日本橋濱町Weblog(日々酔亭)

Quality Economic Analyses Produces Winning Markets

スイッチングコストの計算

柘植隆弘、他著「携帯電話市場におけるスイッチングコストの計測-コンジョイント分析による大学生のWTPを通して-」

WTPとは、「消費者が望ましくない経験をすることで効用が低下する場合に、そのような望ましくない経験を回避するために、支払ってもいいと考える最大の金額」である。ここでいういスイッチングコストとは、この「望ましくない経験を回避するためのWTP」のことである。

MWTP、すなわちWTPを作り出す多くの要因のうち一つの要因が変化したときに変化するという意味で限界的なWTPの導出

V=α+β1X1+β2X2+β3p                        ...1)

というモデルを考える。X1、X2はスイッチングコストを変動させる要因(0,1のダミー)、pは契約事務手数料。Vは効用のうち、観測可能な部分。

MWTPは以下のように導出できる。

変数をもう少し具体的に書くと、・・・
要因X1:スイッチングコストを変動させる要因:例えば、番号ポータビリティの可否
要因X2:同上:例えば、毎月可算されるサービスポイントの有無
p:契約変更手続料
とする。このとき、X1の変化(X1があるかないか)で契約変更手数料(つまり、ここでのスイッチングコス)がどのくらい変化するかを明らかにする。数式で表現すると、X1がpに与える影響だから、

MWTP=dp/dX1と表現できる。

これはさらに分解して書くと、(dV/dX1)、つまり要因X1の変更が効用に与える影響と(dV/dp)、契約事務手数料の変化が効用に与える影響の比と考えられる。一つにまとめると、

MWTP=dp/dX1=(dV/dX1)/(dV/dp)、

となる。実際に計算すると、1)式の契約事務手数料(p)を左辺に他の項目を右辺に移行して、

p=(V-α-β1X1-β2X2)/β3   ...2)

ここではX1の要因が変化することによる影響を知りたいのだから、2)式をX1で微分すればいい。そうすると、X1以外の項はなくなり、残ったX1は0乗、つまり1となるので2)式は、

dp/dX1=-(β1/β3)、      ...3)

となり、柘植論文の5)式と同じものが出てくる。

だから、各要因のMWTPを計算するときは、推計されたモデルの各パラメーターを上記の式に代入して計算すればよいことになる。