを意識させてくれた作品だった。

mnoguti.hatenablog.com

様々な困難に直面し、周りと対立し、そして一晩考え、新しい対応を模索し、打開していく・・・本人がなぜ考えを変えたのか、そこは想像をするしかなく、行間にあるジョブズの行動を前後の記述から想像しながら読み進めた。

mnoguti.hatenablog.com

やろうとしたことはシンプルで、4つの市場に対し、ベストと思える製品・サービスを提供していく。「洗練を突き詰めると簡潔になる」、「すべてが一体となって機能する」を体現するアップルの製品・サービスが出てくる背景がよく分かる。

アップルやジョブズのやったことの凄さを知るにつけ、アップルの凄さをもっと知りたい、そしてジョブズ後のアップルがどうなるのかということを知りたいと思った。それを考えさせてくれたのが、アップルでインダストリアル・デザインを担当していたジョニー・アイブについてだった。

mnoguti.hatenablog.comジョブズと多くの考えを同じにし、最近の製品をデザインし、アップルを体現しているとも言える人物だろう。一言で言ってしまえば、デザインの大切さ。ハードはそのデザインを実現するためにある。デザイン主導の製品開発・・・目指すものを明確に意識することの大切さを気づかされる。

そのアイブがアップルを辞めて、独立するというニュースに接した時はそれはそれで納得するところがあった(発表した後、どうなったかは分からない。まだ辞めてないのではないか?)。

 

ジョブズやアイブの本を読み、アップルの凄さが分かったところで、ジョブズがアップルを離れていた期間に何をやっていたのかが気になリ始めた。それを知るために読んだのが、PIXARについての本。

mnoguti.hatenablog.com

この本は、あくまでもPIXARについてのことでジョブズについてではないが、それでもジョブズが出資して、最初の作品を出すまでの取り組みについては考えさせられるものがあった。3Dアニメという新しい技術で市場を創出することの困難さを考えた時、それを可能にするものは何なのかということを考えずにはいられない。

新しいビジネスはこうやって育て、大きくしていくものだ・・・とは簡単に言えない営みが書かれている。ラッキーだった面もあるだろう。でもそれはその時点時点で最善を尽くした結果だということに思いいたる。

 

そして最後、アップルの今後を考える際に最も注目すべき人物、現社長クック。タイミングよく、クックに対する本も出版されたのだった。

この本に書かれていることは、クックが単にジョブズからアップルを引き継いだだけでなく、アップルの使命を時代とともに、状況とともに変化させていること。労働やプライバシーや自然破壊に対するアップルとしての取り組み、そして製品・サービスの行方など、勉強になることがいろいろ書いてある。
mnoguti.hatenablog.com

mnoguti.hatenablog.com

具体的に内容を知りたければ、この4冊品を読んでいただくのがいいと思う。単純に字面を追うのではなく、行間をしっかり読むことが、考えながら読むことが大切だ。

これらの4作品は、自分のビジネスを伸ばすためには、目標の設定とそれを実現するためのストーリーをよく考えることが大切だと明白に意識するきっかけをくれた・・・大きく影響を受けた4作品であった。

さて、2020年はどんな本に出会うであろうか。楽しみだ。

 

慶應義塾大学大学院システムデザインマネジメント研究科主催:Sports X カンファレンス2019に行ってきた

夏のことなので時間が経ってしまったが、慶應大学大学院システムデザインマネジメント研究科が主催するカンファレンス、Sports Xカンファレンス2019に行ってきた。以下はそのカンファレンスでのメモを中心に頭に残っていることを書き連ねた記事だ。

 

大学院システムデザインマネジメント研究科とは?

このシステムデザインマネジメント研究科はその研究科の名前が示す通り、システム思考+デザイン思考で社会事象を捉え、問題点、課題を解決していこうという大学院だ。

まずは社会をシステムとして捉え、状況を整理認識し、デザイン思考で分析する・・・多様なステークホルダーがいろいろな課題を抱えているので、アプローチは学際的になる。最近、文系理系というわけ方や学部という壁が学問や科学の世界で問題視しされているが、その点を超越したアプローチを実践している大学院だ・・・と自分は理解した。この研究科を知りたければ以下の2冊の書籍が役立つ。

こちらは入門編だ。

システム×デザイン思考で世界を変える 慶應SDM「イノベーションのつくり方」

システム×デザイン思考で世界を変える 慶應SDM「イノベーションのつくり方」

 

そしてこちらはより専門的にシステムデザイン・マネジメントについて書かれている。自分の出身大学の出身学部は創設の時、行動科学として学際的アプローチを取り入れることを念頭に考えられた学部だった・・・なんてことを思い出した。

システムデザイン・マネジメントとは何か

システムデザイン・マネジメントとは何か

 

そしてここで入院生活をおくってみたいと思ったのでした。

 

 

Sports Xカンファレンス

さて、Sports Xカンファレンスは、このアプローチで現在日本のスポーツ業界を産業として成長軌道に乗せるには何が必要なのか、それをどのように実現していくのかを考えようというカンファレンスだ。

events.nikkei.co.jp

いくつかのセッションを聞いたが、メモや頭に残っているキーワードをもとに当時を思い出しながら以下、書いていく*1。当然、自分流の解釈が入っている前提でお読みいただきたい。

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A new age in sports (スポーツ新時代)

カンファレンスが始まって最初の印象が、「プレゼンテーションが上手い!」ってことだった。基本、スクリーンは見ないで語りかけるように話す。会場との一体感、引き込まれる。

内容としては、ライブ(生)に価値を見ているということ。見る人のためにいろいろな形のコンテンツやプラットフォームの拡大の拡大があり、スポーツ観戦をめぐる環境は大きく変化している。そしてそれらをうまく利用したユーザを広げる取り組み。これによりスポーツのビジネスとしての可能性が変わる。

このような状況からさらに将来も伸ばすにはどうするか?エンターテイメント業界との関係構築、つまりスポーツ≒エンターテイメントの一部として再構築。見方を変えれば、Attenstion Economyという視点で時間を何に使ってもらうのか、見る方からすると時間をどう使うか・・・時間を取るための競争が始まっている。そのような中、若者の参加率が下がっている。他のエンターテイメントとの関係がどうなっているのか。

テクノロジーの可能性ないし影響。例えばNetflixの台頭。米国ではケーブルの脅威になっている。最近は日本でも存在感を示し始めている。

一方、ファン層が多様化している。ローカルでありグローバルな立ち位置。Fluidな(移ろいやすい)ファンををどう取り込むかのか。今のファンは、自らがコミュニテイを作りたいという思い。例えば、イチローのファンという存在は、チームのファンではないということ。

スポーツとしてのビジネスでファンをどのように獲得するかは、メディアの使い方が鍵になる。没入型メディアを利用して、ファンが主体的に選べるようにする。さらにソーシャルメディアをどのように使っていくか。多様なメディアを全体としてどのように連携させ、ファンを獲得していくか。メディアを含め、ビジネス全体のエコシステムをどう考えるかという視点。

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スポーツを科学的に管理する:100球制限や如何?

誰のためのスポーツか。個人差がある身体能力、肩や肘の耐久力・・・50球以下でも痛むし、100球以上でも痛まない。選手によってその差は大きい。そのような中でまずは100球を暫定的に定めて高校球児、投手を守る。本当は個別に上限投球数を決められるのがベスト。でもそれをしているだけの時間や人の手当ができない現実。

そもそも個人差が大きいということを認識する必要。多様性を前提にした指導が必要なのだが、日本はそのようになっていない。例えば、投げ方の問題でみると、バイオメカニクスというアプローチで明らかになったのは、速度と力は一致しないというようなこと。

具体的には、内側側副靱帯の損傷がなぜ発生するかというと、内反トルクが原因だ。そして内反トルクは個人差が大きく、そこを考慮して投球数を決める必要があることが分かってきた。このように科学の進歩はあるのに、一方で故障者は減らない現実。なぜか?

監督への啓蒙活動を進める必要。上手投は人間にしかできない。それが肘への負担を高める原因の一つなので、その負担がどのくらいになるか計測する必要があるが、そこまで手が回らないのが現状。そこで、予防するためのセルフトレーニングができる。そういう情報、知識をどう広めるか・・・ その役割を担うのが指導者である監督。そしてそれは選手の意識改革に繋がっていく。正しいトレーニングの必要性とその実行を早急に進める必要がある。

骨格、筋肉の強さは人によって、場所によって異なるとすると全体のデータよりやはりテーラーメイド型のデータが必要になると考えれれる。このように考えると、100球問題といて顕在化した野球における選手の育て方の問題は、単なる投球数制限の話ではないことになる。

野球のあり方そのものを考え直す必要があるように感じた。最近の高校野球での動きはそういう大きな問題提起の一環だと考える必要。例えば、試合が土日に集中するのは、大人の事情に過ぎない。100球制限は一つのきっかけに過ぎないのであり、そこに一歩を踏み込んだ新潟高野連の試み(100球制限)はベースボール革命の始まりと言える。

 

Sports X Initiative〜スポーツ経営人材の育成とR&Dセンター構想〜

Sports Xとは・・・人材育成とR&Dの視点。

MITスポーツanalyticsに参加してアメリカの現実を見ることで、スポーツ産業・ビジネスの盛況を目の当たりにした。アメリカがこのように大きくスポーツ産業が成長した背景・・・イニシアティブの存在がある。そして大規模複雑な世の中、複雑なシステムを研究する必要があるとの認識。

日本のスポーツ界は、95年までは米英と同じ規模だったが、その後、両国のパフォーマンスは大きく開いた(実は日米の差はスポーツだけでなく、あらゆる分野に及ぶ。日本の相対的な凋落という現実)。

その原因を明らかにするためには、 95年以前を見る必要がある。日本周辺を見ると、そこには、伸びるアジア諸国が存在する。一方、スポーツだけのことを考えているだけでは日本の状況を大きく変えられないという認識。

ならばどうするか?全体構造を作るというところから始めないといけないという問題意識。Sports Xの名前の由来は、Xという何かで大きくすることを考える。つまりは社会課題解決の一助としての位置づけ。このような見方をすると、スポーツはあらゆる差異を超えていく共通言語たりうるという視点。

 

カンファレンス、人材育成、R&D の3本柱

人材育成:日米の違いのきっかけはなんだったのか? ー米国4大スポーツの設計者にヒアリング(野球、バスケ、アメフト、アイスホッケー、+ サッカー)して課題を抽出。 ガバナンス、組織設計のイニシアティブは弁護士、投資銀行

ビジネスの第一線での進め方は、まず弁護士等でコンセプトを作利、雛形ができて、勝ちパターンが見えてから、スポーツビジネス系の人たちが入るという点がポイントになる。

構造そのものを成長させる構造をどう作り上げるか。構造を変えていける人材を育成するとともに、社会に対する自分たちの立ち位置をはっきりさせる。

まず必要とされる基礎能力は、多視点化、構造化、可視化をする能力だが、それを可能にするためにも、デザイン思考(価値創造)とシステム思考(全体構想総出力 総合思考 物の見方)が必要だ。その2つの視点から、考え方を鍛えることになる。

なるべく多くの経験を積むためには国内に閉じていてはダメで、Plain Englishは必須ということになる。そして学際的なアプローチが必要になり、そのための横串の差し方を考えなければいけない。つまりは個別ディシプリンでコミュニケーションできるように共通言語としてのシステムズ・エンジニアリングを収めた上での多様な学問を取り入れていくことになる。

そこではナブラ型人材が求められ、課題と価値の構造化によるソリューションの構築をしてくことになる。T型人材ではこれに対応することはなかなか難しいというか、ほぼ不可能だろう。人材の厚みが増すことで、R&Dをできるようになる。そして結果、科学とビジネスの間をつなぐ活動が可能になり、新しい姿を表すことになる。

今後の展開としては、仲間づくりがポイントであり、それは多様性を高めることに他ならない。

 

*1:当然、記憶が定かでなくなっている部分もあり、またその後、自分の考えで上書きされているところもあると思う。そのような内容だということで理解して読んでほしい。

目標と戦略は具体性が必要だ・・・これでもか!っていうくらい考え抜くことが大切

自分のような人間が「戦略」なんてことをいうと何て大それたことを・・・と思う向きもあろうが、研究計画でも、事業計画でも、人生設計でもそれは戦略の一種だと思うと、自分の将来に関わることなので考えずにはいられないだろう。

戦略を考えるにはまず目標が必要になる。それをまず定めないといけない。

 

目標は、最初は「とりあえず」でもいいけど、具体化しないと自分が空虚なものに、raison d'etre(存在意義)を見出せないまま過ごすことになる。そうならないためにも、自分のやりたいこと、やらなければいけないことをどれだけ具体的に描けるか。

目標があると気持ちも前向きになる。これが結構日々を楽しく過ごすには大切。そしてそれに沿って実際に動く・・・それだけのことだが、それができるかどうかがさらに大切だ。

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繰り返しになるが、第一にやらなければいけないのは、自分は何をやらなければいけないのか、何をしたいのかという具体的な目標を明確にすること。目標を設定するということは、最も大切なことだから、最初は思いつきでもいいが、本当にそれでいいのか、自分に向き合って自問自答を繰り返すことになる*1・・・そして自分の目指すべき方向が定まっていく。

そうそう、目標を明確にするときの大事なポイントは、世のしがらみや自分のまわりの環境、経済力などいろいろな制約をまずは取り払って考えること。何やりたいんだよ!自分!というときに、制約を考えるとすぐ後ろ向きの発想になり、ロクな目標にならない。少年よ、大志を抱け!ってやつです。

 

そこを疎かにすると・・・自分のraison d'etreがないことになり、毎日何をしているのか意味不明の日々を過ごすことになる。そうなるとどうなるか・・・考えたくないね。個人にとっても、組織にとっても目標の大切さをしっかり認識すべきだ。

経営戦略原論

経営戦略原論

 

考え抜いた目標を実現するために何をする必要があるのか・・・次はこれをとことん考える必要がある。そして具体化する。何しろ具体的に、実際にできるように組み上げることが大切。この時、前述した各種制約を考慮することになる。その制約を乗り越えて実行していくようにくみ上げる。

経営戦略原論

経営戦略原論

 

そして何をすべきかが固まったら、今度はそれを目標に向かって、順次実行していく。 各ステップでいろいろ障害(制約)が出てくるであろうが、それは一つずつ解決していく必要がある。ここをどうクリアしていくかが次の戦略上のポイントになる。

 

障害が出たからといって目標を動かしてはいけない。一度の失敗で全否定しないこと。こういう時こそPDCAをちゃんと回すことだろう。まずは解決。そのためには協力が必要だ。

あとは目標に到達するまで地道に試行錯誤を繰り返すだけだ。そのプロセスでは常に自問自答は繰り返される。もうねえ、必死に考えるしかないんだよ。とことん考えてもまだ考えきれないぐらい考える必要があるんだということを思い知るべき。

ストーリーとしての競争戦略 Hitotsubashi Business Review Books

ストーリーとしての競争戦略 Hitotsubashi Business Review Books

 

制約を乗り越え、目標に近づくための戦略はシンプルだ。謙虚に、世の中のことを広く見聞きしながら、考え抜いくことが、凡人が目標を達成するための唯一の方法だろう。

「井戸の中の蛙、大海を知らず*2」じゃあないが、狭い自分の了見で上から目線で人に対してものをいい、人の話を聞かない人間では、自分が何をやっているのか、何をやるべきなのかを客観的に理解できるとも思えない(結果、独りよがりになる・・・)。そしてそういう人の目標は、客観的に見れば、ピント外れになりがちだ。当然、目標をたてたとしてもそれが実現することは到底あるまい。路頭に迷うことになる。そうならないように考えましょう。

 

なんでこんなことを書いているのか・・・あと40ヶ月という時間が意外と短い時間だということを認識した自分がそこにいたということでした。

*1:ここがずれると大変だよ。

*2:自分は多かれ少なけれ井戸の中の蛙なんだということを自覚している人は意外と少ない。もう少し書くと、自分が経験していないことはわからないものだということを分かっていない人が多い。耳学問では無理無理。実際に経験してみることが必要。例えば、自分の世界では、研究をするとか、それを審査付き学術論文に仕上げるとかね。経験もなく御託を並べるなんて笑止千万www