近頃急進しているアマゾンの裏側をアルバイトとして潜入した経験を元に書かれたものだ。
潜入ルポ アマゾン・ドット・コムの光と影―躍進するIT企業・階層化する労働現場 横田 増生 情報センター出版局 2005-04 by G-Tools |
ここでまず驚かされるのは、アルバイトの使い方だろう。大量生産のシステムが全盛だった時代、労働からの疎外が非常に問題になった。IT時代の寵児ともいえるアマゾンでの仕事はそれをさらに進んだものとなっている。
正社員でもない単なるアルバイト・・・単純な本のピッキングと安いバイト料、いつ辞めてもどうってことない仕事だ。彼らは当然仕事に生きがいなどは見つけられない。いや見つけようともしないだろう。よって疎外感も感じないだろう。
チャップリンが描いたモダンタイムスでの痛烈な皮肉もここでは通用しない。それを飛び越えてしまっているように思える。IT経済の行く末を暗示するのがアマゾンでの労働形態だとするとあんまりうれしくないと思う。
アルバイト=労働者に視点を置くとそういう感想になるが、僕が関心を持ったのは違う点だ。
出版業界の古い体質、顧客第一主義を忘れ、自分達の都合でしか本を売ってこなかった現実。そこには顧客の無言の不満が鬱積していた。
日本でアマゾンがここまで急進した理由がそこにある。アマゾンは単純に「お客さんに喜んでもらうにはどうしたらいいか」を追求しただけではないか?それをITを駆使してやってのけたということだろう。
自分の組織が何を顧客から求められているか?しっかり分析、把握できているのだろうかと常に自問することは大切なことだ。