日本橋濱町Weblog(日々酔亭)

Quality Economic Analyses Produces Winning Markets

鳥越規央著『統計学が見つけた野球の真理ー最先端のセイバーメトリクスが明らかにしたもの』:今までのセオリーが通じない世界の背景が分かる一冊

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夏の高校野球、久しぶりに母校の応援に行った。その時の記事が以下のブログ。40年以上前の自分が高校生だった頃の視点でいろいろ思いを書き綴ってある。それが当時の当たり前かどうかは分からないが、自分は当時のままの頭で考えていた。

mnoguti.hatenablog.com

我々の野球は打順の考え方では以下の通り。

  • 1番:俊足巧打
  • 2番:打率は低くてもバント等小細工ができる
  • 3番:本塁打はなくてもチャンスに強く長打もある
  • 4番:少々打率は低くてもここぞという時の勝負強さと長打力
  • 5番:4番が残した走者を帰すしぶとさを持つ
  • 6番:意外とチャンスが回ってくるのでチャンスに強いバッター
  • 7番:打力の弱い守備の人
  • 8番:同上
  • 9番:1番へのつながりを考えると一工夫考えたい打順

こういう打順を組むのは、1番が出塁して、2番は2塁に送って、3番、4番で帰すということが基本に考えられていたわけだが、セイバーメトリクスはそれは間違っているとデータで否定してしまった。その結果を体現したのが大谷の2番打者ということだ。

昨今のプロ野球の世界、自分の常識を疑うようなことが多い・・・特に大リーグ。端的なのは、大谷翔平という選手の存在。二刀流はいいとして、大谷のあのバッティングフォーム・・・アッパースイングの謎、長距離打者なのに2番を打つ謎、20世紀の野球を知っているものには最近の野球は謎だらけだ。

Ohtani hits second and goes for home runs in a world revealed by Sabermetrics.

大谷が2番を打ち、ホームランを狙うのがセイバーメトリクスが明らかにした世界

本書には、その謎を解く鍵がセイバーメトリクスだということが具体的に書いてある。色々な指標の解説があり、データ・マニアにはたまらない1冊だが、一つ一つの指標を作り出すために使うデータが細かくて、データマニアでない一般の読者にはそこが読みづらさを感じさせる。

とりあえずどうなの?ってところを知りたければ、指標についての細かいところは端折って、全体のストーリを追うことで、今の野球がどういう方向に向かおうとしているのかが分かる。多分、シンプルに、童心に帰れって感じだと思う・・・試合に勝つためには「バッターはでっかいやつを打って、ピッチャーは三振にとれ!」というシンプルな形だ。野球とはそういうスポーツだということをセイバーメトリクスは明らかにしてしまった。

内容は以下の通り。セイバーメトリクスの歴史から、具体的な中身を投手、打者、球場、守備、走塁等の視点で、各プレイを評価する指標とその指標の実際の値を引用して解説している。だからこれを読めばセイバーメトリクスが何かが分かるし、実際にどういう影響を与えたか、与えつつあるかが分かる。

  • 序章 セイバーメトリクスの歴史ー草創期から「革命」まで
  • 第1章 セイバーメトリクスの原理ーどのように「数値化」するか
  • 第2章 投手の指標ーどこまでが「責任」なのか
  • 第3章 打撃の指標ー「得点創出能力」をいかに表すか
  • 第4章 セイバーメトリクスの可視化ー「下剋上」の原動力とは
  • 第5章 パークファクターー野球は「場所」によって変わる
  • 第6章 守備の指標ー「未開の領域」に光を当てる
  • 第7章 走塁の指標ー「足」どれだけ稼げるのか
  • 第8章 総合指標ー「二刀流」を評価する
  • 第9章 セイバーメトリクスの革命ーテクノロジーが明かす真実
  • 第10章 プロ野球の未解決問題ーこれからのテーマ

今の野球は、自分たちが見てきた王、長嶋時代からイチローまでの野球とは全く違うものになってしまった。ある意味、原点に戻ったのかもしれない。それはセイバーメトリクスという新しい技術が、今まで経験から言われてきた野球の蘊蓄、セオリーが多くは違っていることを明らかにしてしまったからだ。そしてゲームの構造が改めて明らかにされ、単純に点を多くとって、それを守った方が勝つという原点に戻っていると言える。これがずーっと続くとは思いたくないが、今はまだこのシンプルな構造の中をより詳細に分析し、より的確な指標を開発する段階であることが本書の後半には書かれている。

それが一段落した後にどのような野球に対する考え方が出てくるのかはその時にならないと分からないが、データで分かったシンプルなゲームの構造を前提にして、新しい蘊蓄やセオリーが出てくる時代になると期待したい。

セイバーメトリクスについては、以下の本がある。具体的にデータを使って分析することを目指して次は何を読むか・・・。

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