日本橋濱町Weblog(日々酔亭)

Quality Economic Analyses Produces Winning Markets

A.マカフィー、E.ブリニュルフソン「プラットフォームの経済学:機械は人と企業の未来をどう変える?」(日経BP社)

今の情報通信技術がもたらす経済社会への影響を包括的に捉えた本はほとんどない。その中で本書は今我々の身近で起こっている変化の背景にある技術の影響を、機械とプラットフォームとクラウド*1という3つの視点から解説している。

プラットフォームの経済学 機械は人と企業の未来をどう変える?

プラットフォームの経済学 機械は人と企業の未来をどう変える?

 

この分野の研究者あるいは最近の情報通信の進歩とその社会への影響について興味のあるビジネス人には必読の書となるだろう。 

Machine, Platform, Crowd: Harnessing Our Digital Future

Machine, Platform, Crowd: Harnessing Our Digital Future

 

訳者は、村井さんなので信頼できる。原著と読み比べることで読解や翻訳の勉強にもなると思う。 

現在、第1章と終章を読み終えたところだが、前著のザ・セカンド・マシン・エイジで語られていた内容がさらに具体的に書かれている感じと言ったらいいだろうか。分析、研究が進んできたこととが分かり、そこからさらに、そうであるが故に現在の変化の大きさ、深さが分かり、変化はまだこれからであることが書かれている。

読んだ範囲でいくつかの文章を引用しておこう。

まず30代から40代前半のビジネスマンの人が忘れてはいけないこととして・・・

  • テクノロジーはたしかに多くの仕事を奪ってきたが、しかし同時に、多くの仕事を生み出してきた。これからどんな仕事を作るのか、決めるのは私たちだ。そう、問うべきは、テクノロジーが私たちに何をするかではなくて、私たちがテクノロジーを使って何をするか、ということである(P14)。
  • セカンド・マシン・エイジには、何か新しいものを生み出したいという欲求がいっそう価値をもつようになるはずだ(P15)。
  • テクノロジーや政府の政策や経済力が未来をあらかじめ決めてしまうということはない。決めるのは私たちだ(P15)。

本書全体の枠組みとして・・・3つのトレンドを上げている(P37~38)。

  • 第一のトレンドは、・・・、コンピュータの能力が急速に成長・拡大していること
  • 第二のトレンドは、・・・、さまざまな情報を集めたり交換したりする「場」、あるいはモノやサービス展開の土台となる環境、・・・「プラットフォーム」を提供する企業であり、・・・おそるべき競争力を持ち合わせている
  • 第三のトレンドは、・・・、不特定多数の人々すなわち「クラウド」の力が改めて注目されるようになってきたこと

・・・ということで、本書はこの3つのトレンドを枠組みに今世の中で起こっていることを検討している。当然、現在進行形であり、かつ始まったばかりの社会変革なので何かしらの結論が出ているというものではない。

われわれが今後を考える際に検討すべき視点を与えてくれているのが、本書だ。ビジネスマンにとっては今後のビジネスのこと、研究者にとっては研究の方向性やテーマということになろう。

過去の記事で類似のものを探すとこれだな。

mnoguti.hatenablog.com

mnoguti.hatenablog.com

ここに引用されているグロービスの動画が理解を深めてくれる・・・と思う。

ザ・セカンド・マシン・エイジ

ザ・セカンド・マシン・エイジ

 

前著のザ・セカンド・マシン・エイジを読み返すとともに、本書を読み進めていきたいと思う。

さらに以下の書も必読だろう。こちらの翻訳も信頼できる。

情報経済の鉄則 ネットワーク型経済を生き抜くための戦略ガイド (日経BPクラシックス)

情報経済の鉄則 ネットワーク型経済を生き抜くための戦略ガイド (日経BPクラシックス)

 

2018年度は最初から課題図書が山積状態。

*1:ここで言うクラウドは、cloudではなく、crowdの方だ。