深井さんとはNTTがパラコンシステント・ワールドを実現するための実験場として開設しているNatural Society Lab*1でご一緒させていただいた。その取り組みの中で深井さんを初めて知り、深井さんをより理解するために現在人気のコテンラジオ*2を聴いたのだが、これが面白い。一時期は、日がな一日聴いていたこともあったぐらいだ。これを聞いていると、深井さんご自身の話も出てくるところもあり、かなり勉強になった。
さて、本書、歴史思考は、その深井さんの初めての著書となる。深井さんが思い入れたっぷりで書かれた本であろうことが、最後を読むと分かる。
内容は、歴史上の人物を取り上げながら、物事の考え方や捉え方がいかに自分の思い込みに縛られているかを明らかにし、自分とは何かを考えさせてくれる。自分らは何をするかが大切なのではなく、自分とは、今この世に存在することだけで非常に意味があることなのだということを平易な文章で、歴史上の人物の生き様を参考にしながら理解させてくれる。
構成は、プロローグとエピローグの他に7章建てになっている。
- プロローグ 僕たちの「当たり前」を疑え(チンギス・カン)
- 1 シーパースターも凡人だった(イエス・キリスト、孔子)
- 2 100%完璧な人間なんていない(マハトマ・ガンディー)
- 3 人生のクライマックスは終盤に現れる(カーネル・サンダース)
- 4 奇跡を起こすのは誰だ?(アン・サリヴァン)
- 5 千年後のことなんて誰も分からない(武則天)
- 6 僕らの「当たり前」は非常識(性、お金、命)
- 7 悩みの答えは古典にある(アリストテレス、ゴータマ・シッダールタ)
- エピローグ 今こそ教養が必要なワケ
- おわりに この本も、歴史の一部です
繰り返しになるが、本書では、日頃、自分を律している価値観や自分が悩んでいる社会の有り様は歴史の流れの中で考えれば、絶対的なものではなく、時代や状況が変われば、それも変わっていくことが述べられ、我々は何をやるかの前に、存在すること、そのことだけで価値があるとし、自分の価値は今だけでは分からないことを歴史上の偉人たちの生き様を通して解説していく。
本書をパラコンシステント・ワールドとの接点でいえば、それは191ページ、「特定の価値観に距離を置くと「私」が広がる」の項だろう。ここは本書のまとめのような位置付けの中に位置している部分で、少し長くなるが、引用しておく。
教養によって特定の価値観や考え方から自由になるのが「メタ認知」なら、特定の「私」から自由になるという究極のメタ認知が「悟り」です。
メタ認知ができるようになると、特定の価値観に基づく悩みから自由になるだけではなく、異なる価値観や立場の人を理解しやすくなります。
すると、「私」の範囲が広がっていくんです。
これまでは異質だと思っていた人や集団を理解できるようになれば、「他人事」が「自分事」に変わっていきます。すべてを自分の延長線上に位置付けられるようになる、という感じでしょうか。
(中略)
だから、メタ認知によって「自分事」の範囲が広がれば、モチベーションが得やすくなる。(攻略)
他人事が自分事になり、自分事の範囲が広がる・・・まさしくSelf as Weのことではないかとこの部分を読んだ際、あっ!と思ったのは言うまでもない。Natural Society Labの活動に深井さんが呼ばれた背景が明らかになった瞬間だった。
ここでいう、「メタ認知」は、本書の最初に出てくる言葉だ。この言葉をしっかり頭に入れて読むことが本書の理解を深めるのにキーになる。
さて、「メタ認知」とは何か、これも引用しておこう。
(前略)僕らの「当たり前」が、当たり前ではないことを理解するということなんです。
僕はそれを「メタ認知」と呼んでいます。
「メタ」は超えるという意味なので、「メタ認知」は今の自分を取り巻く状況を一歩ひいて客観的に見る、といった意味です。
このメタ認知というものの見方・考え方は、調査研究を生業とするものは当然、大切にしなければいけないものだ。
これ、中高生の人にぜひじっくり読んでもらいたい。
おすすめだ。