日本橋濱町Weblog(日々酔亭)

Quality Economic Analyses Produces Winning Markets

2009年のノーベル経済学賞:エリノア・オストロム女史とオリバー・ウィリアムソン氏

2009年のノーベル経済学賞が先日発表された。

今年は、両教授の経済的なガバナンスに関する分析が評価されたということだ。

具体的な内容は、東京大学の柳川先生が10月19日付日経新聞に書かれている経済教室が分かりやすい。

柳川先生の経済教室を横目で見ながら自分なりにまとめてみると・・・市場メカニズムを補完する非市場型メカニズムの分析が評価されたということ・・・これは、通常、?市場メカニズムが機能不全になっている場合、それを補完する役割として政府が登場するが、実際の経済システムではそれ以外の組織や制度、つまり市場でもない、そして政府でもない組織や制度が機能している場合があるということと、?契約が完全でありコストがかからなければそもそも企業は必要なく、すべて市場メカニズムで事足りるが、そこに企業が存在し、さらにその企業の内と外は様々なのだが、それを決めるものは何かという点を明らかにしたことが評価された。

?についてはオストロムさんの研究は「共有地の悲劇」という状況に対して、規制や政府介入ではない利用者の共同体が機能することでうまく統治されていることを分析した。?についてはウィリアムソンさんは経済活動を市場で行うか、組織に取り込んで行うか、その境界は何が決めるかを明らかにした。最近の情報通信産業においても垂直分離や垂直統合がいろいろな意味で議論されているが、それがなぜ起こるのかという点についての分析だ。

Understanding Institutional Diversity

MARKETS AND HIERARCHIES


柳川先生の解説は、ここから注意深く市場メカニズムが否定されたわけではないこと、また市場メカニズムが機能不全に陥っている場合でも政府介入が必ずしも支持されるわけではないことを丁寧に解説している。この辺りの冷静な理解は市場経済に生きるものとしてしっかりとしておきたいもの。

さてここまで書いてきてふと次の本を思い出した。

4121019369 アダム・スミス―『道徳感情論』と『国富論』の世界 (中公新書)
中央公論新社  2008-03

by G-Tools


市場メカニズム、分業の優位性を明らかにした経済学の祖と我々が頭の中に刷り込まれているアダム・スミス・・・実はその背後にはもっと広がりのある思想が存在していたことを明らかにしてくれるものらしい・・・実はまだ読んでいない。

見方を変えれば市場も一つの制度であろう・・・とするならば、その制度がうまく運行するための条件や市場メカニズムの有効性を再認識し、さらにその限界とその限界を補完するものをしっかりと理解することの重要性を改めて教えてくれる今回のノーベル経済学賞でした。

ところで僕の本棚にはウィリアムソンさんの著書が訳書と原著で2冊どこかに眠っているはずだ。

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