新宿に出ると帰りは3丁目の駅から新宿線で浜町へ帰ることが多い。そんな時、三丁目の喧騒は酔った男を誘うんだ。歌舞伎町や思い出横丁とは違う賑わいがある。ゴールデン街が近いからかもしれない。演芸場があったりいろいろな要素がごった煮のように混ざっている。そんな三丁目の片隅に池林房はある。
気づくと、池林房を探している自分がいる。まだ飲むのか?と自問自答しながら三丁目の街を彷徨い、結局、階段を降りて、店の中に吸い込まれていく。池林房は、屋台のようなテーブルで飲むのがいいのかもしれないが、一人客だと大概はカウンターに案内される。それはそれで自分はいい。カウンターからだと調理の様子が見て取れるから、それを見ながら最後の杯を傾けるのは楽しいものだ。
この時は、メニューを見ていて、ホッピーの文字が目に入ったので早速注文。それを飲みながら頼んだのは、鮪の刺身と冷奴だった。最後の〆なのにまだ2品も頼むのかって感じだけど、やはり飲み始めると何か食べずにはいられない。
美味しい鮪をつまみながら、調理の様子を観察する。みんな手際がいい。無駄がない動き。次々と入る注文を手際よく捌いていく。焼き物、揚げ物、サラダなどなど。できた料理からカウンターに出されると、スタッフがテキパキとテーブルのお客さんのところに運んでいく。
この忙しい中、手際よく捌いていくところを見ているだけでも酒の肴になる。そして冷奴。木綿豆腐でいい感じで冷えている。木綿豆腐なので存在感がある。すでにお腹はほぼいっぱいのはずだが、それでも食べられる。食べていく、胃のなかに落ちていく。
ホッピーの味と鮪や冷奴の味と調理場の無駄のない動きとどれも美味しい。酔いがさらに気持ちよく体に回っていく。今日の〆を池林房にして良かったと思い、最後のホッピーを飲み干すとゆっくり席を立ってお勘定に向かうのだった。
美味しいひととき、ありがとうございました。
今度はゆっくり早い時間に伺いたいと思う。