日本橋濱町Weblog(日々酔亭)

Quality Economic Analyses Produces Winning Markets

ネットワークの中立性とは?

久しぶりに情報通信にかかわる話題です^^

ネットワークの中立性に関する懇談会報告書(案)を読んでます。

章立ては以下のとおり。

  1. ネットワークの中立性に関する基本的視点
  2. ネットワークのコスト負担の公平性
  3. ネットワークの利用の公平性
  4. ネットワークの中立性に関するその他の検討課題
  5. 望ましい政策展開の方向性
  6. (補論)ドミナント規制の見直しと競争評価の活用の在り方

第一章の「ネットワークの中立性に関する基本的視点」をざっと読み終えました。久しぶりに固い文章だったので疲れました^^;

当然現行の情報通信市場が議論の対象になるわけですが、報告書では、それをブロードバンド市場と呼び、その定義としては以下の4つのレイヤを含むものです。

  • 物理網レイヤ
  • 通信サービスレイヤ
  • プラットフォームレイヤ
  • コンテンツ・アプリケーションレイヤ

この中で物理網レイヤと通信サービスレイヤは一体として、通信レイヤとして扱われます。

この懇談会が開催された目的は、「市場の透明性や競争ルールの予見可能性を高めることにより、ブロードバンド市場における設備投資インセンティブの向上やサービスの多様化等を実現する」ために、「ブロードバンド市場全体を視野に入れた競争ルールを整備するための検討を行なうこと」だそうで、「ブロードバンド市場の発展に柔軟に対応した競争ルールの基本的枠組みを構築」し、「市場環境変化に速やかに対応できる競争ルールを整備」することとしています。

現状の市場環境の変化として、市場の統合化を特徴としてあげ、垂直的な統合(一社単独あるいは協働指向という2種類があります)が進む一方、水平的な統合(例えば、あまり進んでいませんがFMC)も進展していると整理しています。

次に特徴として、「インテリジェンスの分散化」として、インターネットでは、セッション制御、認証・セキュリティ、課金管理等、通信サービスレイヤとプラットフォームレイヤにおいて提供されるネットワークの制御機能やプラットフォーム機能が分散化する傾向があること、通信事業者が考えるNGNはそれを統一的に制御して高信頼性を確保しようとするものであることが解説されています。

・・・とここを読んだところで、固定電話(報告書に言う回線交換網)の時代では、新しい機能(あるいはサービス)を交換機に持たせるのか、あるいは端末かという論争があったことを思い出しました。新しい収入源になるものですから、通信事業者は交換機に持たせたかったでしょうし、メーカは新しい端末を発売できるわけですから端末に持たせたかったでしょう。

例えば、留守番電話機能を考えてみると分かります。固定電話だと留守番電話機能は現状では電話機にほぼ標準搭載されていると思います。一方、携帯電話では携帯電話機ではなく、ネットワークサービスとして提供されています。留守番電話が入っていても、固定電話では通信事業者の収入には当然ならないですが、携帯電話だとそれは通信事業者の収入になります・・・しかも留守番電話サービスの月額料金と留守番電話を聞くたびに発生する通話料収入です。

このようにインテリジェンスをどこが持つかということは、収入源を確保するという点で企業にとっては大きな戦略的な意味を持つものなのです。

競争政策にとっても、垂直統合モデルではそのインテリジェンスを誰が握るかがポイントになるということだと理解しました。インテリジェンスがポイントだとすれば、これからは端末もネットワークの競争に影響するような気がしますが、その点はどうなのでしょう・・・。

さて、報告書に戻ると、検討に際しての基本的視点として、ネットワークの中立性に関する3原則とインターネットとNGNの関係を整理し、最後に基本的視点を挙げています。

まず3原則は以下のとおり。

  1. 消費者がネットワーク(IP網)を柔軟に利用して、コンテンツ・アプリケーションレイヤに自由にアクセス可能であること
  2. 消費者が技術基準に合致した端末をネットワーク(IP網)に自由に接続し、端末間の通信を柔軟に行なうことが可能であること
  3. 消費者が通信レイヤ及びプラットフォームレイヤを適正な対価で公平に利用可能であること

上記の原則に合致したネットワークが維持・運営されているとき、ネットワークの中立性が確保されるとしています。(消費者という用語が使われていますが、利用者とした方がいいような気がします。)

これまでの通信市場における競争政策は、競争中立性と技術中立性が求められてきましたが、今後はネットワーク中立性も求められるということです。つまり今後の競争政策は新たな視点としてネットワーク中立性が求められ、それは具体的には、特定の利用者を有利または不利に扱うことがないようにすることであると理解しました・・・(こういう理解でよいのだろうか)。

上記の理解でよいとすると、ネットワークの中立性と競争の中立性はどこがどう違うのでしょうか?水平的な関係に垂直的な関係も視野に入れただけではないのかと考えてしまいます・・・けど、これは理解不足なのでしょう。追々、考えていきたいと思います。

次にインターネットとNGNの関係を整理しています。

NGNはどのように位置づけられるか?それは、報告書(7ページ)にあるインターネットの特徴の2番目に挙げてある次の一文からインターネットの一部と理解するのがよいのではないかと思います。

  • 各ネットワークが多層的に相互接続され、インターネットというオープン型のネットワークそれ自体が一つの自律的なネットワークとして機能している。

つまりNGNはインターネットに多層的に相互接続されるネットワークの一つに過ぎないということです。NGNは、報告書にも書いてあるとおり、「従来のキャリア網をIPベースで再構築するネットワークであり、QoS及びセキュリティをサービス付与機能において実現するキャリア管理型のネットワーク」ですから、それはインターネットを代替してしまうようなものではありません。あくまでもインターネットの一部として機能するものだと現時点では思います。

次にネットワークの中立性を確保するための基本的視点としては

  • ネットワークのコスト負担の公平性
  • ネットワークの利用の公平性

が挙げられています。そこで具体的にNGNについてインターンフェースのオープン性を確保することが必要とありますが、NGNがインターネットの一部であると考えれば、特にNGNだけ取り上げる必要はないと思うのですが、どうなのでしょう。オープンであることがインターネットをインターネットたらしめている特性だとすれば、NGNがオープン性を排除した瞬間にユーザからの指示を失い、ビジネスとして成り立たなくなることになるのではないのでしょうか。

報告書ではこの後に留意事項と海外の事例が述べられています。海外事例の取り上げ方を読むと、日本は欧州型に近く、欧州はドミナント規制の延長線上で考えていると紹介されており、日本も、「・・・依然としてボトルネック設備を有するドミナント事業者が存在しているという市場特性を踏まえ、これに対応したネットワークの中立性について検討していくことが求められる」(報告書の15ページ)としています。

(続く)

久々にこの手の話題を取り上げましたので、ピント外れのコメントや理解が不十分である部分、解釈上の間違いがあるかも知れません。そのような部分にお気づきの方がいらっしゃいましたら、コメントいただければ幸いです。

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