経済学の啓蒙書、入門書についてこのブログでも何冊か紹介しましたが、これはまた故事成語という独特な視点から経済学を解説しようというちょっと変わった、しかし、故事成語まで理解できるので一石二鳥、いやさらに梶井氏のちょっと斜に構えたコメントまで読めるので、一石三鳥で美味しい本かと思います(長い文だ・・・笑)。
故事成語でわかる経済学のキーワード 梶井 厚志 中央公論新社 2006-11 by G-Tools |
取り上げられている故事成語は以下のとおりです。
- 温故知新
- 覆水盆に返らず
- 蛇足
- 矛盾
- 他山の石
- 洛陽の紙価を貴む
- 先ず隗より始めよ
- 青は藍より出でて藍より青し
- 鶏鳴狗盗
- 漁夫の利
- 伯牙絶弦
- 画竜点睛を欠く
- 臥薪嘗胆
- 杞憂
- 朝三暮四
- 完璧
- 刎頸の交わり
- 桃李言わざれども下自ずから蹊を成す
- 奇貨居くべし
- 傍若無人
- 国士無双
- 愚公山を移す
- 助長
- 敗軍の将は兵を語らず
- 四面楚歌
- 苦肉の計
- 虎穴に入らずんば虎子を得ず
- 三顧の礼
- 泣いて馬しょくを斬る
- 漱石枕流
以上、30の故事成語が目次には出ている。これ以外にも文中で紹介されたり、コラムで紹介されたりしているものもあり、これ一冊を読めば、あなたの書く文章、話す言葉が知的になること間違いなしだと思う・・・笑
それから読んでいて文句なく面白い。経済学の考え方がなんとなく分る一方、中国の昔の歴史を紐解きたくなるというような副次効果まである。
紹介されている故事成語・・・貴方はいくつその意味を言えるであろうか。そしてそれを経済学の理論と結びつけて説明することができるであろうか。
ところで我々が調査研究をするにあたって、経済学でもその他の学問でも、その理論を知ることの重要性を書いている以下の部分は参考になる。
経済理論の存在する意味
そこで、その怪しさを補正するために工夫を凝らすのが腕の見せ所になる。怪しさを補正するために必要になってくるのが経済理論である。使用できる経済データは、理論を検証しようと繰り返し反復実験して得られた結果ではあるが、実験のやり方がへたくそであったと解釈するのである。そのへたくそな部分を補正しつつ、データを眺めるわけだ。背後に理論がないと基準がないから、怪しい実験データのどこをどう補正すべきなのかわからなくなる。つまり、理論があって初めてデータの意味が見えてくるのである。(239ページより)
ちょっと長いけど引用してみた。引用したけど、ここだけ読んだのではイマイチ理解し図らいだろう。そういう人は実際に本を買って読んでみて欲しい。
経済学者が書いた本だから、経済理論となっているが、その他の社会科学による理論でも同じだ。
梶井氏は僕と同世代だが、こういう本を書ける研究者には非常に興味が持てる・・・だが、彼の中公新書の前著『戦略的思考の技術』は、どういう訳か今まで数回読もうとしたのだが、挫折してしまった。もう一度挑戦しようと思う。