日本橋濱町Weblog(日々酔亭)

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2014年CIAJ年次総会懇親会での鵜浦会長の言葉

先日、5月22日、情報ネットワーク産業協会(CIAJ)の年次総会後の懇親会に出席してきた。景気が上向いていることもあり、かなり出席者が多いのではないかと思っていたが、新年の賀詞交歓会や去年の総会後懇親会に比べ少ないような印象だ。
CIAJの総会後の懇親会や賀詞交歓会は業界の雰囲気を知るためもあり、可能な限り出席するようにしている。会場の雰囲気、参加している人たちの顔、来賓のあいさつの内容など、そこにいるだけでいろいろ情報収集になる。
当然、少ないとは言え、知り合いに合えばちょっとした情報交換の場になるのは言うまでもない。自分の場合は、今年、それを期待したが期待していた人は来ていなかったみたいだ。やはり賀詞交歓会の時が一番そういう点では会いやすいのかもしれない。

さて、懇親会は予定通り始まり、会長のあいさつから来賓のあいさつへと進んでいく。今回の来賓は、経済産業省の茂木大臣、総務省からは桜井審議官、そして電気通信事業者協会の鵜浦会長(NTT社長)だ。茂木大臣、桜井審議官はそれぞれ情報産業に対する期待を述べた。
注目は鵜浦会長の言葉。電気通信事業者協会会長としての来賓だったが、話す内容はNTT社長としてのそれだった。発表されていた光コラボレーションモデルを念頭においた「黒子に徹する」と「それを固定も無線もWiFiも無差別でやっていく」というものだった。
これまで小売中心に行ってきたビジネスを卸ビジネス中心に大きく舵を切ったとCIAJの懇親会の場で改めて宣言した。これは、2004年11月発表した「NTTグループ中期経営戦略」での光ファイバ3000万回線を2010年までに敷設すると宣言したものと同じような位置づけになるのではないだろうか。
光ファイバ3000万については、その後、予定通り契約数が伸びない点をマスコミは攻め立てたが、あの発表は、NTTグループが電話会社からブロードバンド会社に大きく変わるということを宣言したものだったと思う。そして通信市場の競争環境を考えれば、3000万回線は相当に困難な目標であったはずだ。それでも電電公社以来の電話会社から新しいブロードバンド会社に変わるためには一見無謀とも思える3000万を2010年までと言う必要があった。それでグループ内の意識改革をする必要があったと言えないだろうか。
今のNTTグループを見れば、電話じゃねえだろうってのは誰が見てもわかるだろう。
今回のNTTグループの「黒子に徹する」(卸ビジネス)という言葉は、光ファイバ3000万という誰にでも分かるインパクトのあるものではないかもしれないが、情報通信にかかわっている人たちにはそれと同等あるいはそれ以上のインパクトのある言葉であるはずだ。
NTTは再び大きく舵を切り始めている。昨年度のグローバルクラウド構想やWiFiプラットフォームはその第一弾だったということもできるであろう。これをICT社会経済の動きの中に位置づけてみると、尾原和啓氏の「ITビジネスの原理
」の原理に一つの見方が示されている。

ITビジネスの原理

ITビジネスの原理

90年代の第一のカーブと今まさに曲がり始めた第二のカーブという見方だ。氏の見方を拝借すれば、第一のカーブは94年ごろ、通信産業でいえばインターネットの開放と携帯電話の普及開始に始まり、NTTの光3000万宣言で曲がり終える大きな転換期・・・いろいろな見方ができる・・・電話からブロードバンドへ、コンピュータと通信の本格的な融合、Web2.0をはじめとする新しい利活用へのひとつの方向性を示した技術・サービスなどの登場の時期だ。
第一の変化が始まってから20年、氏は今われわれは第二のカーブを曲がりつつあると言っている。その先には94年以前に今のICTの状況が予想できなかったように、また新たな世界が広がっているに違いない。CIAJでの鵜浦会長の言葉は、それに向けてNTTグループは黒子としての役割を担うことによって貢献していくという宣言だったと位置づけられよう。
日本経済は、アベノミクスによって若干の光はさしてきているものの長期停滞の中にあえいでいる。その中でICTは期待されながらもその効果がだれの目にも見える形では捉えられていない。しかしICT化は第一のカーブ(インフラの時代)を曲がり、次の第二のカーブ(サービスの時代、利活用の時代)に差し掛かった今さらに進んでいる。その中でNTTのこの立ち位置の変更の意味を考えると次の10年の変化がどのようなものになるのか非常に興味が持たれる。