日本橋濱町Weblog(日々酔亭)

Quality Economic Analyses Produces Winning Markets

忘れられない言葉

僕のお師匠さんは、犬田充先生だ。東京教育大の朝永ゼミの卒業でありながら、マスコミに就職し、社会調査を得意として、60年代後半は行動科学を日本の社会科学に取り入れようとした先駆的な人である。専門は社会心理学で、いろいろなことに対して知識が深く、議論していてその知識量の豊富さに舌を巻いたものである。今は、大学も引退している身だが、最近はどうされているのであろうか。

僕と犬田先生の出会いは僕のいい加減さが引き合わせたものだった。大学生3年になるとゼミに入らなければならないわけだが、僕は当時、社会学が好きで曽良中先生のゼミが志望だった。ところが、僕の年度は曽良中先生のゼミが開講されず選択できないということになった。その時点で僕は、ゼミに行く気が失せてしまって、どうしようと迷った挙句、友達が犬田先生のゼミに入るというのでくっついていったと言うなんとも無責任な選択行動をとったのだった。

大学院に進むときも、自分で何を勉強したいという明確な目標がないまま、犬田先生にお願いして大学院に入った次第だ。そのとき電気通信、NTTという現在の研究テーマにめぐり合ったわけだが、それもこれも犬田先生がめぐり合わせてくれたものだ。

あるとき犬田先生と話をしていて、自分のふがいなさから「いつまでたってもやることが一杯あって・・・」と先生に愚痴をこぼしたことがあった。そうしたら犬田先生は一言・・・「学問は一升、もとい一生のものだから」と言ってくれたのである。僕はこの言葉を聴いたとき、すごくうれしい気持ちとすごく大変な世界に入ってしまったんだという気持ちの両者が湧き出てくるのを感じたものだった。

それ以来、僕の頭の中にはいつもこの一言がある。時には自分を勇気付ける言葉となり、時には自分の未熟さや不真面目さの言い訳に使われる言葉だが、この言葉に何度救われたことか。

一生なんだよね、一生。この世界に入ったら一生、付き合っていくんだよ。だから自分の研究テーマの選択や分析手法を習得は常に前向きにいることが重要になるんだと今のところは思っている。