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Quality Economic Analyses Produces Winning Markets

丸山俊一、NHK「欲望の資本主義」取材班「岩井克人『欲望の貨幣論』を語る」:太陽の下、この世には何も新しいものはありません

読書再開後、最初に読み終わった・・・NHKBSの特集番組「欲望の資本主義 特別編 欲望の貨幣論2019」を書籍化したものだ。番組も見たし、岩井先生の「経済学の宇宙」も以前にブログに書いたとおり、読んでいたので比較的内容を理解しやすかったのではないか。

 

電子マネーという新しい技術の可能性、シェアリング・エコノミーの台頭は貨幣経済にどういう影響を与えるのか、データが経済成長のエンジンになると考えられるポスト産業資本主義の時代はどうなるのか?

資本主義の発生から、そこにおける貨幣の貨幣たる所以を解き明かす。岩井先生の書籍で言えば、貨幣論を読むための準備体操に位置づけられるであろうか。深い思索と思考での対決を垣間見れる一冊。

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構成は以下の通り。

  • まえがきに変えて 岩井克人が「欲望の資本主義」に出会う時
  • 第1章 「ビットコイン」は究極の貨幣か
  • 第2章 金融投棄と二つの資本主義論
  • 第3章 貨幣は投機である
  • 第4章 「資本主義」の発見ーアリストテレスと「近代」
  • あとがきにかえて 逆説の貨幣、欲望、資本主義

 

4章立て、ページ数で200ページほどの本だ。岩井先生の「経済学の宇宙」に比べれば内容は優しく、柔らかく書かれており読みやすい。200ページ程度で貨幣とは何か、資本主義の根本的に持つ不安定性、それを支えていると考えられる環境などいろいろ語られている。

そして、今の時代に思いを馳せる時、行き着くのは、「太陽の下、この世には何も新しいものはありません」ということになる。

資本主義の本質は、古代ギリシャの時代から変わらず、21世紀のこれから、データが経済成長のエンジンとなろうとも変わらない。その本質的なメカニズム?、あり方?は変わらない。本質は変わらなくても、その表象面が変われば社会への影響は変わるのではないか、もし変わるならばそれはどのように変わるのか・・・などいろいろ思考は広がる。

岩井先生の著書でいうと、これを読んだら当然、貨幣論を読破したいが、それは少し後に取っておこう。

貨幣論 (ちくま学芸文庫)

貨幣論 (ちくま学芸文庫)

  • 作者:岩井 克人
  • 発売日: 1998/03/10
  • メディア: 文庫
 

資本主義について考えたければ、以下の4冊が面白そうだ。最初の3冊は今回の書籍との姉妹編に位置づけられる。

 

この3冊は、今回の欲望の貨幣論と同様、番組を書籍化したもので、一流の経済学者がいろいろ登場してくる。そして語り口も平易なのでいろいろ考えを巡らせる気っっかけを作ってくれるのではないか。

欲望の資本主義

欲望の資本主義

 
欲望の資本主義2

欲望の資本主義2

 

そして最後の1冊は、「資本主義の教養学 公開講演会」の選りすぐりのものらしいので、これも読者の思考を刺激してくれるだろう。

欲望の資本主義を欲望の読書欲で読破してみてはいかがであろうか。

 

今年3冊目読了。