ウクライナの問題は、今の世の中の状況の一部に過ぎない・・・ロシアのプー〇〇が行動を起こしたのだが、これはあくまでも今の世の中で進みつつある、ある方向の一端を示しただけなのではないか。
ここ数十年続いてきたグローバル化は止まり、ブロック化に方向転換するのだろうか。振り子が振り切り、方向を変えたと言うことか・・・本書を読んでいてそんなことを考えた。
2030半導体の地政学・・・地政学というアプローチ自体が読者の視点をそういう視点に規定しがちだ。本当はもう少し引いて、多角的な視点から眺めてみたい。その中の1冊として位置付けるのだろう。そうすると、この次に何を読むかというのが結構大切になる。
本書は、以下の通り、8章からなり、それに序章、終章が加わる。結構、読みでのある本だ。内容もただ読み流すだけでなく、ところどころ立ち止まって自分なりに咀嚼しながら読み進めたい。
- 序章 司令塔になったホワイトハウス
- Ⅰ バイデンのシリコン地図
- Ⅱ デカップリングは起きるか
- Ⅲ さまよう台風の目ー台湾争奪戦
- Ⅳ 習近平の百年戦争
- Ⅴ デジタル三国志が始まる
- Ⅵ 日本再起動
- Ⅶ 隠れた主役
- Ⅷ 見えない防衛線
- 終章 2030年への日本の戦略
- あとがき
実は、自分が本書を手に取ったのは、半導体産業の世界がどうもよく理解できなかったので、その理解に資すると考えたからだ。その目的はおおよそのところ達成された・・・と思う。
具体的には、半導体は、ロジック、メモリー、パワー半導体からなる。これは主な分野で、他にもCMOS、車載、アナログ、ファウンドリなどがある。これは完成品での分類で、部品・コンポーネントレベル、材料、製造装置(マスク製造、前工程、後工程)と別れる*1。分業が進んでいて、その各分野に企業がひしめいていて、グローバル市場で競争している。これが半導体産業なのだ・・・というところを理解できただけでかなり頭の中のモヤモヤはすっきりした。新型コロナ感染症により半導体不足が起こったが、誰も状況を把握し、見通しを立てられなかった理由はこの業界の複雑さだったかと今更ながら理解したということだ。
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本書では、昨今の米中対立を軸に、半導体の戦略物資としての位置付けを明らかにし、単なる産業の米では無くなった半導体をめぐる動きをステークホルダごとに記述している。米国、中国の立場や考え、半導体業界の今後を左右する存在となったTSMCと台湾、あるいは他のアジア、欧州の国々、つまり全世界が何らかの形で半導体業界と繋がっており、注目されているということだ。
そこで書かれている内容は、これまでのグローバリゼーションの流れが180度反転しつつある(ように見える)世界情勢を半導体という戦略物資を通して、整理したものである。比較優位や規模の経済、ネットワークの経済など色々な経済特性が絡みあって今の半導体産業の国際的な形を形成してきたと思うが、政治的な要因で政治経済のブロック化が一時的にはできても、長続きするものだろうか、いずれは経済特性の効果で元に戻るのではないか。そうと考えると、本当に明らかにしなければいけないのは、問われなければいけないのは、経済特性が、半導体、半導体産業あるいは今の経済社会から消えつつあるのかどうかなのではないか。あるいはその経済特性を抑えなければいけないほどの制約条件が出てくるとか・・・環境問題はそうなのかとか。
そしてその中で日本の半導体産業はどうなるのか。かつては世界トップであった半導体メモリは復活するのか、半導体産業や日本経済の行く末を視野に入れながら今後のDXを考えることが大切なのではないか。かつてはメモリーで一時代を気づいた日本の半導体産業、DXが本格化するこれからの時代、過去には確かに自分らの居場所はあった日本企業は自分らがいられる場所を見つけられるのであろうか。
本書に回答は書かれていない。