ピクサー、不思議な存在だった。ディズニーアニメーションを作っている会社?ってぐらいの認識。トイストーリーとか、モンスターズインクとか、ミスター・インクレディブルとか*1。
今回、ジョブズの本を読んでジョブズの仕事をより理解したければこの本も読まなければいけないと必読リストに入り、この度、やっと読了した次第。
本書は、ピクサーの経営面、特にIPOからディズニーへの売却までの期間の出来事を当時の最高財務責任者の目を通して描いたものだ。だからコンピュータアニメーションの作品や技術的側面での取り組みや苦労については書かれていない *2。
新規ビジネスの事業計画を立て、それを世間(投資家)に認めてもらうために何をしなければならないか。本書を読んでいるとその辺りのことが分かる。当然、自分が実際にそういう状況に直面したらこの行間にあるさらに細かいことに対してシビアな意思決定を求められるのだろうが、何しろビジネスを起こしていく、特に技術とビジネスの観点から何をしなければいけないのかというのを考える取っ掛かりとしては非常に参考になると思う。
PIXAR <ピクサー> 世界一のアニメーション企業の今まで語られなかったお金の話
- 作者: ローレンス・レビー,井口耕二
- 出版社/メーカー: 文響社
- 発売日: 2019/03/15
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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筆致は淡々とさらっと書いている。内容は、ビジネス小説として読めば間違いなく面白いが、この面白くさらっと書いていある内容について少し深く考えてみればそれがいかに困難なことを成し遂げてきたのかが理解できると思う。
ITの時代に特筆すべき存在となったピクサーとジョブズという各々を理解するのに必読の本だろう。
次に何かしようと考えている人は自分をこの文脈の中に置いて考えてみればそのすごさが理解できるのではないかと思う・・・同じ状況で俺にできるのか?って。
PIXAR 〈ピクサー〉 世界一のアニメーション企業の今まで語られなかったお金の話
- 作者: ローレンス・レビー
- 出版社/メーカー: 文響社
- 発売日: 2019/03/15
- メディア: Kindle版
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本書の構成は以下の通り。各章はコンパクトにまとめらているが、全部で4部28章建てだ。
- プロローグ
- 第Ⅰ部 夢の始まり
- 第1章 運命を変えた1本の電話
- 第2章 事業にならないけれど魔法のような才能
- 第3章 ピクサー派、スティーブ派
- 第4章 ディズニーとの契約は悲惨だった
- 第5章 芸術的なことをコンピュータにやらせる
- 第6章 エンターテイメント企業のビジネスモデル
- 第7章 ピクサーの文化を守る
- 第Ⅱ部 熱狂的な成功
- 第8章 『トイ・ストーリー』の高すぎる目標
- 第9章 いつ株式を公開するか
- 第10章 夢のようなビジョンとリスク
- 第11章 投資銀行界の絶対王者
- 第12章 映画がヒットするかというリスク
- 第13章 「クリエイティブだとしか言いようがありません」
- 第14章 すばらしいストーリーと新たなテクノロジー
- 第15章 ディズニー以外、できなかったこと
- 第16章 おもちゃに命が宿った
- 第17章 ステイーブ・ジョブズ返り咲き
- 第Ⅲ部 高く飛びすぎた
- 第18章 一発屋にならないために
- 第19章 ディズニーとの再交渉はいましかない
- 第20章 ピクサーをブランドにしなければならない
- 第21章 対等な契約
- 第22章 社員にスポットライトを
- 第23章 ピクサーからアップルへ
- 第24章 ディズニーにゆだねる
- 第Ⅳ部 新世界へ
- 第25章 企業戦士から哲学者へ
- 第26章 スローダウンするとき
- 第27章 ピクサーの「中道」
- 終 章 大きな変化
著者が最高財務責任者としてピクサーに入った時、問題山積だった。それを一つずつ潰していく過程、そこに関わるステークホルダーたち、世の中のタイミング、後からこうやって振り返ってみるとなるべくしてなるようになったと読めてしまうが、本文にも書いてあるが、そこには多くの困難な意思決定があった。
それを可能にしたのは、目標を明確に定め、そこに向けて、あらゆる可能性を徹底的に考え、議論し、再構築し、さらに考え、できることは全て検討し尽くすということを実践したからこそだろう。
少数の経営メンバーで検討していく最中にはいろいろ意見の相違があり、行き詰ることもあっただろうが、そこを一つ一つ解決していく。曖昧な状況はなくす。決めきれないことは、明確に何を次に持ち越すのかを整理する。当然、成功するか否かは分からない。でもできる限りのことはし尽くす。そして結果が出てくる。多くの課題の一つずつが解決され、事態が少しずつ進んでいく。
To Pixar and Beyond: My Unlikely Journey with Steve Jobs to Make Entertainment History
- 作者: Lawrence Levy
- 出版社/メーカー: Oneworld Publications
- 発売日: 2017/10/05
- メディア: ペーパーバック
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その中にはラッキーであったこともあったはずだ。そのラッキーなことが自分たちに起こるのは、事業のリスクや可能性に対する徹底した検討があるからこそではないだろうか。
この本は、未知の物事を成し遂げるには、いかにリアリティを持って、目標を明確にしたうえで、事態を検討できるか、議論できるか、そして判断し、事態を進めることができるかという事がいかに大切かを教えてくれている。最後の第Ⅳ部で語られる「中道」という考え方がそれそのものなのだというのが著者のメッセージなのだろう。
今年13冊目、読了しました。
さて、ジョブズの本から始まったこの流れ、次はどこにいくべきだろうか。脚注で紹介したピクサーの制作側の話を読むか、アップルに戻り、下に引用したティム・クックの本を読むか。あなたならどっち?
*1:ちなみに自分が映画館で見たのはモンスターズインク。これ以降、映画館に行っていないw
*2:ピクサーの作品やそれを生み出す技術面を知りたければこちらの書籍を読むといいと思う。
ピクサー流 創造するちから――小さな可能性から、大きな価値を生み出す方法
- 作者: エイミー・ワラスエド・キャットムル,石原薫
- 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
- 発売日: 2014/10/03
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