これからのAppleというか、これからのデジタル経済を、ビジネスを考えるために読んだ書籍・・・この本を含めて4冊*1。
いやぁ〜、いろいろ教えられました。
とすれば、
- クックは技術×マネジメント(アウトソーシング、環境、プライバシー、多様性)
ということになろうか。
ジョブズが亡くなってからすでに8年が過ぎ、その間、CEOとしてAppleを新たな高みに導いたティム・クック。その彼の幼少時代から学生時代とAppleに入社するまで、入社後、そしてCEOになってからを関係者へのインタビュー等を行って描き出している。
ジョブズやジョニーに比べればやはり地味に見えてしまう。特に前半のアウトソーシングでAppleの経営を大きく改善したところなんかは縁の下の力持ちって感じだ。派手さはないがなくてはならない役割を果たしたという言えるだろう。
そしてCEOになってからのティムは、非常に大きなことを着実に進めてきたと言える。その代表が、プライバシーに関する政府機関との向き合い方だし、顧客に対してその考え方を貫徹したところだろう。それともう一つが多様性についての取り組みだ。製品についてもApple Watchを出すなどこれまでのAppleの革新性を失うことなく展開している。
本書の中にも書いてあるが、ティムの時代になり、Appleはその革新性をジョブズという天才に代わり多様性で維持しようとしている。それは今後も強力に推し進められることだろうことが本書を読むと分かる。
それからプライバシーに関する考え方・・・これは非常に大切な取り組みだったのではないか。一つの例外を作るとそれは例外ではなくなるということで、iPhoneにバックドアをつけることを徹底的に拒否したその考え、プライバシーのあり方・・・これは今後のデジタル経済が進展した情報が経済財になる時代においてその意味がより明確になるのではないか。
本書は、序論と12の章からできている*2。各章は以下の通り。
- 序論 うまくやってのける
- 第1章 スティーブ・ジョブズの死
- 第2章 アメリカの深南部で形作られた世界観
- 第3章 ビッグブルーで業界を学ぶ
- 第4章 倒産寸前の企業に加わる、一生に一度の機会
- 第5章 アウトソーシングでアップルを救う
- 第6章 ステーブ・ジョブズの後を引き継ぐ
- 第7章 魅力的な新製品に自信を持つ
- 第8章 より環境に優しいアップル
- 第9章 クックは法と闘い、勝利する
- 第10章 ロボットカーとアップルの未来
- 第11章 アップル史上最高のCEO?
第2章までが導入、第3章から第5章がCEO前の貢献(アウトソーシング)、第6章から第7章がCEOの新製品の開発、そして第8章、9章、10章でCEO後のティムを象徴する3つの取り組みが紹介される。すなわち、環境、プライバシー、多様性。
本書を読んでいるとAppleというジョブズなしでは考えられなかった企業がティムというCEOによって、ジョブズ亡き後、いかにうまく経営されているかが垣間見える。そしてそれが非常に上手く回っているように見える。ジョブズが作った荒削りの企業、新しい製品・サービスを世に送り出すのに精一杯であった企業をさらなる高みに押し上げつつある・・・これまでは少なくとも上手く行っているようだ。
Tim Cook: The Genius Who Took Apple to the Next Level (English Edition)
- 作者: Leander Kahney
- 出版社/メーカー: Portfolio
- 発売日: 2019/04/16
- メディア: Kindle版
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ティムがCEOになってからしばらくは、「Appleは大丈夫なのか?」という視点で見られることが多かったが、本書を読むと、「これからのAppleの取り組みはデジタル社会、デジタル経済を切り開く尖兵として、新製品やサービスを出すだろう」と思える。そのような見方に変わっている自分を見つける。
この本を購入する前に、ジョニー・アイブが退社するという報道があった。これはAppleが次に一歩を踏み出したことを暗示するものなのか・・・どうなのか。
これからのAppleがティムを中心にどのように成長していくのか注目される。
編集者、出版社の方へのお願い
予算の都合とか、本の厚さとかいろいろあるとは思うが、脚注を省略するのはやめてほしい。一応、HPにpdfファイルで公開しているけど、あれでは見辛いし、一冊の作品として見た時、なぜわざわざその作品を壊すようなことをするのか・・・と思わずにはいられない。本を読むものとして悲しい処置だったと思う。
今年15冊目読了。