日本橋濱町Weblog(日々酔亭)

Quality Economic Analyses Produces Winning Markets

スイッチングコストの整理学

スイッチングコストとは、「消費者がある財・サービスを変更する際に被る金銭的、非金銭的コスト」のことと考えられる。

ミクロ経済学の世界では通常、消費者にはスイッチングコストは無い前提で議論が進められる。しかしわれわれの身の回りを眺めてみればいたるところにスイッチングコストは存在している。

通信サービスの場合、スイッチングコストとなる主なものとしては・・・

技術・システム上、改善可能なもの
・ 番号ポータビリティ(日本の携帯電話市場は2006年度実施予定)

契約変更に必ず伴うもの
・ 契約変更手続き
・ それにかかる費用
・ 使い勝手が異なる

事業者の囲い込み戦略の結果発生するもの
・ 長期継続割引の放棄
・ 利用ポイントの放棄

が、あげられる。スイッチングコストが大きくなると、消費者は現在よりも優れたサービスがあっても当該サービスに留まるようになる(ロックインされるという)。結果的に競争が停滞する。

通常の財・サービスでもスイッチングコストは存在する。例えば、家電製品をメーカーを変えるとスイッチの並び方などが微妙に異なり、最初、四苦八苦したりする。これもスイッチングコストであろう。通信サービスの世界で事業者間のスイッチングコストとして代表的なものは、番号ポータビリティであろうが、これは技術的には解決可能であり、携帯電話の世界でも後はポータビリティ導入によるシステム変更にかかわる費用負担の問題を解決する段階に来ている。その他ではモバイル・インターネット(MI)やメールは端末間でかなり使い方に差があり、同じ事業者でもメーカが違うと使いづらい思いをする。これは端末間でスイッチングコストがある例であろう。

また、今後、議論されなければならないものとしては、囲い込み戦略の結果発生するスイッチングコストではないかと考えられる。企業は競争を嫌うものである。競争が激しくなればなるほど、その顧客囲い込み戦略は激しくなる。これは例えばある種の飲食店で見られる常連客と一見客を分けて扱うことに似ているように見える。

通信サービスの競争において、スイッチングコストはどのような役割を果たしているのであろうか?またネットワーク効果とスイッチングコストは、競争政策上、考慮すべき何らかの関係があるのであろうか、あるいはまったく別のものとしてあつかっていいのであろうか。