日本橋濱町Weblog(日々酔亭)

Quality Economic Analyses Produces Winning Markets

光ファイバのマス市場での普及:ビジネス市場の重要性

今、日本のインターネット市場では究極のブロードバンド(BB)サービスと言ってもいい光ファイバが本格的に普及してきている。これは世界でトップといっても過言ではない。

BBサービスは光ファイバ、ADSL、ケーブル・インターネットが現在の主要なサービス(その他に無線系のサービス:固定無線やホットスポットがあるが、現状、日本ではあまり普及していない)だが、その中でここ数ヶ月はどうも光ファイバが月間純増数でトップらしい。

ところが、この光ファイバ・・・、利用目的はADSLとあまり変わらない。そう、絶対に光ファイバでなければいけないという利用方法(キラー・アプリケーション)がないのだ。では今なぜ光ファイバが普及しつつあるのかというと、価格がほぼADSLやケーブル・インターネットと変わらない水準まで低下してきたからという理由がもっとも大きい。

これは携帯電話サービスとは大きく異なる。

携帯電話が爆発的に普及した背景には、もちろんそれ自体の値下がりがあったことは事実だが、その値下がり後でさえ、固定電話の料金に比べて携帯電話のそれはかなり高い水準になっている。それなのに消費者は携帯電話サービスを選択した。つまり消費者は音声市場では携帯電話サービスにより高い利用価値を認めたことになる。

光ファイバはそのような市場構造になっていないために、料金水準をADSLやケーブルインターネット並に下げざるを得なかった。

NTTや電力系事業者、KDDI、Usen等にとって光ファイバもインターネット・アクセス市場の中で、音声市場の携帯電話のようになることが望ましかったのではないかと思う。しかしそうはならなかった。理由はキラーアプリケーションがいまだに見つからなかったからである。利用者に高い料金を払ってでも使いたいと思わせるほどの利用方法を示せなかったことが大きい。

なぜ見つからないのか?

原因の一つはサービス提供側のマーケットの見方にあるのではないか・・・と最近思い始めてきた。

通信サービスは今まで基本的にビジネス・ユーザとマス・ユーザとに分けて分析されてきた。

だから今のサービス品目の並びもすべてビジネス用、マス用に分かれている。商品を売るときはこのセグメンテーションで売ることで問題は無いように思える・・・が、この営業用のマーケットセグメントをサービス開発の場面で使うにはどうであろうか。しかも光ファイバのように今成長軌道に乗りつつあるという揺籃期を脱したか脱しないかというサービス(しかもキラーアプリケーションはまだ見つかっていない!サービス)にこのセグメントを当てはめたらどうであろうか。

マス・ユーザに対して「これは!」と思うサービスを見つけるために、マス市場をいろいろ調べる・・・ビジネス・ユーザの場合はビジネス市場を調べる・・・本当にそのような市場の見方でよいのだろうか。日本において通信サービスが発展、普及してきた歴史を考えたとき、そのように最初からマーケットをマスとビジネスにセグメント化してサービス開発を行うことは適切であろうか?

例えば電話の普及を見てみると・・・電話は当初職場に普及した。次に職場から自宅への連絡の必要性から自宅への普及が始まる。ある程度各世帯に広がり始めると、家族間の利用が始まる・・・という具合に最初はビジネス市場から始まり、次の段階でマス市場に普及してくるという特徴があった。そのときは料金が下がる代わりに日本人の所得が上昇した。

それは携帯電話でも同様であろう。携帯電話はいきなりマス市場で爆発的に普及したと思われている。事実、今、マス市場は飽和状態に近づいており、次の市場として法人市場の開拓が携帯電話事業者のターゲットとなっている。しかし、歴史を少し振り返れば明らかなように、携帯電話は自動車電話といわれ、ビジネス利用、しかも経営者層における利用が長かったサービスであった。それが技術革新と競争により料金が劇的に下がり、端末の性能が向上して今日の普及につながった。

このように考えると、光ファイバ=高速大容量通信のキラーアプリケーションのヒントはマス市場よりもビジネス市場に隠れていると考えても、そんなに不自然ではないのではないか。

仮にそうならば、現在のサービス開発体制がそのような芽を摘み取れるような体制になっているだろうか?

マス市場向けサービス開発というとマス・ユーザだけしか見ていない事業者が多いのではないかと思う。そうではなくマス市場における光ファイバ・サービスのキラー・アプリケーションの芽を、ビジネス市場におけるIP−VPNやインターネットVPNの利用の中を探してみるのも、強ち無駄ではないと思う。ビジネス市場において高速大容量通信の何に利便性を感じ、それが広がっているのか?

その部分を明らかにすることがマス市場のサービス開発の第一で、その次にそれをマス市場に普及させるために、価格をマス市場が受け入れる水準まで下げることやサービススペックを微調整することが必要になり、そのためにマス市場というセグメントに注目し、詳細な分析が必要となるという順番ではないかと思う。

これはよくマーケティングの世界で使われるセグメントで、

革新者
初期採用者
前期多数採用者
後期多数採用者

というのがあるが、これをビジネス市場とマス市場を一体としてみる必要があるのではないかという提案に他ならない・・・と思う(ちょっと自信ないです)。

いかがなものでしょうか。