日本橋濱町Weblog(日々酔亭)

Quality Economic Analyses Produces Winning Markets

固定電話と携帯電話の代替性

おお、また質問が!・・・って、回答が遅いって?お許しください。

1.分析枠組み

依田先生の採用されている方法は、コンジョイント分析とロジットモデルですが、扱っている財はADSL,FTTH,CATVと同時利用のありえないものです。この分析方法を、携帯電話と固定電話という同時利用がほとんどだと思われる財にあてはめてもいいのでしょうか。

固定と携帯も同時加入はあっても実際の利用場面での同時利用はあまりないのではないのでは?

この分析では、まず携帯電話と固定電話が同時利用されることが常態かというところの確認から入ることになると思います。同時利用=両サービスの加入ということに解釈すれば、ほとんどになるでしょう。そうすると、次の段階として、その同時利用の内容を吟味する必要があると思います。すなわち、携帯電話と固定電話の利用は、

・代替的な関係か
・補完的な関係か
・独立していて無関係か

を確認するということです。携帯と固定がこの3つの関係のどの傾向が強いのかを検証する調査をする必要があります。



2.分析手法

分析手法には、依田先生の論文にもあるとおり、顕示選好(Revealed preference)と表明選考(Stated preference)の2種類があります。この2種類の違いは、顕示選好は実際の選択結果に基づくデータを利用しているのに対し、表明選好は利用者の意向に基づく回答を利用します。今回の場合、現状の競争状況を評価するわけですから、顕示選好で分析されるべきだと思います。しかし、依田先生の指摘にもあるとおり、顕示選好にもいくつか問題があります(これは別途確認する必要があります)。コンジョイント分析は当然、複数の属性の組み合わせの中から望ましい一つのサービスを選択させるわけですから、表明選好になりますね。

よってわれわれも分析シチュエーションによっては顕示選好と表明選考の両方をやる方向で検討するのが良いのではないかと思います。例えば、固定電話と携帯電話のベストミックスの使い方を消費者はどのように考えているかを明らかにすることは重要な視点になると思います。表明選好(コンジョイント)を利用すれば、現状ではさまざまな制度やこれまでの慣習によって実現されていない状況だけれど、消費者がどのような関係(上記の3つの関係です)を望んでいるのか明らかにできると思います。それと顕示選好モデルで分析すれば現実との乖離が明らかになり、競争評価の一つの論点の提出になるでしょう。



3.インターネットという属性をどのように扱うか?

まず分析対象をどこに絞るかによると思います。現在考えられるのは、

・インターネットアクセス市場での関係を明らかにする

・通話市場での関係を明らかにする

以上の2つの分析対象があると思います。このとき問題になるのは二つ目の場合でしょうか。通話市場での競争にインターネットアクセスは影響を与えているか?というところを明らかにする必要があるということでしょうか。逆に一つ目の場合は、通話サービスはインターネットアクセス市場の固定と携帯の間に影響を与えているか?ということも同時に分析されるべきかもしれないです。


4.加入をパターン化する必要があるか?

今回はこのやり方はとらない方が賢明でしょう。理由はWeb調査で情報収集するので、「固定電話なし」というサンプルがいないから不完全な分析になる恐れがあります。

携帯と固定の関係を通話とインターネットでそれぞれ明らかにするのにどのような需要モデルが良いかを考える必要があります。

とりあえず以上です。