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Quality Economic Analyses Produces Winning Markets

この冬の課題図書?:芹沢 一也、他著『経済成長って何で必要なんだろう?』

冬の課題図書2冊目、読了。

対談形式で、今の日本に経済成長や景気対策がいかに必要かが述べられている。本書の主題は、書名にもなっている「経済成長って何で必要なんだろう?」について経済学の文脈で考えることである。そうすることによって経済政策を考える際の経済学と政治学(文中では論壇)との棲み分けと各々の役割、経済学の限界などについて語られている。

経済学者の飯田氏を中心に対談形式にすることによって、個別の問題と経済学との接点を明確にし、その上で論点を抽出し、解決策を提示している。対談は一番年上の岡田氏でも1955年生まれと若手が中心だ。

本書で述べられているのは、解決策として経済成長が必要だということなのだが、それがなぜ必要なのかを経済学者の飯田氏が説明していく。対談形式なので読みやすいし、経済学的ものの見方、考え方をやさしく伝えようとしている。

4334975747 経済成長って何で必要なんだろう? (SYNODOS READINGS)
光文社  2009-06-25


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本書の内容は以下の通り。

  • はじめに
  • 序章 議論の前に
  • 第一章 高度成長とは何だったのか−戦後日本経済思想の源流と足枷
  • 第二章 戦争よりバブル、希望はインフレ
  • 第三章 何が貧困を救うのか
  • 終章 議論を終えて
  • あとがき

本書で明らかにされるのは、経済成長や経済学に対する認識が偏っていること、これまでの経済政策がちぐはぐであると言う点。そのような状況になっている要因の一つとして、これまでは敗戦後のキャッチアップ経済であったことの限界、そのことの表裏としての論壇や経済学がその役割をちゃんと果たしていなかった、あるいは果たす必要がなかった歴史、そして危機的な状況である現在を国民は正確に伝えられているかなどが明らかにされていく。

経済学については、ハイエクだとか、ケインズだとかマスコミがすぐに対立的に分類したがるが、現実はそんな対立的ではない点、経済学はあくまでも問題解決の技術、ツールであるという点、それをうまく使い役立てるためには価値論争をしっかりしなければいけない点、だがそこがどうもしっくりきていない現在の日本。それを認識できていない我々。その原因は現実を定量的に把握できていないことが問題などなど、現状の日本の経済社会の問題点を解決していくための考え方の一つが示されていく。

何はともあれ、貧困や格差に対する政策(つまり所得再分配政策)がいかに大切か、その目標としては経済成長がもっとも良いが、現状では、貧困や格差是正に関する政策は本当の当事者にはほとんど役立っておらず、さらに悪いことに集票のための政策になっている点(金持ちから貧乏人への再分配ではく、都市部から地方への再分配になっている)など・・・いったい政治や官僚、論壇、経済学者などは何をやってきたのさっていう現実を突きつけられる。

ここで飯田氏は、政策の処方箋として、現在の日本経済は病人(不況、デフレ)で、その病人に対し、体を鍛えろ(構造改革)という無理なことをさせてはいけないと繰り返し主張する。まずは景気を回復軌道に乗せ(つまり何かするには「溜り」が必要だが、現在はその溜りも使い果たそうとしている現実。溜りのある社会とは言葉を変えれば、リダンダントな社会ということ。余計分かりづらいかな)、経済成長を実現できるような政策を打たなければならないだろうと。

今の日本で経済成長を可能にするのは、「競争」、「再分配」、「安定化」の3つがキーワードであることが一貫して述べられている。本書のメッセージをいかに受け止めるか・・・われわれに残された時間はかなりきわどいところまで追い詰められているらしい。

さて次は冬の課題図書?を読むことになる。

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