前回行かせてもらったのは8月の末でまだ暑い時分だった。この時は、9月の半ば、しかも天気が悪く少し寒いぐらいの陽気だった・・・ということは燗酒が美味い時期になってきたってことだ。
雨の中、店前につき、傘の水を落として店内をのぞき込むと燗付け器の前にはご主人ではなく、若い方が構えていた。二代目の方かななどと思いながら、前回と同じように引き戸をゆっくりと開ける。
一人であることを告げると、お好きな席へどうぞということで、この前と同じように入口に近い席に座らせてもらった。ほどなく例の小さいお盆の小宇宙がセッティングされる。
そして1本目・・・いつものようにぬる燗でお願いする。ずらっと一升瓶が並んだ棚から指定の1本を取り、漏斗を使ってお銚子にお酒を注ぐ。それを燗付け器に入れてしばし、ゆっくり取り出して、濡れたお銚子をぬぐい、すぐに出してくれるかと思ったら、しばらくそこで寝かせるような感じ。
それで頃合いを見計らって、小宇宙の世界に供して呉れれる。違うときはわきの下あたりにお銚子を挟み込んで燗の具合を確かめるようにしばし、それからおもむろに供してくれたり、なぜそういう行動をとるのかはいつか聞いてみようと思うが、いろいろこだわりがあるような様子。
燗のつけ方にもいろいろあるものだと感心しながら、ゆっくりと小さめの猪口を口に運ぶ。
箸袋の裏にもなにやら粋な文章が書いてあるではないか。
さて本日の1品目のつまみは、おでん。熱々のおでんだ。焼き豆腐、大根、さつま揚げだったか、そして昆布。どれもよく味が染み通っていておいしい。
豆腐が意外とおいしかった。大根は王道の味。熱々で出てくるので、口の中でホコホコしながら食べる。そこへお酒を少し流し込む。これがおいしい。
2品目に頼んだのが、長崎の鯵。ふくべさんのつまみの中ではおそらくもっともおすすめされる一品。それならばと頼んでみたが、身離れがよく、美味しい味だった。
こんな感じね。新鮮な味は焼き立てだと背骨をさっとはがせる。その背骨についている身をしゃぶりながら一口飲んで、さらに身をつまみながら一口飲むって感じ。海に使いところで育った自分にとっては最高のつまみ。相模湾の鯵ならなおよかったけど、それはわがままというもの。
その間もお酒は減っていく。2本目は確か菊正宗のたる酒を常温でいただいた。他のお客さに答えていたのだが、たる酒はぬる燗がおすすめだそうだ。これは次回試してみよう。
そしてつまみは3品目のマグロブツへ。マグロのブツもふくべさんのおすすめのつまみ。これは、想像以上においしかった。酒が進むマグロの美味さっていってどこまで分かってもらえるか疑問だが、そんな感じのおいしさ。
そしてさらにつまみを頼む。当然、酒も頼んでいる。日本酒は全部で4本飲んだが、銘柄を覚えているのは2種類(菊正宗たる、白鷹)のみだ。ちょっと時間がたって忘れてしまった。
そして最後のつまみがしめ鯖。これもふくべさんの定番の人気のつまみみたい。酢でよく締まったしめ鯖だったので、酢が強すぎるのではないかと思ったけど、食べてみてびっくり、酢の酸っぱさより甘味?うま味が口に広がっていった。これもおいしかった。
この小宇宙で繰り広げられたお酒とつまみの共演もあっという間にお開きの時間になった。
今回は早い時間に行くと、二代目の方らしき方が燗付けをしていて、いろいろ進めてくれるのが楽しいということで、これからしばらくも早い時間によらせてもらおうと思うのでした。
ごちそうさまでした。
次回が楽しみ。