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ジェフ・フレッチャー著『SHO-TIME 大谷翔平 メジャー120年の歴史を変えた男』:野球がとことん好きな男は夢を叶える

本書は、ロサンゼルス・エンゼルス大谷翔平選手の2018年の大リーグ移籍から21年の二刀流による大爆発までを描いている。著者の言葉(謝辞にある)によれば、2018年のスプリングキャンプ後に本書を書き始め、6月までに4章まで書き上げたが、その後、「大谷の内側側副靱帯断裂が判明し、彼の夢と同時に私の本も一時停止となった。3年近く経った後に、大谷は再び101マイルの速球を投じるようになり、またフェンスの向こうへ打球を飛ばすようになった。こうして物語は再び息を吹き返した」とあり、さらに「・・・この驚異的なシーズンで彼が成し遂げたことの表面をなぞるにとどまらず、さらに深奥まで突き詰め、この偉業を達成できた背景や文脈まで提供することだった」とある。

本書はまさしくこの著者の渾身の作品であり、大谷の復活から飛翔へのプロセスを観察可能なあらゆる情報を駆使し、描いている。今後、大谷を選手としてその成功の背景を知ろうとする時、書籍は大谷の大リーグで開花するまでを記録として長く読み継がれていくあろう。

He is the real star.

スターの中のスター!

内容は以下の通り、15章建てで大リーグ移籍後から2021年の活躍までを中心に描き、その業績がいかにすごいものかを幼少期の頃、日本プロ野球での活躍やそれを可能にした日ハムの試行錯誤、大リーグの二刀流の歴史と現状、チームメートの証言などを駆使し、詳細に描き出している。

  • 序文:ロサンゼルス・エンゼルス前監督 ジョー・マドン
  • プロローグ
  • 第1章 野球少年:奥州の野球少年、未来を引き寄せる夢ノート、ファイターズ大谷誕生
  • 第2章 周囲と自らへの証明:未到へのチャレンジ、100年前のレジェンド、加速する才能、生きる伝説
  • 前代未聞の獲得競争:海を渡る選手たち、争奪戦の舞台裏、頂上決戦の末に
  • 祝音と呪い:青空のもとでの記者会見、エンゼルスの歴史、二刀流を迎えるために
  • 必要な時間:スプリングトレーニング、投手としての期待値、日本の高校生バッター
  • あらゆる期待を上回る:懐疑派も沈黙する活躍、喜びのエア・ハイファイブ、オオタニ狂想曲、覚醒する瞬間、苦闘の予兆
  • 第7章 落胆の診断:靭帯損傷の判明、あらゆる可能性を試す、肘にメスを入れるという決断
  • 第8章 困難続きの2シーズン:ソーシアからオースマスへ、僚友との別れとチームの迷走、満を持して登板した男、新型コロナの影響、夜明け前の深い闇
  • 第9章 ダイヤモンドの研磨:一からの見直し、1世紀前の実証、科学的根拠による体づくり
  • 第10章 新しいアプローチ、新しい希望:二刀流復活への奇策、万全に整った春、離れ業の始まり
  • 第11章 特別なことの始まり:打者・大谷の再始動、知られざる二刀流たち、投手・大谷の再始動
  • 第12章 黄金の基準:加速する進化、大ベテランのような老獪さ、太平洋をまたぐ千両役者、オールスター選出、ニューヨークの3連戦
  • 第13章 スターの中のスター:周囲の期待値、ホームラン競争、数字以上の偉業
  • 第14章 圧倒的実績と落胆:孤高の存在、消耗との戦い、失意の中の意志
  • 第15章 ユニコーン:二刀流という荒野で、幻かそれとも未来の常識か
  • エピローグ
  • 謝辞
  • 観光に寄せて Shohei Ohtani Fan Cloub KAORU カオル

全部で350ページを超え、読み応えがあるが、あっという間に読み終えるほど興味深い内容となっている。

マスコミから流れてくる彼の動静やインタビューの文言と本書を読むことで大谷の選手としての特徴が浮かび上がる。それは一言で言ってしまえば、「彼は野球がとことん好きなのだ」ということに尽きるだろう。野球で金儲けや名声を得たくてやっているわけではない。あくまでも好きでやっている。やる以上は上を目指したい、それだけなのではないか。周りからチヤホヤされようがされまいが、批判されようがされまいが、自分の目標をただ見つめ、それを目指して取り組む。そのためにはあらゆる機会を利用する。

大谷は、2019、2020年の2年間、故障で苦しんだ。それはちょうど新型コロナと重なった時期であり、その時期に彼は苦しむだけでなく、見事に生まれ変わったということだろう。あの2年間は彼にとって必要な時間だったのだ。自分の逆境をも強かに活かし、自分の糧にしてしまう。それを可能にしたのは、ひたすら野球が好きだというこのことに尽きる。

読み終えた後何を感じるか、考えているかは人それぞれだと思うが、字面を追うのではなく、著者が深奥まで突き詰めたこの作品を行間を読むように文字で書かれている事物の背景を想像し、考えながら読みたい内容となっている。

今後も本書は、我々が、マスメディアや現地で大谷の活躍を見ながら、本書を読み返すことで、それがあるのはこの期間の大谷の取り組みだったのだということを思い出させてくれ、大谷の素晴らしさを再認識させてくれるのではなかろうか。

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