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塩野七生:ルネサンスとは何であったのか

ローマ人の物語の著者、塩野さんの3月に出た新刊。

自問自答方式で書きすすめられていく、ルネサンス時代についての塩野さんの考えがまとめられた1冊。

ルネサンス・・・中学や高校の教科書では、「文芸復興」という日本語があてられていたが、本書を読むと、ルネサンスとは文芸にとどまらずあらゆる側面において、ローマ時代などの古代が復興した時代であることがわかる。

4101181314 ルネサンスとは何であったのか (新潮文庫 し 12-31)
塩野 七生
新潮社  2008-03


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塩野さんは、巻末の解説にかえて文芸評論家の三浦雅士さんに対談形式でいろいろ述べてもらっている。その中で塩野さんも発言しているわけだが、その中に、ルネサンスとは何であったのかが簡潔に述べられている(本文にも書かれている)。引用してみると・・・

ルネサンスとは、一言でいえば、今までの自分に疑いを持つということですね。そこから始めて、あらゆることに疑いを持っていく。それまで一千年もの間、信じてきたキリスト教にも疑いを持つ。それでは、キリスト教がなかった時代はどうだったのか、ということで、古代復興になっていったわけです。(328頁)

塩野さんの著作のすべてはこのルネサンスを知ることが出発点となっており、ルネサンスを理解するためにローマ帝国を調べ、ベネチアを調べ、それらを著作としてあらわしていくということの繰り返しだということが述べられている。

また本書の中には、ルネサンス宗教改革運動、反宗教改革運動についても描かているが、その中で繰り返し述べられているのが、「動機よければすべてよし」(ユリウス・カエサルのもとの言葉は「どんなに悪い事例とされていることでも、それがはじめられたそもそものきっかけは立派なものであった」というもの、183頁あたり)として、物事が動いていく歴史・・・今の時代にもいろいろ考えさせられる指摘。

ルネサンスを理解するためには、目を近づけて幾筋もの糸をたどり、それらの絡み具合を遠目から眺め、全体像とその細部を理解しないことにはなかなか難しいことが巻末の対談にも述べられているし、本書を読めばそれが実感できるし、それがあるからこそ塩野さんの著作が面白いのだということに気づかされる。

本書の構成は以下のとおり。

いろいろ参考になる面白い一冊でした。

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