並木やぶの鴨南蛮を教えてもらったのはもう30数年前の話だ。「浅草に並木薮という蕎麦屋があって、冬場に食べる鴨南蛮は一度食べてみるといいよ。藪蕎麦だから汁が辛くて、暖かいそばにも蕎麦湯が出てくるよ」って教えてもらった。実際、鴨南蛮を食べたのはそれからはるか後なのだが、20年前ぐらいに食べていたみたいだ。
さて、今回は、最近巷を騒がせていた新型コロナという新しい風邪もほぼおさまる感じになって、海外のお客さんも増えてきているところへお邪魔した。ご覧の通り、雷門はすごい人の数でほぼ新型コロナ前に戻っている感じ。浅草にはやはり賑やかさが似合う。
そんな賑やかな浅草雷門周辺から真っ直ぐ並木通りをくると藪蕎麦がある。並木薮だ。ここは雷門周辺の賑わいとは違って、静かに佇んでいる。こういうコントラストはなんともいえない。早速、引き戸をあけ、店内に入る。中は程よい混み具合。並ばずにお客さんがいい感じで回っていく。僕らは真ん中のテーブルの通路側に陣取り、早速注文・・・ぬる燗、板わさ、そして鴨南。
まずはぬる燗で一息ついて、蕎麦味噌と板わさで、変わらない並木やぶの雰囲気を味わう。ああ、今年も鴨南食べにきたんだなと思う。いい感じでお酒がなくなってきたのを見計らったように、鴨南が出てくる。
この鴨南の姿は20年前から変わらない。大ぶりの切り身、そして真ん中に鴨肉のつくね、さらに美味しさをいっぱい含んだ葱。これだこれこれこれを食わなきゃいけないよってことで早速いただく。
このつくねが美味しい。鴨肉も当然美味しいのだが、やはり並木藪の鴨南といえば、この大ぶりのつくねだろう。
そして鴨南といえば、葱だ。この葱が美味しい。鴨肉と蕎麦つゆの旨みを全部吸っている。これを食べながら酒を飲むのが美味しいんだ。いつも鴨抜きを頼もうかなと迷うが、実行したことはない。鴨抜きで一杯、いつかやってみたい。
そばが出てくるのは最後だ。鴨肉とつくねを食べ、葱を味わい、汁を飲む。そして最後にそばを味わう。暖かいそばが胃のなかに落ちていく・・・満足が最大化される瞬間だ。
正確には20年以上、毎年、11月から3月の間に1度は食べる鴨南蛮。最初に食べた時と変わらない見た目と食べた時の味。これぞ伝統の味というものだろう。今年も存分に堪能させていただきました。
ごちそうさまでした。来年も楽しみにしています。
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