日本橋濱町Weblog(日々酔亭)

Quality Economic Analyses Produces Winning Markets

長年染み付いた発想からの脱却

今、ITの世界は大きくその姿を変えつつある。電話からブロードバンドへ。

利用者も通信会社も電話の時代の常識はブロードバンドでは必ずしも通用しなくなってきている。

一番大きな変化はその収益構造が大きく変わることだ。電話の時代は電話サービスのみから収入を得ていた(専用線サービスとかあったが、収入規模が違うので無視している)。これがブロードバンドの時代にはどうなるか?

これはもう多くの人が認識しているように、未分離だったレイヤが顕在化し、その結果、情報通信関連支出をこのレイヤ間で配分分配することになった。今まではどうであったかというと、レイヤが未分離であったから、古くは公社として、85年以降はNTTとして電話サービスを提供し、電話料金の基本料と通話料ですべての収入を得ていた訳だ。

現在は、レイヤの最下層の設備の部分では、NTTの地域会社がほぼ独占で設備を提供している状況が続いている。一方、それから徐々にレイヤをあげていくと、KDDIソフトバンクBBあるいはイー・アクセスなどのNTTの設備を利用して通信サービスを提供する事業者。その上に行くとニフティなどのISP、さらにASPやらのプラットフォーム事業者が参入している。そして最上位のコンテンツ、ECのレイヤでは無数といっていいほどの企業が参入している。

電電公社1社の時代から電話の競争の時代を過ぎ、ブロードバンドが主力サービスとなりつつある現在、そこでのプレイヤー数は劇的に多くなっているのである。

一方、世帯にしろ企業にしろ、ある一定期間の消費支出(企業ならば要素支出)の総額は短期間でそんなに大きく変わることはない。内訳は変わることもあって、最近では携帯電話の普及およびユニクロの低価格戦略で、家計支出は衣料費のウエイトが下がり、通信費のウエイトが大幅に上がった。情報通信関連支出とすればそのウエイトはさらにあがるであろうが、その金額にはおのずと上限がある。

この限りがあるパイを上記の無数ともいえる参入企業との間で分け合うわけだから、インフラ部分の通信料金が下がるのも当然といえば当然だろう。その値下がりで節約された部分が他のレイヤのプレイヤーの収入になるということだ。このような産業構造の転換を考えれば、軌跡といわれる日本のブロードバンドサービスの高度化・低廉化のうち低廉化は、産業構造からしてみたら必然であったとも考えられる。

よって我々としては、これまでは電話サービスのみを見ていれば良かったわけだが、これまでと同じ存在価値を研究所として持ち続けるためには、レイヤ全体に渡って調査研究、分析できる体制を整えなければならない。それがグループ会社の一員として最低限のノルマであり、存在理由であると思う。

産業構造が劇的に変化していることを明確に認識することは大切なことだが、電話の発想が染み付いている人間にはここのところを理解するのは難しいかも知れない。