メディア業界の近未来を予測したもの。
河内氏は元毎日新聞社のジャーナリストで、常務取締役を退任後、メディア産業の将来についていろいろ考えてきたようだ。米国コロンビア大学の教授や業界関係者などとの議論を通して自分の考えを磨いてきたようすも書かれている。
内容は面白い。大きな流れになる可能性のひとつを示しているといえるであろう。それはメディア業界側からの批判的な考察であるともいえる。目次は以下のとおり。
- プロローグ
- 第一章 アメリカ新聞界のカタストロフ
- 第二章 化石のような日本メディア界
- 第三章 メディア・コングロマリットの光と影
- 第四章 ”次に来る”メディア産業図
- エピローグ
次に来るメディアは何か (ちくま新書) 筑摩書房 2010-01-07 by G-Tools |
最初に米国の新聞業界の今が整理され、その状況がいかに末期的かが書かれている。確かに急変してきているという様子が伝わる。それに対して日本はどうか。第二章で述べられている部分だ。第二章の標題の「化石」という言葉がすべてを表している。未来の状況を見通したときの現状の日本のメディア業界の硬直的な状況。ここで話はまた米国に戻り、今後のメディア業界の形となりうるメディアコングロマリットの形成過程が紹介される。この第三章だけをさらに細かく見ても面白いだろうと思った。そして結論、近未来の日本のメディア産業図。
本書の構成は非常にシンプルで、起承転結の形を取っている。そして結論部分を読めば、納得するというより、そうにはならないストーリーもかけそうだなということを考えさせてくれる。未来を予測するのはそういうものだが、読み手に違う道を探そうとさせるように意図してか否かは別として思考をめぐらさせて終わるというのはなかなかな終わり方だと思った。
情報通信業界の歴史や現状をある程度知っている人は頭の再整理として、そしていろいろ考えるきっかけを与えてくれる本として読めるであろう。情報通信業界、特に新聞や放送業界について知識がない人も十分読めて、想像を掻き立ててくれると思う。