デジタルトランスフォーメーション、DXとは何か・・・某官庁のプロジェクトで昨年から今年にかけて考えた。今までの情報化やデジタル化と何が違うのかと。ハードやそれが実現するソフトウェア、サービスに注目すれば、AIであり、IoTであり、クラウドが普及し、それが我々の生活や仕事の中に入り込んでくる過程と言えるだろう。今までは電話機、スマホ、テレビなど機器・サービスは単独で存在していたが、それが高機能化し、かつ、他の機器やサービスと融合し、より我々の行動の中に入ってきているととらえられようか。
一方、情報化やデジタル化の効果を最大限得るためにはその機器・サービスを活かせるように組織構造を変える必要があると指摘されてきた。DXはそこが少々異なる。情報通信の発達は、産業構造の転換をもたらしつつある。いわゆるゲームチェンジと言われる変化だ。野球からサッカーへの変化は情報化やデジタル化の結果もたらされたもの、インターネットの持つレイヤ構造がもたらしたものであると言える。このゲームチェンジへの対応が必要であり、その上でDXを進めないとDXは上手く機能しないというのが本書の述べているところだ。
まずゲームチェンジがあり、それを促進するのがDXであり、かつ、DXを進めるためにゲームチェンジした会社の組織構造を変革(コーポレートトランスフォーメーション:CX)しなければならない*1。ゲームチェンジによる新しい会社の在り方はDXによってもたらされ、新しい会社の在り方はDXを規定する時代に突入したということだ。
CXとDXは表裏一体であり、DXを議論するならば、その前にCXを議論しなければならない。DXの特徴を最大限活かすのであれば、課題を個別具体ではなく、抽象化し共通項を探し、水平展開するビジネスに仕立てていけるかが肝になる。
本書は、DXをどのようにとらえ、実践していくべきかが多くの事例を引きながら述べられている。著者も書いているように、理解するのが難しいところがあるが、それはわれわれがゲームチェンジ前の思考で考えているからであり、分かりずらいところを理解することが、ゲームチェンジを理解することになり、その上でDXを理解することを助ける。じっくり読むべき1冊と言える。
章立ては以下の通り。あとがきを読むと当初は冨山氏と共著の予定だったらしい。そのこともあり、CXについてまとめられている冨山氏の書籍と一緒に読むのがよいだろう。
- 第1章 デジタル時代の歩き方
- 第2章 抽象化の破壊力ー上がってから下がる
- 第3章 レイヤーがコンピュータと人間の距離を縮める
- 第4章 デジタル化の白地図を描く
- 第5章 本屋にない本を探す
- 第6章 第4次産業革命とは「万能工場」をつくることだ
- 第7章 アーキテクチャを武器にする
- 第8章 政府はサンドイッチのようになる
- 第9章 トランスフォーメーションの時代
- あとがき
- 参考文献
- 解説 本書は、全てのビジネスパーソンへの応援的挑戦状 冨山和彦
なかなか内容のある一冊だ。何回読み直してもいいだろうと思う。一回で理解できると思わない方がいいかもしれない。そして読んでわかるCXとDXを一緒に考えることの重要性。
多くのビジネスパーソンに本書を読んでもらいたい。いろいろな見方がある中で、今後を考える際の一つの大きなヒントをもらえることは間違いないと思う。
成長の実感を伴えない企業社会の変革に向けて一歩を踏み出すそのきっかけを与えてくれる一冊である。
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*1:CXについては以下の書籍を参照。