日本橋濱町Weblog(日々酔亭)

Quality Economic Analyses Produces Winning Markets

NTT R&Dフォーラムに行ってきた:5GとIOWNをめぐるが主役になるのは15年後か?!

以前は年明けの2月ごろに実施されていたNTT R&Dフォーラム、最近は秋に開催されるようになった。

 

開催場所はこれまでと同じ、三鷹にある武蔵野通研だ。最近ご無沙汰だったのでしばらくぶりに行ってきた。

labevent.ecl.ntt.co.jp行こうと思った背景には、久しぶりにNTTが長期の技術戦略とも言える構想・・・IOWN構想を発表したからだ。さらに言えば、5Gの商用化が来年に迫り、すでにプレサービスも開始されていて、それに関してどのような展示があるのかということにも関心があった。

f:id:mnoguti:20191119110637j:plain

 

IOWNはそもそもどのような構想なのか、5Gは来年の商用化だが、どのようなサービスが出てくるのか、将来を考える上でインパクトのあるIOWNと5Gを同時にチャックできるまたとない機会だった。

IOWN構想 ―インターネットの先へ

IOWN構想 ―インターネットの先へ

 

開催は、11月14日、15日の二日間がNTTグループ内覧会で、そこに参加した。実際に参加してからかなり時間が過ぎていることもあり、印象に残っていることだけ書き残しておこう。IOWN構想の全体やその考え方は上記の書籍を参考にしてほしい。

 

IOWN構想には大きく3つの柱がある。一つは、オールフォトニクス・ネットワーク、二つが、デジタルツインコンピューティング、そして、三つは、コグニティブ・ファウンデーションの3つだ。

f:id:mnoguti:20191119110651j:plain

オールフォトニクス・ネットワークは、発信から着信まですべて光技術で伝送しようというもの。現在は光ファイバを使っているものの、電気信号へ変換する部分が残っているがそこも含めて光技術で伝送できるようになる。

デジタルツインコンピューティングは、現実空間をサイバー空間に再現しようというもの。イメージとしては、映画のマトリックス攻殻機動隊、あるいは数年前に話題になったセカンドライフが近いと思う。

 

そしてコグニティブ・ファウンデーションは、将来の高度化、多様化したネットワーク技術を自分の用途に合わせて自在にサービスを作り上げる仕組みとでもいえばいいだろうか。

詳細は下記の書籍を読んでほしい。

IOWN構想―インターネットの先へ

IOWN構想―インターネットの先へ

 

武蔵野通研の会場に所狭しといろいろな技術が展示してあり、その一つ一つに説明員がついて、現状と将来について説明してくれる。一日かけてじっくり見、そして話を聞きたいところだが、実際はそうは許してくれないというところだ。

f:id:mnoguti:20191119110527j:plain

そんな中、自分の印象に残っている技術の一つはオールフォトニクスネットワーク。IOWN構想の3つの柱の一つだ。8Kを無圧縮で送れるという高速大容量のネットワークで、そのデモを見た。8K画像のすばらしさ、これを無圧縮で送れるというネットワークの性能・・・いろいろ説明を受けたがただただすごいという印象だった。

f:id:mnoguti:20191119110514j:plain

 

もう一つ、5Gについては、着々とサービス開始に向けて進んでいるという印象の一方、5Gを特徴づける3つの技術、高速大容量、多数同時接続、低遅延の内、標準化が済んでいるものは、高速大容量のみで、他の多数同時接続と低遅延は、標準化にまだ1年程度かかるのではないかとのことだった。

5Gのサービスの見通しについては、まず高速大容量は、現状、我々が使っているLTEサービスでその方向性は見えているような気がする。動画や高画質を前提としたサービスやアプリケーションがさらに増えるのではないか。多数同時接続と低遅延については、モバイルサービスで本格的に法人市場がターゲットになると期待される。特にローカル5Gの法人市場としての可能性は大きいものがあると考えられる。それを左右する多数同時接続と低遅延の標準化動向は気になるところだ。

f:id:mnoguti:20191119110347j:plain

そのような中でドコモのマイネットワーク構想は興味をひかれた。携帯電話は、これまで3G、LTEとネットワークの高速大容量化とともに、あらゆるサービスやコンテンツを端末の中に取り込み、All in Oneの端末を志向してきたが、マイネットワーク構想は、その逆、One in Allの方向を示すものだった。

 

現状では、スマーフォンを中心にウェアラブル端末などを接続し、各種サービスを利用するように描かれていたが、これが進めば、スマートフォンは今の形である必要はなく、今後、どのように端末が変化していくのか、そこに5Gのマス市場のビジネスの商機が出てくるという匂いが立ち上っていた。

f:id:mnoguti:20191119110558j:plain

最新技術に触れた後は、武蔵野通研に併設されているNTT技術史料館を見学してきた。こちらは、通信技術の歴史が端末、ネットワーク、交換機などのネットワーク要素ごとに展示され、過去を振り返りながら未来を構想できるようになっている。

f:id:mnoguti:20191119110616j:plain

通信技術の開発史をここでじっくり見るのも、将来を考える際の刺激をもらうということで貴重な時間であった。

是非、一度、訪れてみることをお勧めします。

そして技術開発の歴史を振り返りながら世の中への普及を考えると、商用化された後、すぐに普及し、普通に使われるようになることはほぼなく、ある程度、イノベーターやアーリーアダプターに揉まれて、機器やサービスが洗練しかつ値段がこなれてきてやっと世の中に行き渡るということに気づく。

つまり5Gは2020年に商用化されるけど、それを世の中で普通に使い、5Gならではのサービスや機器が使われるようになるのはやはり5年程度は最低かかるだろうと。さらに、今回は多数同時接続と低遅延という2つの特長が加わるのでこれが普通に使われるのはさらに先になるかもしれない。

一方、オールフォトニクスネットワークは、10年後の商用化を目指すということだったので、実際、多くのユーザが利用したり、恩恵を受けるようになるのは15年後ぐらいかなと感じたのでした。