古くは情報化社会とか情報社会とか情報経済とか、最近は経済成長の切り札として、データ駆動社会とか、AI・ビッグデータ・IoT、データ経済とか、AI経済とか言われている。
その情報やデータ、AI、ビッグデータやIoTがどのように経済成長に寄与するのかを理論的に考える際の教科書はいろいろある。以下の3冊はその中でも最初に押さえておきたい。
最初はこちら。内生的経済成長論で有名なポール・ルーマーを中心にこれまでの知識と経済成長の関係をまとめたもの*1。
ジャーナリストがまとめたものなので、初心者でも読み込めるのではないかと思う。これを読むと2000年代初頭までの知識経済研究の系譜が分かる。先日読んだ、岩井先生の本に書いてあった産業資本が経済成長の源泉だった時代にも知識は成長に寄与していたことになるかと思う。規模の経済をもたらした一つが知識であり、そのウエイトが時代とともに大きくなっているのか・・・そのあたりを考えながら読みたい。
では知識がどのように経済成長に寄与するのか・・・専門書できちっと理解したい人は、その入門書がこちら。チャールズ・ジョーンズの経済成長入門*2だ。こちらで基本をしっかり理解したい*3。
歴史的背景と理論の基礎をマスターしたらあとは、そこに紹介されている論文を個々にあたり、最新ではどこまで議論が進んでいるのかを確認していくといつの間にか自分の知識も最先端の議論に行きつくだろう。
3冊目がこちら。エルハナン・ヘルプマンの経済成長のミステリー*4。 これは必ずしも知識経済について書かれているわけではないが、先のポール・ローマーと経済成長の謎の序文の注で「最も啓発的だ」と紹介されている。
経済成長率がこれほど高まったのは、産業革命以降の産業資本が経済成長に寄与するようになってからだろう。技術革新の進展が、エネルギー革命を伴いながら、産業資本を機械化、電子化、デジタル化*5し、経済成長率を高め、豊かな社会を実現したのだが、それを知識の側面から分析するのが知識の経済学だと思う。
最近、言われるようになったデータ駆動社会等にその考えがそのまま通用するのか、あるいは知識とデータはそもそも違うものであり、知識の経済学では説明できない新たな課題が出てきているのか。逆に、知識の経済学のこれまでの知見で今の経済政策、成長戦略を評価したらどのように評価されるであろうか、そのあたりが自分が思いつく現状の研究テーマだ。
まずは1冊ずつ読んでいって理解を深め行きたい。
昨年の情報通信白書の読書会の時に考えたことをより具体的に考えるということになろうかと思う。
*1:原著はこちら。
Knowledge And The Wealth Of Nations: A Story Of Economic Discovery
- 作者:David Warsh
- 出版社/メーカー: W W Norton & Co Inc
- 発売日: 2006/05/22
- メディア: ハードカバー
*2:原著はこちら。第2版が出ている。
Introduction to Economic Growth
- 作者:Charles I Jones
- 出版社/メーカー: W. W. Norton & Company
- 発売日: 2013/03/01
- メディア: ペーパーバック
*3:入門といえば同じ著者によるこちらの方がいいかも知れない。
*4:こちらの原書はこれ。表示は、Eonomic and Growthとなっているけど、正しくは、Economic Growthです。
The Mystery of Economic and Growth
- 作者:Elhanan Helpman
- 出版社/メーカー: Academic Foundation
- 発売日: 2006/03/15
- メディア: ハードカバー
*5:今は、クラウドと仮想化がキーワードだろう。この2つの技術は今までのデジタル化の単なる延長線上として考えていいのか?