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Quality Economic Analyses Produces Winning Markets

池田信夫:ハイエク-知識社会の自由主義

池田信夫氏の新著、関連サイト(サポートページ)も開設されており、ハイエクについてさらに深く知ることが、考えることができるようになっている。

情報メディアの今後を考えるにあたって、旧来のメディアとしての本と新しいメディアであるウェブのコラボレーションを実験しているのであろうかなどと考えてしまう。

さて本書は以下の章建てとなっている。

  • はじめに
  • 第一章 帝国末期のウィーン
  • 第二章 ハイエクケインズ
  • 第三章 社会主義との戦い
  • 第四章 自律分散の思想
  • 第五章 合理主義への反逆
  • 第六章 自由主義の経済政策
  • 第七章 自生的秩序の進化
  • 第八章 自由な社会のルール
  • 第九章 二十一世紀のハイエク
  • おわりに

456969991X ハイエク 知識社会の自由主義 (PHP新書 543)
池田 信夫
PHP研究所 2008-08-19


by G-Tools

先のサポートページには著者自身の言葉で、「こういう硬い本」との記述があるが、確かに話題はハイエクの思想を通して、情報通信が経済社会により深く浸透しつつある現代および今後の経済を見る目はどうあるべきかを論じているものであり、確かに硬いが、その文体はそういう意味での硬さを感じさせず読みやすい。

主流と考えられている新古典派の市場観がどういうものか、ケインズはどうであったか、それに対してハイエクどうか、そのハイエクも時代とともに変わってきているなどの点が書かれている。そして情報通信の時代はこれまでの製造業を中心とした時代とは明確に違うことが述べられ、そこで必要なフレームはハイエクのような進化論の視点からのものであるとしている。

一般の読者が読んでもハイエクという一経済学者を通してみた経済のこれまでとこれからについて興味深く読めるであろう。さらにミクロ経済学の知識がある人はそれはそれで興味深く読めると思う・・・というより、競争とか、市場均衡とか何なのだろうと考えさせられる、考えさせてくれるのが本書だ。

ハイエクの思想の入門書として、あるいは今後の情報通信の位置づけが、経済社会活動におけるネットワークの介在が、より重要になる経済社会におけるものの見方を考える際の足がかりを得るための問題提起の書として有用と言えるだろう。

本書を読むことによって読者は新たな出発点に立ったということになると思う。

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