日本橋濱町Weblog(日々酔亭)

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大杉潤著『定年ひとり起業』:機会を、時間を、行動を大切にしよう(長文)

この3月に定年退職した。何も考えてなかったわけではないし、やりたいことはあるが、具体的に次の一歩をどうするかは具体化できていなかった。それを今自分の中で考えている最中に出会った本だ。

第二の働く場をどう見つけるか・・・自分のやりたいことをやりたいという思い、これまでのノウハウ、スキル、そして人脈を活かすのはもちろんだが、すると自分には働く場として何があるのだろうか・・・いくつかの選択肢はある。大きくは、まずどこかの企業へ再就職、もう一つは自分で起業することだろう。自分の場合、再就職のうち多くの人が選択する再雇用は選択しなかった。そして職安に通って色々な選択肢を含め、検討しているというのが現状。

Starting a solo business after retirement is not a dream

定年ひとり起業は夢ではない

そんな時、大杉さんの著書「定年ひとり起業」がAmazonで目に留まった。自分で起業するのは恐れ多いという思いがあったが、これはこれで一つの可能性として知っていてもいいと思い読んでみた*1

章立ては以下の通り、7章立て、プラス、「はじめに」と「おわりに」に参考文献一覧が付く。ページ数は全部で300ページ弱だ。ちょっと長くなるが、目次を節まで載せておく。ここを読むだけで読んでみた方がいいのではないかと引き寄せられるのではないか。

  • 序章 70歳まで働く時代がやってきた
    • 70歳定年制で増える「新しい働き方」
    • 年金受給を75歳まで繰り下げる選択が可能になった意味
    • 50代は「定年後の新しい働き方」や生涯ライフプランを決める人生の最重要期
    • 定年のない「定年ひとり起業」という最強の選択肢
  • 第1章 「定年ひとり起業」とは?
    • 「定年ひとり起業」の定義
    • 「定年ひとり起業5原則」の深い意味
    • 「定年ひとり起業」に向いている仕事とは?
    • いつから「定年ひとり起業」の準備をするか?
  • 第2章 定年再雇用のワナ
    • 「70歳定年」に対する現役会社員の意識
    • 年金受給開始年齢は70歳、さらに75歳になる理由と時期
    • 70歳まで働く時代の選択肢は「再雇用」でいいのか
  • 第3章 「定年ひとり起業」のマネープラン〜老後資金不安がなくなる「年金戦略」とライフスタイル
    • マネープランは「人生プラン」
    • 老後マネープランのポイントは3つ
    • 大杉潤の年金戦略
    • 老後マネープランの革新は目指す「ライフスタイル」
    • 大杉潤の老後ライフスタイル
    • 大杉潤の「終の棲家」戦略
    • 「付き合う人」は仕事がベース
    • 家系のキャッシュフロー表とバランスシート(B/L)を作成
    • マネープランの仕上げは「資産運用」
  • 第4章 全公開!大杉潤「定年ひとり起業」への道
    • 「定年ひとり起業」というライフスタイル
    • 起業の成否を決める「ミッション」「ビジョン」「戦略」
    • 33年間続けた会社員から57歳で独立企業できた理由とは?
    • 独立企業のきっかけとなった3つの仕事
    • 起業の準備は2年間
    • 家族の大反対を乗り越える切り札になった「妻社長メソッド」
    • 起業が軌道に乗るのは3年目が多い
  • 第5章 「定年ひとり起業」ケーススタディ〜3人の企業ストーリーと成功の秘訣
    • 木村勝さん(60歳)〜大手自動車メーカーからの転身
    • 高橋和子さん(50代)〜専業主婦から片づけのプロへ
    • 高伊茂さん(71歳)〜「話力」を究めて終身現役
  • 第6章 「定年ひとり起業」という選択
    • 「70歳まで働く時代」の会社員にとってベストな選択とは?
    • 人生の勝負は後半にあり
    • 人生の幸福度を決める「思考法」と「習慣」
    • 仕事に対する思考法を決めるのは「自己決定感」
    • 習慣とは「行動の継続力」
    • 長く稼ぎ続けるための基盤は「健康」
  • 第7章 アフター・コロナは「幸福学」で働く〜なぜ長く働き続けると幸せになるのか?
    • 「定年ひとり起業」なら楽しく働ける
    • アフター・コロナ時代は、個人による情報発信を!
    • 働くから健康になる、健康寿命がのびる!

赤字は、気になったところ。最初の「定年ひとり起業」という書名にもなっているこの本の主題を表している言葉・・・これが現実にできるのか?出来たら面白いと思い手に取ったのだった。

2章と3章は、60歳以降の我々の状況を、働くという視点とマネーの視点から解説してくれる。その中では、「再雇用」が引っかかった。これはポジティブな意味ではない。現状の再雇用の中身を見ると、自分にとっても後に続く者にとっても組織にとってもよくないという自分の思いと、ここでの再雇用に潜むネガティブな側面を読むことにより、やはりこの選択肢は取らなくて良かったと思ったのだった。そして大切なマネープランの話。ここを読むことでひとり起業を実現するためのお金に対する考え方が分かるし、いろいろなやり方があることも同時に教えてくれる。自分の苦手な資産運用・・・やはりここはしっかり考えないといけないと改めて気づかせてくれる。お金の面での自分のやるべきことを把握できる。

4章、5章は実際の定年ひとり起業について、著者の大杉さんの実際とその他の例として3名の方のひとり起業が簡潔に述べられている。4章は「ミッション」「ビジョン」「戦略」を常に検討しながら、取り組むと3年後ぐらいに成果が出るのだと・・・本書はまずここから読んでもいいかもしれない。5章はそれの事例紹介だ。

そして6章は、これまでのまとめとも言える章で、実際に定年ひとり企業をする際の考え方が綴られている。勝負は人生の後半であるということ、思考法と習慣が大切ということ、そして健康。ひとり起業に対し、難しさを感じるかもしれないが、実はひとり起業であるが故にハードルはそれほど高くなく、チャレンジしてみるためのポイントが綴られている。

この『定年ひとり起業』は、著者の実体験に基づきながら、かつ、著者が銀行に勤めていたことからその面で信頼でき、ひとり起業についてわかりやすく解説してくれている。迷っている人はぜひ読むといろいろ気づきを与えてくれ、かつ、背中を押してくれるだろう。

自分は定年退職の年に本書を手に取ったが、本当に読んでもらいたい人は50歳前後の人たちだ。自分の場合、30歳代は社会に出て仕事を覚えた10年間、40歳は自分でいろいろ仕事を回せるようになった10年間、50歳は総仕上げと定年後を考える10年間として過ごすのが理想だったなと今振り返っている。実際は50歳でそういうことは全く考えなかったのが後悔だ。

50歳の時に仕事では総仕上げをしつつ、60歳以降の人生をどうするかを考えるのが理想ではないかと思う。50歳の皆さん、ぜひ本書をとって10年後どうするかを考えてほしい。

さて、定年ひとり起業の本は、これでは終わらない。3部作としてあと2冊出版されている。マネー編と生き方編だ。内容は確認していないが、マネー編は本書の第3章を、生き方編は6章、7章あたりをさらに詳しく述べた者ではないかと想像される。早々に読んでみたいと思う。

どちらも興味深い。

60歳は還暦で、一回りしてスタートラインに戻るとして、残りの人生をどう考えるか、具体的に示してくれているので、今、還暦の人も、まだまだ先と思っている50歳前後の人も読むといろいろ得るところがあると思う。おすすめ。

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*1:本音をいえば、まずは再就職するにしろ、最終目的は起業なのだ