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Quality Economic Analyses Produces Winning Markets

障害者の経済学

中島隆信氏の3冊目の著書である。

これまでの「大相撲の経済学」「お寺の経済学」に続いて、本書は障害者という我々があまり知らない世界について分かりやすく解説し、障害者の日々の生活を取り巻く問題群を明らかにしている。

しかし、ここで明らかにされる障害者をめぐる問題群は、日本社会一般が抱える問題であるという最終章の指摘は、確かにと頷くとともに、社会が転換点にあることをいやがうえにも考えさせられる。

4492313591 障害者の経済学
中島 隆信
東洋経済新報社 2006-02-10

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本書を読んでまず思うのは、障害者をめぐる利害関係が複雑なことだ。障害者に対する福祉政策、社会政策だと、当然、障害者のためのもののように漠然と理解しているが、そこを仔細に見ると、必ずしもそうなっていない、ないしそうなっていなかった現実があることが分かる。

そこの襷の掛け違いを単純に修正するのではなく、新しい時代の状況にあわせてかけなおす必要とそれをするためにはまず最初に障害者と健常者のコミュニケーションが重要であることがさまざまな角度から述べられている。

本書の内容は、障害者について考えさせるのと同時に人口減少社会に突入した日本の今後の社会システムのあり方を考えることにもつながり、非常に重要なテーマであることが読者に伝わってくる。

またこれからは多様性が重要だとか、多様性のある社会とかよく言われるが、それは具体的にどういう社会なのか・・・本書はそれについての視点を与えてくれる。

本書が問うているのは、障害者が特別な存在ではなく、われわれの社会を構成している重要なメンバーであることと、それを排除してきた今までの社会システムの発想自体の問題点、またそのような問題点は実は日本社会、特に家族や地域社会という生活の基本的単位を蝕んでいるものと同根のものであるということ、そして障害者も含めて社会全体といてそれらの問題群に対して今後どのように解決していく必要があるのかという点である。

前著どおり本書も語り口はやさしく、内容は分かりやすい。経済学とは無縁の人に是非読んでもらいたい一冊だ。

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