日本橋濱町Weblog(日々酔亭)

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大杉潤著『定年ひとり起業』:機会を、時間を、行動を大切にしよう(長文)

この3月に定年退職した。何も考えてなかったわけではないし、やりたいことはあるが、具体的に次の一歩をどうするかは具体化できていなかった。それを今自分の中で考えている最中に出会った本だ。

第二の働く場をどう見つけるか・・・自分のやりたいことをやりたいという思い、これまでのノウハウ、スキル、そして人脈を活かすのはもちろんだが、すると自分には働く場として何があるのだろうか・・・いくつかの選択肢はある。大きくは、まずどこかの企業へ再就職、もう一つは自分で起業することだろう。自分の場合、再就職のうち多くの人が選択する再雇用は選択しなかった。そして職安に通って色々な選択肢を含め、検討しているというのが現状。

Starting a solo business after retirement is not a dream

定年ひとり起業は夢ではない

そんな時、大杉さんの著書「定年ひとり起業」がAmazonで目に留まった。自分で起業するのは恐れ多いという思いがあったが、これはこれで一つの可能性として知っていてもいいと思い読んでみた*1

章立ては以下の通り、7章立て、プラス、「はじめに」と「おわりに」に参考文献一覧が付く。ページ数は全部で300ページ弱だ。ちょっと長くなるが、目次を節まで載せておく。ここを読むだけで読んでみた方がいいのではないかと引き寄せられるのではないか。

  • 序章 70歳まで働く時代がやってきた
    • 70歳定年制で増える「新しい働き方」
    • 年金受給を75歳まで繰り下げる選択が可能になった意味
    • 50代は「定年後の新しい働き方」や生涯ライフプランを決める人生の最重要期
    • 定年のない「定年ひとり起業」という最強の選択肢
  • 第1章 「定年ひとり起業」とは?
    • 「定年ひとり起業」の定義
    • 「定年ひとり起業5原則」の深い意味
    • 「定年ひとり起業」に向いている仕事とは?
    • いつから「定年ひとり起業」の準備をするか?
  • 第2章 定年再雇用のワナ
    • 「70歳定年」に対する現役会社員の意識
    • 年金受給開始年齢は70歳、さらに75歳になる理由と時期
    • 70歳まで働く時代の選択肢は「再雇用」でいいのか
  • 第3章 「定年ひとり起業」のマネープラン〜老後資金不安がなくなる「年金戦略」とライフスタイル
    • マネープランは「人生プラン」
    • 老後マネープランのポイントは3つ
    • 大杉潤の年金戦略
    • 老後マネープランの革新は目指す「ライフスタイル」
    • 大杉潤の老後ライフスタイル
    • 大杉潤の「終の棲家」戦略
    • 「付き合う人」は仕事がベース
    • 家系のキャッシュフロー表とバランスシート(B/L)を作成
    • マネープランの仕上げは「資産運用」
  • 第4章 全公開!大杉潤「定年ひとり起業」への道
    • 「定年ひとり起業」というライフスタイル
    • 起業の成否を決める「ミッション」「ビジョン」「戦略」
    • 33年間続けた会社員から57歳で独立企業できた理由とは?
    • 独立企業のきっかけとなった3つの仕事
    • 起業の準備は2年間
    • 家族の大反対を乗り越える切り札になった「妻社長メソッド」
    • 起業が軌道に乗るのは3年目が多い
  • 第5章 「定年ひとり起業」ケーススタディ〜3人の企業ストーリーと成功の秘訣
    • 木村勝さん(60歳)〜大手自動車メーカーからの転身
    • 高橋和子さん(50代)〜専業主婦から片づけのプロへ
    • 高伊茂さん(71歳)〜「話力」を究めて終身現役
  • 第6章 「定年ひとり起業」という選択
    • 「70歳まで働く時代」の会社員にとってベストな選択とは?
    • 人生の勝負は後半にあり
    • 人生の幸福度を決める「思考法」と「習慣」
    • 仕事に対する思考法を決めるのは「自己決定感」
    • 習慣とは「行動の継続力」
    • 長く稼ぎ続けるための基盤は「健康」
  • 第7章 アフター・コロナは「幸福学」で働く〜なぜ長く働き続けると幸せになるのか?
    • 「定年ひとり起業」なら楽しく働ける
    • アフター・コロナ時代は、個人による情報発信を!
    • 働くから健康になる、健康寿命がのびる!

赤字は、気になったところ。最初の「定年ひとり起業」という書名にもなっているこの本の主題を表している言葉・・・これが現実にできるのか?出来たら面白いと思い手に取ったのだった。

2章と3章は、60歳以降の我々の状況を、働くという視点とマネーの視点から解説してくれる。その中では、「再雇用」が引っかかった。これはポジティブな意味ではない。現状の再雇用の中身を見ると、自分にとっても後に続く者にとっても組織にとってもよくないという自分の思いと、ここでの再雇用に潜むネガティブな側面を読むことにより、やはりこの選択肢は取らなくて良かったと思ったのだった。そして大切なマネープランの話。ここを読むことでひとり起業を実現するためのお金に対する考え方が分かるし、いろいろなやり方があることも同時に教えてくれる。自分の苦手な資産運用・・・やはりここはしっかり考えないといけないと改めて気づかせてくれる。お金の面での自分のやるべきことを把握できる。

4章、5章は実際の定年ひとり起業について、著者の大杉さんの実際とその他の例として3名の方のひとり起業が簡潔に述べられている。4章は「ミッション」「ビジョン」「戦略」を常に検討しながら、取り組むと3年後ぐらいに成果が出るのだと・・・本書はまずここから読んでもいいかもしれない。5章はそれの事例紹介だ。

そして6章は、これまでのまとめとも言える章で、実際に定年ひとり企業をする際の考え方が綴られている。勝負は人生の後半であるということ、思考法と習慣が大切ということ、そして健康。ひとり起業に対し、難しさを感じるかもしれないが、実はひとり起業であるが故にハードルはそれほど高くなく、チャレンジしてみるためのポイントが綴られている。

この『定年ひとり起業』は、著者の実体験に基づきながら、かつ、著者が銀行に勤めていたことからその面で信頼でき、ひとり起業についてわかりやすく解説してくれている。迷っている人はぜひ読むといろいろ気づきを与えてくれ、かつ、背中を押してくれるだろう。

自分は定年退職の年に本書を手に取ったが、本当に読んでもらいたい人は50歳前後の人たちだ。自分の場合、30歳代は社会に出て仕事を覚えた10年間、40歳は自分でいろいろ仕事を回せるようになった10年間、50歳は総仕上げと定年後を考える10年間として過ごすのが理想だったなと今振り返っている。実際は50歳でそういうことは全く考えなかったのが後悔だ。

50歳の時に仕事では総仕上げをしつつ、60歳以降の人生をどうするかを考えるのが理想ではないかと思う。50歳の皆さん、ぜひ本書をとって10年後どうするかを考えてほしい。

さて、定年ひとり起業の本は、これでは終わらない。3部作としてあと2冊出版されている。マネー編と生き方編だ。内容は確認していないが、マネー編は本書の第3章を、生き方編は6章、7章あたりをさらに詳しく述べた者ではないかと想像される。早々に読んでみたいと思う。

どちらも興味深い。

60歳は還暦で、一回りしてスタートラインに戻るとして、残りの人生をどう考えるか、具体的に示してくれているので、今、還暦の人も、まだまだ先と思っている50歳前後の人も読むといろいろ得るところがあると思う。おすすめ。

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*1:本音をいえば、まずは再就職するにしろ、最終目的は起業なのだ

ジェフ・フレッチャー著『SHO-TIME 大谷翔平 メジャー120年の歴史を変えた男』:野球がとことん好きな男は夢を叶える

本書は、ロサンゼルス・エンゼルス大谷翔平選手の2018年の大リーグ移籍から21年の二刀流による大爆発までを描いている。著者の言葉(謝辞にある)によれば、2018年のスプリングキャンプ後に本書を書き始め、6月までに4章まで書き上げたが、その後、「大谷の内側側副靱帯断裂が判明し、彼の夢と同時に私の本も一時停止となった。3年近く経った後に、大谷は再び101マイルの速球を投じるようになり、またフェンスの向こうへ打球を飛ばすようになった。こうして物語は再び息を吹き返した」とあり、さらに「・・・この驚異的なシーズンで彼が成し遂げたことの表面をなぞるにとどまらず、さらに深奥まで突き詰め、この偉業を達成できた背景や文脈まで提供することだった」とある。

本書はまさしくこの著者の渾身の作品であり、大谷の復活から飛翔へのプロセスを観察可能なあらゆる情報を駆使し、描いている。今後、大谷を選手としてその成功の背景を知ろうとする時、書籍は大谷の大リーグで開花するまでを記録として長く読み継がれていくあろう。

He is the real star.

スターの中のスター!

内容は以下の通り、15章建てで大リーグ移籍後から2021年の活躍までを中心に描き、その業績がいかにすごいものかを幼少期の頃、日本プロ野球での活躍やそれを可能にした日ハムの試行錯誤、大リーグの二刀流の歴史と現状、チームメートの証言などを駆使し、詳細に描き出している。

  • 序文:ロサンゼルス・エンゼルス前監督 ジョー・マドン
  • プロローグ
  • 第1章 野球少年:奥州の野球少年、未来を引き寄せる夢ノート、ファイターズ大谷誕生
  • 第2章 周囲と自らへの証明:未到へのチャレンジ、100年前のレジェンド、加速する才能、生きる伝説
  • 前代未聞の獲得競争:海を渡る選手たち、争奪戦の舞台裏、頂上決戦の末に
  • 祝音と呪い:青空のもとでの記者会見、エンゼルスの歴史、二刀流を迎えるために
  • 必要な時間:スプリングトレーニング、投手としての期待値、日本の高校生バッター
  • あらゆる期待を上回る:懐疑派も沈黙する活躍、喜びのエア・ハイファイブ、オオタニ狂想曲、覚醒する瞬間、苦闘の予兆
  • 第7章 落胆の診断:靭帯損傷の判明、あらゆる可能性を試す、肘にメスを入れるという決断
  • 第8章 困難続きの2シーズン:ソーシアからオースマスへ、僚友との別れとチームの迷走、満を持して登板した男、新型コロナの影響、夜明け前の深い闇
  • 第9章 ダイヤモンドの研磨:一からの見直し、1世紀前の実証、科学的根拠による体づくり
  • 第10章 新しいアプローチ、新しい希望:二刀流復活への奇策、万全に整った春、離れ業の始まり
  • 第11章 特別なことの始まり:打者・大谷の再始動、知られざる二刀流たち、投手・大谷の再始動
  • 第12章 黄金の基準:加速する進化、大ベテランのような老獪さ、太平洋をまたぐ千両役者、オールスター選出、ニューヨークの3連戦
  • 第13章 スターの中のスター:周囲の期待値、ホームラン競争、数字以上の偉業
  • 第14章 圧倒的実績と落胆:孤高の存在、消耗との戦い、失意の中の意志
  • 第15章 ユニコーン:二刀流という荒野で、幻かそれとも未来の常識か
  • エピローグ
  • 謝辞
  • 観光に寄せて Shohei Ohtani Fan Cloub KAORU カオル

全部で350ページを超え、読み応えがあるが、あっという間に読み終えるほど興味深い内容となっている。

マスコミから流れてくる彼の動静やインタビューの文言と本書を読むことで大谷の選手としての特徴が浮かび上がる。それは一言で言ってしまえば、「彼は野球がとことん好きなのだ」ということに尽きるだろう。野球で金儲けや名声を得たくてやっているわけではない。あくまでも好きでやっている。やる以上は上を目指したい、それだけなのではないか。周りからチヤホヤされようがされまいが、批判されようがされまいが、自分の目標をただ見つめ、それを目指して取り組む。そのためにはあらゆる機会を利用する。

大谷は、2019、2020年の2年間、故障で苦しんだ。それはちょうど新型コロナと重なった時期であり、その時期に彼は苦しむだけでなく、見事に生まれ変わったということだろう。あの2年間は彼にとって必要な時間だったのだ。自分の逆境をも強かに活かし、自分の糧にしてしまう。それを可能にしたのは、ひたすら野球が好きだというこのことに尽きる。

読み終えた後何を感じるか、考えているかは人それぞれだと思うが、字面を追うのではなく、著者が深奥まで突き詰めたこの作品を行間を読むように文字で書かれている事物の背景を想像し、考えながら読みたい内容となっている。

今後も本書は、我々が、マスメディアや現地で大谷の活躍を見ながら、本書を読み返すことで、それがあるのはこの期間の大谷の取り組みだったのだということを思い出させてくれ、大谷の素晴らしさを再認識させてくれるのではなかろうか。

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たまには趣味の読書の話題など・・・ケインズ、半導体、民主主義、データ分析

最近、読んでない・・・というよりは読み終わった本がないと言う方が正確か。

自分の机の周りには読みかけの本が何冊もある。研究所の机上やその周りも読みかけの本だらけだ。読みかけの本で最も引っかかっているのがこちら。こちらは色々関連書籍なども読んだ。この本も通しで読んでいるが、まだ記事にはしていない。書けなくなってしまったのだ。

その書けなくなった原因を乗り越えるためにも再度読み、記事をまとめないといけないと考えている。この本は4月以降でもう一度取り組まなければいけない。

これとは別に最近購入したところでは以下の4冊はなるべく早く読みたいところ。

 

Recently purchased books... Keynes, semiconductors, economics of democracy, data analysis, etc.

最近、購入した本・・・ケインズ半導体、民主主義、データ分析など

今、少しずつ読みするめているということで他の書籍より一歩先をいっているのが、ジョン・メイナード・ケインズ(上、下)だ。

なぜケインズは一般理論に至ったのか・・・それを知りたくて読み始めた。まだケンブリッジ大学での日々を読んでいるところ。若い頃からのケインズはやはり違う。ハーベイロードの前提ならぬ、ケンブリッジの前提というか、ケインズもすごいが、周りもすごい。この頃のイギリスのアカデミアの世界も垣間見れて興味深い。これは読まないでいられようかという内容だ。

上下2巻の分厚い本だで、もちろん高価だがこれは買って読んでもいいと思った。こういうの元々好きだし。

さて、お次は半導体戦争。以前、「2030年半導体地政学」を読んだが、今度の「半導体戦争」は半導体の起源にまで遡り、歴史的経緯を追っている。広い視野でデジタル化の今後を考える時、やはり半導体についての理解は大切だ・・・ということで買ってみた。以前読んだ半導体地政学の記事はこちら。

mnoguti.hatenablog.com

続きましては、「民主主義の経済学」。これは全く視野に入っていなかった本だが、坂井先生が、twitterで、「政治経済の読み物としても面白いですが、因果推論の非常に分かりやすい説明が秀逸と思いました」とコメントしているのを見て、因果推論について書かれているのか!ということで購入*1

やはり頭を鍛えるには、良書を読み、そして考えるに限るが、その良書を見分けるのは自分の目利きもあるが、やはり第三者として信頼のおける専門家が読んで評価しているというのはポイントだろう。そういう書籍はなるべく手に取り読んだ方がいいと思う次第(自分の場合)。

そして今回のラストを飾るのは、「ExcelとRではじめる やさしい経済データ分析入門」だ。これは、今更ながらもう一度学び直し・・・ということではなくて、秋以降、もしかしたら・・・なので、それに備えて買ってみたというところ。

ExcelとRの両方を視野に入れて、データ分析を勉強できるようになっているところがポイントだ。まずはやはり今更ながらの学び直し(これをリスキリングというのだろうかw)で自分で読みながら、練習問題などをこなしてみようというところ。

さて、今回挙げた4冊(パラコンシステントワールドを含めれば5冊)・・・どうなりましょうか。読み終われば、このブログに読書感想文が載るはずだ。

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ジョブズが巴水に見た技術と芸術の交点にあるシンプルさ

たまたまだった・・・新版画作家 川瀬巴水を知ったのはテレ東の美の巨人の10月29日の放送でたまたま巴水が取り上げたれていて、かつ、ジョブズが好んで購入していた作家であったことを知った。

www.tv-tokyo.co.jp

ジョブズが日本贔屓であったことは、有名で自分も以前から知っていた。特に禅宗との関わりがアップル製品のシンプルな美しさに影響を与えているのだろうと思っていた。そして今回、巴水の作品にも同じようなところを見ていたのだということが分かった。

俄然、巴水の作品に興味が出て、調べてみると千葉市美術館で新版画の展示会を11月3日までやっていることを知って、その最終日3日に見に行った。

www.ccma-net.jp

その際、撮影可だった巴水の作品が以下の4作品。

Hasui's works that were allowed to be photographed

Hasui's works that were allowed to be photographed

Hasui's works that were allowed to be photographed

Hasui's works that were allowed to be photographed

撮影可だった巴水の作品

他にもたくさんあったけど、ずーっと見て、拙い感性で理解したところでは、巴水の作品はシンプルで無駄がない。隅から隅まで全てに意味を持たせているのではないか、そこがジョブズとの共通点ではないかと感じたりした。

その後、巴水の本も購入して眺めているけど、隅々まで作者の意思を感じる構図と表現、それがジョブズの製品(MaciPhoneiPadなど)の設計思想と通じるのではないかとの思いが強い。

だいぶ前だけど、NHKでもWeb特集していた。

www3.nhk.or.jp

この記事は、ジョブズと巴水の作品の関係を教えてくれる。ジョブズの思想を理解したければ、巴水や曹洞宗の理解は必須だろう。ジョブズの生い立ち、曹洞宗の只管打坐、巴水の作風・・・その先にAppleの作品がある。

この部分を忘れなければ、Appleは盤石かと思っていたが、そのジョブズの亡き後のAppleはどこに行こうとしているのか・・・興味を持たれるところだが、そこを書いた書籍が出ている。

こちらも読まないと。

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佐々木実著『宇沢弘文-新たなる資本主義の道を求めて-』:一般均衡理論を極めた研究者が次に目指した社会的共通資本の理論構築の背景

すでに「資本主義と闘った男」を読んでいた*1ので、こちらを改めて読む必要があるかと思ったが、資本主義と闘った男を再読するには時間がかかるし、理解を深めるのも大変だということで、そのエッセンスだと勝手に考えて、手にとってみた。

読んでみた結果、宇沢弘文という経済学者の思想形成の背景に対する理解が自分なりに深まったと思う。まず時代背景が大きい。生まれた頃から多感な思春期を、世界恐慌から15年戦争という死と隣り合わせの世界で生きてきたこと*2。そして終戦後の混乱期に学生時代を過ごすことになる。おそらく多くの矛盾の中で生きていくことに対する思いがあったのではないか。

These two books should be kept close at hand at all times.

この2冊は常に身近に置いておきたい

そのような中で数学から経済学、マルクス経済学から近代経済学への研究分野の変更と米国での一般均衡理論や経済成長論における貢献とそこで知る一般均衡理論の限界(≒市場メカニズムの限界、資本主義の矛盾)。それから始まるその限界を越えるための取り組み。その理論的柱になるはずであった不均衡動学と社会的共通資本の構築への挑戦とつながっていく。本書は、そのエッセンスを130頁弱という新書版に納めたものである。構成は以下の通り。

  • はじめに 「資本主義」という問い
  • 第1章 生い立ち
  • 第2章 行動科学の申し子
  • 第3章 ベトナム戦争アメリカ経済学
  • 第4章 原点としての水俣病-自然と人間の経済学へ
  • 第5章 社会的共通資本とリベラリズム
  • 終  章 SHADOWの思想

各章それぞれで気付かされることが書かれている。自分としては、昔から分からなかった、アメリカからの突然の帰国や成田空港問題との関わりの背景を再度知ることができたのは大きかった。一人の人間の生き様として、シンプルで力強さを感じる。

Uzawa has lived in social contradiction since birth.

宇沢は生まれた時から社会的矛盾の中に生きてきた

そしてリベラルアーツを重視してきたその教育の姿勢がなぜだったのかという点も本書を読んでいて改めて分かったような気がした。

「宇沢は、ケネス・アロー、レオニード・ハヴィッツとともに一般均衡理論の世界的な第一人者だった。第2章で詳しく触れたように、一般均衡モデルは、完全競争の前提のもとで、全ての市場が均衡状態にある均衡市場体系について考察する。完璧な市場原理主義の世界といえるが、その理論を極めた宇沢やアロー、ハヴィッツはむしろ、一般均衡モデルの限界を厳密に確定していくことで、経済学の新たな課題を発見していった。私的な財ではない公共財をどう扱うべきか、不確実性や規模の経済(外部経済)の存在をどう捉えるか、などと言ったテーマである。一般均衡理論を極めたからこそ、彼らは新古典派理論のウィークポイントを熟知していた。」(本書、93頁)

経済学の限界を知ることは、同時にリベラルアーツの重要性に気づくことになっただろう。この複雑な社会を解明、理解する思想として、一般均衡理論を持ってしても説明できるのは市場の内だけだ。市場の外には多彩な社会があり、そこにさまざまな課題が存在している。そういう社会の複雑さ、多様性を忘れないためにもリベラルアーツが大切だ。リベラルアーツで自分の専門外のことを知ることは、自分の小ささ、無力さを知る営みでもある*3。大学の教養課程が1、2年生にあるのもそこを学ぶためだ。

おそらく只管打坐の考え方に触れているものならば、思考の前提として、市場=社会ではなく、社会=市場+非市場と考えるということは理解しやすいのではないだろうか。これは、個人は実は、社会の中の存在として整理すれば、個人=個人+他者と考えることになる。自分の行動を考えるときは、常に影響を受ける他者を考慮に入れることが必要ということになる。その具体的な仕組みが社会的共通資本になるのではないか。

以上、経済学という世界でその限界を少しでも越えようとした試みが、不均衡動学であり、社会的共通資本の理論であったということが簡潔に書かれている。

本書と前著は市場メカニズムの持つ限界を克服しようとした1経済学者の記録となっている。そしてその取り組みは、資本主義そのものを問い直す今の世の中で、「これからの社会的共通資本」という寄付講座ができるまでになっている。

Public symposium held at the University of Tokyo: Social Common Capital for the Future

東大で実施された公開シンポジウム:これからの社会的共通資本

先日、10月10日に東大で行われたキックオフシンポジウムが開催されている。これは別途YouTubeで配信予定だとのことだった。

www.carf.e.u-tokyo.ac.jp

下の写真は、大阪大学の安田洋祐氏による社会的共通資本を私的財、公共財、クラブ財の中で分類整理したものである。これから社会的経済資本の経済的性質が明らかにされ、社会におけるその重要性が解明されていくことになる。

Organizing Social Common Capital by Yosuke Yasuda, Osaka University

大阪大学 安田洋祐氏の社会的共通資本の整理

その安田氏の論考が日経ビジネスに掲載されている。

business.nikkei.com

研究者としての宇沢弘文を描いた本書の読後感としては、研究とは・・・と思わず考えずにはいられない。そして多くの経済学を学ぶ人にとって単に経済活動を分析する手段としての経済学だけではなく、経済活動を通して人間とは何かを問う思想としての経済学を学ぶことがこれからはより大切なのではないかと思った。

自分にとってこの佐々木氏の2冊は繰り返し読み返す本となるだろう。そして本人の啓蒙書や専門書も長らく積読資産になっていたが、これから少しずつ読んでみたいと思うのだった。

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*1:

mnoguti.hatenablog.com

*2:その時期に、曹洞宗のお寺で過ごした経験があることも個人的には興味を惹かれる。道元の只管打坐という考え。これが後半に出てくる「市場は社会に埋め込まれいている」という捉え方につながる。

*3:そういう己の限界を絶えず意識することで、社会の中での自分の位置付けを考え、貢献していくことが道を誤らないためにも大切なことだと気付かされる。

佐々木実著『竹中平蔵 市場と権力-「改革」に憑かれた経済学者の肖像-』:当時のグローバルな状況の中で果たした日本の立ち位置と改革との関係

この本の読み方は、少なくとも2つあると思った。一つは主人公の生き方に焦点を当てて読むアプローチ、もう一つは日本の政治過程や日米関係に焦点を当てて読むアプローチだ。自分は自ずとその両面を気にしながら読んだわけだが、やはり頭に残るのは前者だった。

読み終わった後、何とも言えない気分になった・・・自分が知っている範囲で、彼を含め彼に近しい人間の顔を浮かべると複雑な思いがよぎる。

経済学を研究する目的はいろいろあるだろう。真理の探究、社会や人間行動の解明、最終的には人間そのものについての問い・・・と格闘し続けるのではないか。普通はそちらだと思うのだが、今回の場合は、ビジネスに利用するということで、そうではない場合もあるということだ。ならば自分はどうか・・・微妙な立ち位置で30年間シンクタンクという業界に身を置いていたなと振り返って思わないではいられない。

Heizo Takenaka: Market and Power: Portrait of an Economist Possessed by "Reform

竹中平蔵 市場と権力-「改革」に憑かれた経済学者の肖像-

著者の佐々木実氏は自分とほぼ同世代。生きてきた時代背景は近いものがある。そういう人の見方で書いた作品だ。しかも、佐々木氏はその後、「資本主義と闘った男」*1を書き上げている。その佐々木氏からみた本書の主人公の表舞台での活躍が描かれているわけだ。佐々木氏という著者の見方・考え方を通した記述であることを考慮しても本書の内容は自分にとって重いものだ。
本書を読む限り、この主人公の目的は、経済学を通して社会や人間行動の一般理論を導き出そうとしたわけではなく、社会をより良くしようとしたわけでもなかったようだ。政府の政策決定過程で活躍したのだから、表向きは社会をより良くしようとした政策を次々出していったように思えるが、本書を読むとまた違う見方ができてしまう(そう考えてしまうのは、振り返らない、振り返ることをうまく避けているところなどが典型的なところだと思う)。

単に自分の稼ぎを最大化することが目的だったのだと思わずにはいられない。そのために彼は経済学を利用した。都合のいい理論やその研究を利用した。だから共著であるべき研究も単著の中に含めていた。学問としての経済学を極めるのは彼の目的ではなく、経済学は自分の目的を実現するための手段でしかなかった。だから学問上のルールに触れるようなことをしても気にならなかったのだろう。政策決定過程に入り込んでからも、米国の経済学者も含め経済学をうまく利用して、それを補強する材料は米国に求め、お膳立てうまくマスコミも利用し、自分のビジネスを進めていったのではないか。頭のいい人なんだと思う。

そこで考えるのは、研究者、学者とは何者か、研究、学問とはどういう営みなのか・・・ということだ。その存在理由をどこに求めたらいいのかというところを考えていくと、彼の生き方はやはり学問を極めるとかではなく、手段としての学問であったのだろうと・・・考えると、本書は研究者を目指す若い人にとっての反面教師の書ということになろうか。

本書は、以下の通り、8つの章からできている。その他にはじめにとおわりにが最初と最後につき、分量としては文庫本として400ページを越え、読み応えがある。章立ては以下の通り。

  • はじめに 「改革」のメンター
  • 第1章 和歌山から東京へ
  • 第2章 不意の転機
  • 第3章 アメリカに学ぶ
  • 第4章 仮面の野望
  • 第5章 アメリカの友人
  • 第6章 スケープゴート
  • 第7章 郵政民営化
  • 第8章 インサイド・ジョブ
  • おわりに ホモ・エコノミカスたちの革命

主人公に注目すると、自分としては読後感が非常に憂鬱なものになるのだが、一方、もう一つのアプローチとして本書の注目すべきは、日本の政治過程や、日米関係が日本の政治過程に及ぼす影響と米国の政策遂行の強かさが読み取れることか。こちらはサラッと書くだけになったが、詳しくは本書を読んでみてほしい。

米国側から見たら、米国の国益になるように手を打つとき、そこには必ず彼がいたということになる。彼からしてみたら、自分の目的を達成するためには日本にとっては米国をうまく利用できるのが一番だったであろう。そこが噛み合ってしまうところが恐ろしい。

本書から何を学ぶべきか・・・読み取るべきか・・・自分はそれを確かめるために、なぜか「今を生きる思想 宇沢弘文 新たなる資本主義の道を求めて」を読みたいと思うのだった。

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グルーブラインが終わる・・・いつまでも聴き続けたい番組なのに

ピストン西沢(本記事全て敬称略でいきます)・・・1964年9月生まれ、自分は1962年8月生まれということで同世代で何か響くものがあったのかもしれない・・・いつの間にか聞くようになっていた、聴くことが習慣化していた・・・ピストン西沢のDJ、グルーブライン。

聴き始めたのはいつからだったか・・・確か秀島史香と一緒にやっていた時だったと思う。二人の掛け合いは面白かった。二人がやっていたのは、2004年から2010年だから、おそらく2010年の数年前あたりから聴き始めたんだと思う。それからずーっとだから何だかんだ言って10年以上聞いていたことになる。

I used to listen to it on radiko at the secret base... Groove Line.

秘密基地でもradikoでよく聞いたよ・・・グルーブライン

まだ9月1ヶ月あるんだが、過去形だ。毎週、月曜から木曜が楽しかった。16:30にJ-WAVEを聴くのがいつの間にか習慣化していた。radikoが使えるようになってからは、radikoのタイムフリーで一度聞いた番組を再度聞いたりしていた。その番組が、9月一杯で終了すると昨日、何の前触れもなく、本人から発表された。


www.youtube.com

番組は、16:30から19:00までの2時間半放送されたのだが、中にいろんなコーナーがあって、最近ではやはり番組最後のピストンさんのDJを聴けるのが良かった。そしてほのかとの掛け合いも良かった。ここで知ったのがニューオークボのパスタだ。これはあたりだった。実は今日もナポリタンを作った。写真がそれだ。麺の美味しさがあるから、自分のような素人が作っても完成した時の美味しさがある。それを伝えてくれたのが、ピスちゃんだった*1

Neapolitan made with pasta from New Oakbo

ニューオークボのパスタで作ったナポリタン

そして視聴者からの投稿が面白かった。メンクイズカロック・・・覚えちゃったよ・・・みたいな変なラジオネームで、そういう人たちが多く常連化していて、聞いていて、「あっ、また投稿しとる」とか思いながら聞いていた。

自分の面白いと思うことをとことんやる・・・ある意味、タモリの同世代版にあたると言ってもいいか。そんな人がやっていたグルーブラインがこの9月で終わる・・・残念だ。10月から自分はこの時間に何を聞けばいいんだろうか*2

グルーブラインよ永遠なれ!

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*1:


www.youtube.com

*2:ピストン西沢の声はJ-WAVEの日曜日夜のBRIDGESTONE DRIVE TO THE FUTUREで聞くことができる。

www.j-wave.co.jp

深井龍之介著『歴史思考ー世界史を俯瞰して、思い込みから自分を解放するー』:歴史を通して全てを相対化して考えると当たり前の呪縛から解放されるという思考

深井さんとはNTTがパラコンシステント・ワールドを実現するための実験場として開設しているNatural Society Lab*1でご一緒させていただいた。その取り組みの中で深井さんを初めて知り、深井さんをより理解するために現在人気のコテンラジオ*2を聴いたのだが、これが面白い。一時期は、日がな一日聴いていたこともあったぐらいだ。これを聞いていると、深井さんご自身の話も出てくるところもあり、かなり勉強になった。

さて、本書、歴史思考は、その深井さんの初めての著書となる。深井さんが思い入れたっぷりで書かれた本であろうことが、最後を読むと分かる。

Mr. Fukai's first book ... Historical Thinking

深井さんの初めての著作・・・歴史思考

内容は、歴史上の人物を取り上げながら、物事の考え方や捉え方がいかに自分の思い込みに縛られているかを明らかにし、自分とは何かを考えさせてくれる。自分らは何をするかが大切なのではなく、自分とは、今この世に存在することだけで非常に意味があることなのだということを平易な文章で、歴史上の人物の生き様を参考にしながら理解させてくれる。

構成は、プロローグとエピローグの他に7章建てになっている。

繰り返しになるが、本書では、日頃、自分を律している価値観や自分が悩んでいる社会の有り様は歴史の流れの中で考えれば、絶対的なものではなく、時代や状況が変われば、それも変わっていくことが述べられ、我々は何をやるかの前に、存在すること、そのことだけで価値があるとし、自分の価値は今だけでは分からないことを歴史上の偉人たちの生き様を通して解説していく。

Thinking of everything in relative terms... freeing us from the spell of the norm.

全てを相対化して考えると・・・当たり前の呪縛から解き放つ

本書をパラコンシステント・ワールドとの接点でいえば、それは191ページ、「特定の価値観に距離を置くと「私」が広がる」の項だろう。ここは本書のまとめのような位置付けの中に位置している部分で、少し長くなるが、引用しておく。

教養によって特定の価値観や考え方から自由になるのが「メタ認知」なら、特定の「私」から自由になるという究極のメタ認知が「悟り」です。

メタ認知ができるようになると、特定の価値観に基づく悩みから自由になるだけではなく、異なる価値観や立場の人を理解しやすくなります。

すると、「私」の範囲が広がっていくんです。

これまでは異質だと思っていた人や集団を理解できるようになれば、「他人事」が「自分事」に変わっていきます。すべてを自分の延長線上に位置付けられるようになる、という感じでしょうか。

(中略)

だから、メタ認知によって「自分事」の範囲が広がれば、モチベーションが得やすくなる。(攻略)

他人事が自分事になり、自分事の範囲が広がる・・・まさしくSelf as Weのことではないかとこの部分を読んだ際、あっ!と思ったのは言うまでもない。Natural Society Labの活動に深井さんが呼ばれた背景が明らかになった瞬間だった。

ここでいう、「メタ認知」は、本書の最初に出てくる言葉だ。この言葉をしっかり頭に入れて読むことが本書の理解を深めるのにキーになる。

さて、「メタ認知」とは何か、これも引用しておこう。

(前略)僕らの「当たり前」が、当たり前ではないことを理解するということなんです。

僕はそれを「メタ認知」と呼んでいます。

「メタ」は超えるという意味なので、「メタ認知」は今の自分を取り巻く状況を一歩ひいて客観的に見る、といった意味です。

このメタ認知というものの見方・考え方は、調査研究を生業とするものは当然、大切にしなければいけないものだ。

これ、中高生の人にぜひじっくり読んでもらいたい。

おすすめだ。

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*1:こちらがそのサイト。パラコンシステント・ワールドを実現するために必要とされるSelf as Weという概念をめぐる知的ジャーニーだ。色々な方の議論が載っているので面白い。

group.ntt

*2:コテンラジオは各種podcastで聴ける。今までのコンテンツもかなり溜まってきていて、いろいろな歴史を通しての議論が面白い。こちらはこちらでおすすめ。

cotenradio.fm

アーネスト・クライン著『ゲームウォーズ』(上・下):1980年代ゲーマーにとって懐かしいこといっぱい!

自分はゲーマーではないが、それでも1980年前後は、インベーダーゲームパックマンブロック崩しとか、喫茶店のテーブルやゲームセンターで結構やったものだ。それが少し背伸びしてパチンコしだしてからは遠ざかって今に至る。最近は暇つぶしにポケモンGoをやるぐらい。

今、いろいろなSFを読んでみようということでまず手に取ったのが本書だった・・・ゲームウォーズってわかっちゃいたけど、ここまでゲームの話だとは思わなかったよ。しかもご存じのゲームやアニメ、特撮映画などの日本のキャラクターが随所に出てくる。

Game Wars...nostalgic and fun game sci-fi

ゲームウォーズ・・・懐かしくも楽しいゲームSF

物語は、リアル社会の底辺に住む、恵まれない一人の子供(パーシヴァル)がサイバー空間で自分のアバターを操りながらゲームをすることでサイバー空間上の友達を得、有名になり、最後は勝者になるとともに、サイバー空間上の友がリアルでの友にもなるというストーリーだ。

巨大なサイバー空間(OASIS)の支配権をめぐる争奪戦。ゴールを目指し、多くのゲーマー(ガンター)とサイバー空間を支配しようとする一団(シクサーズ、IOI社)との競争。

自分も知らないようないろいろな実際のゲーム名が出てくるので、ゲーマーにはたまらない小説だろう。ストーリーはシンプルで若者の冒険アドベンチャー小説といったところか。

ゲーマーでない人も、様々な日本のアニメや映画等のキャラクターが出てくるので、楽しみながら読める。

A fun adventure novel with a gamer as the hero!

ゲーマーが主人公の楽しい冒険小説!

ゲーマーでもない自分がこの小説を読む意味?目的?は、それはこの小説で描かれているサイバー空間やリアル空間のあり様が、SF(空想科学)としてではなく、実現間近の現実世界の描写として読めることだ。

eSports、アバター、Web3、NFT、暗号資産のさらなる普及の先にある未来・・・それはここで描かれているような世界ではないのか?・・・と妄想させてくれるのがこのSF小説

そういう視点から再読すると何が見えているのか、OASISというサイバー空間での冒険を中心に書かれているが、ここに書かれていない部分がどうなっているのか・・・例えば、これだけのサイバー空間を動かすにはどれくらいの電力が必要か、コンピュータの性能は、経済活動はどうなっている、サイバー空間での経済活動や行動とリアル空間の自分との権利関係は・・・とか、いろいろ妄想することは多々あるし、具体的に何か気づきがあるのか、SFを読む醍醐味はこういうところだと思いつつ、再度、ページをめくり始めている。

そうそう、この小説、映画化され、今はDVDになっている。Netflixにもあるのでぜひ見てみたいと思う。

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攻殻機動隊 SAC_2045 SEASON2:待望のシーズン2が公開された!3Dも進歩している、ストーリーも興味深い

やっと来たか!シーズン2!!

攻殻機動隊のシーズン1が公開されたのは、2020年・・・それから2年、やっとシーズン2が公開された。下記の記事は、2年前、シーズン1が公開された時の記事*1

mnoguti.hatenablog.com

当時、3D映像がどんなものか注目していたわけだが、正直、満足するレベルではなかった。ストーリーは、SACの時と同じく、時流の話題を巧みに取り入れながら、未来の中にそれを描きこむということである意味、リアリティを感じさせるもので、面白かった。

All eyes are on Ghost in the Shell: Tachikoma! How will it fare in Season 2!

攻殻機動隊といえば、タチコマ!シーズン2での活躍やいかに!

その後、そんなに時を空けずシーズン2は公開されると思ったが、予想だにしなかった2年という時間が経っていた。今回、シーズン2を見始めているが、その理由はおそらく3Dの洗練さの向上に時間をかけたということではないかと勝手に想像している。そう思わせるぐらい初見で映像がだいぶ変わったと感じるほど、確かによくなっている。

www.ghostintheshell-sac2045.jp

内容については、江崎プリンがポストヒューマンになってしまうとか、オモシロが戻ってきてるとか、シマムラタカシは、マトリクスのネオみたいだとか・・・先出しされているYouTubeの動画をみていろいろ想像しているまでで、これからじっくり楽しませてもらいましょうというところ。


www.youtube.com

神山監督だから当然かもしれないが、今回の攻殻機動隊もシーズン1からSAC、Stand Alone Comlexとなっており、神山攻殻機動隊シリーズの流れの中での展開で、一人一人が主人公ってことなのだろうが、なかでも江崎プリンが浮き出てきているような予感がする。そのあたりもどうなのか、楽しみたいと思う。

これからしばらくは攻殻機動隊 SAC_2045 シーズン2に夜な夜なお世話になるのだろう。寝不足にだけはならないようにしようと思う。

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*1:そういえば、この時にNetflixと契約したのだった。