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ウォルター・アイザックソン著『スティーブ・ジョブズⅠ』:洗練を突き詰めると簡潔になる

2011年出版だが、ずーっと積読になっていた。なぜ読まないで放って置いたのか自分でもよく分からない。当時は、Apple製品はiPhoneを使うかどうかぐらいだったので、Appleジョブズにあまり興味がなかったのかもしれない。それなら買うなよって言われそうだが、とりあえず買ってしまうから積読となり、不良資産化してしまうことになる。

 

ここ数年、iPhoneを再び使うようになり、iPadを購入し、そしてMacBook Proに加えてMacBookを購入していつのまかにApple製品で埋め尽くされている自分の机、はて、Appleとは何なのか、なぜにジョブズにこれほど魅了されてしまうのか・・・と思っていた時、積読になっていたこの本が目に入った。400ページを越える分量(Ⅰ、Ⅱ巻合わせると800ページ超だ)だが、興味深く読めた(もちろんⅡ巻を読むのはこれからだ)。

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Ⅰ巻は、全41章のうち、1章から21章まで。大きく分けると生い立ちとApple社の設立前からApple社の株式公開まで(1章から9章まで)、マッキントッシュの開発からApple社を去るまで(10章から17章まで)、Apple社を去ってからピクサーでの成功まで(18章から21章まで)というところか。章だては以下の通り。

  • はじめに 本書が生まれた経緯
  • 第1章 子ども時代 捨てられて、選ばれる
  • 第2章 おかしなふたり ふたりのスティー
  • 第3章 ドロップアウト ターンオン、チューンイン
  • 第4章 アタリとインド 禅とゲームデザインというアート
  • 第5章 アップルⅠ ターンオン、ブートアップ、ジャックイン
  • 第6章 アップルⅡ ニューエイジの夜明け
  • 第7章 クリスアンとリサ 捨てられた過去を持つ男
  • 第8章 ゼロックスとリサ グラフィカルユーザインターフェース
  • 第9章 株式公開 富と名声を手にする
  • 第10章 マック誕生 革命を起こしたいと君は言う・・・
  • 第11章 現実歪曲フィールド 自分のルールでプレイする
  • 第12章 デザイン 真のアーティストはシンプルに
  • 第13章 マックの開発力 旅こそが報い
  • 第14章 スカリー登場 ペプシチャレンジ
  • 第15章 発売 宇宙に衝撃を与える
  • 第16章 ゲイツジョブズ 軌道が絡み合うとき
  • 第17章 イカロス のぼりつめれば堕ちるだけ
  • 第18章 ネクスト プロメテウスの解放
  • 第19章 ピクサー テクノロジー・ミーツ・アート
  • 第20章 レギュラー・ガイ 凡夫を取り巻く人間模様
  • 第21章 『トイ・ストーリー』 バズとウッディの救出作戦

内容が濃い・・・と言うか、ジョブズの人生が濃いと言うことか。読んでいて面白いと思う反面、自分の上司だったらとんでもないという思い(あと15歳若かったら別だけどw)と、若手でいられても困っただろうな(でも局面打開にはこういう人材も必要だよねとも思う)・・・と思いながら読んだ。奇人・変人を地でいくような人だったんだと。

Steve Jobs: The Exclusive Biography (English Edition)

Steve Jobs: The Exclusive Biography (English Edition)

 

仕事でColor Classic ⅡとWindowsを併用していたときいつも感じていたのは、この使い勝手の差は、どこから来るのだろうか・・・いつも不思議に思っていた。それほどAppleの製品は使い心地が良かった。遊び心があるというか、Appleの製品は社員が楽しみながら作っている、Windowsは社員が仕事として作っていると感じるものだった。本書を読むと自分がなぜこういう感覚を持ったのかが分かる。それは、ジョブズの徹底したこだわりと、それを実現する仲間たち・・・仕事としてではなく、1つの作品として仕上げるそのこだわりぶりだろう。そしてこういう仕事は、コスト管理が厳しい世界ではまず無理だろうなという思いも。年に1件ぐらいはこういう仕事をしたいが・・・。

アップルのマーケティング哲学も参考になる。

  • 共感:アップルは他の企業よりも顧客のニーズを深く理解する
  • フォーカス:やると決めたことを上手におこなうためには、重要度の低い物事はすべて切らなければならない
  • 印象:会社や製品が発するさまざまな信号がその評価を形作る

3つの考えそれぞれに自分たちならではの意味付けができる。

ジョブズはシンプルさを求めたが、それにまつわる数々の名言がある。自分がそうだよなあと思わずうなづいてしまったのは、ダヴィンチの言葉だで「洗練を突き詰めると簡潔(シンプル)になる。」というものだ。文章を書くときはいつも頭の片隅に置いておきたい言葉だ(実際の文章は違うけどw)。

スティーブ・ジョブズ I

スティーブ・ジョブズ I

 

Ⅰ巻を通して読むと、その最初から最後まで印象に残るのは、様々な困難に直面するジョブズだ。上手くいくと次のステージを志向するのでそこで当然違う困難にぶち当たる。それの繰り返しだ。そしてそれを現実歪曲フィールドと呼ばれる事実を自分の都合のいいように曲げて自分ペースで進めようとする強引さなどで乗り切ってしまう。その一方で細やかな心遣いのあるところもあったりする。

コンピュータ産業の黎明期、高機能化とパーソナル化による市場の拡大期であった時期だから時代はジョブズを必要としたともいえるだろうか。

さて、Ⅱ巻はAppleに復帰してからが中心になるだろうが、どういう内容が書かれているのだろうか。

今年、7冊目読了しました。