日本橋濱町Weblog(日々酔亭)

Quality Economic Analyses Produces Winning Markets

IT社会におけるドライカッパ電話の位置づけ

2004年8月30日にソフトバンク社長孫正義氏が12月からの基本料市場への参入を発表した。日本テレコムの提供する「おとくライン」(リンク切れ)である。それに引き続きKDDIも来年2月から「メタルライン」をはじめると発表している。

両社とも基本料市場への初めての本格的な参入であり、NTT東西の安定収入源であった基本料市場は民営化後初めて大きな競争の波にさらされることになる。

そのような中で両社は単に基本料市場へ参入するばかりでなく、将来のブロードバンド戦略も視野に入れている。それは日本テレコムは徐々におとくラインのIP化を図り、KDDIは最初からIP網へ接続するという加入者線路のディジタル化、IP化である。両社のディジタル化におけるアプローチの違いは、出発地点の相違からくる戦略、設備構成の違いによるものである。しかしユーザから見たとき、両社は同じ基本料市場へ参入してきており、将来はIP網へ接続するという方向性も一緒である。今回の参入がうまく機能すれば、加入者線路のディジタル化は思いの他、早く進むかもしれない。

実は今回の参入は基本料金が下がるということよりも、この加入者線路のディジタル化を一気に進めることになる点が非常に重要だと思う。さらに制度的な遺物も整理されるとよりすっきりしたネットワーク市場が形成されるのではないかと考えられる。

おそらく加入者線路のディジタル化の進捗に新たな刺激を与えることになる今回の参入は、短期的にはNTT東西の屋台骨を揺るがすことになり、苦しい経営を強いられるかもしれないが、次世代ネットワーク「RENA」の性能を十分引き出し、レゾナント・コミュニケーションを実現するためにはプラスであると考えられる。レゾナント・コミュニケーションを実現するためには加入者回線のディジタル化、広帯域化は重要であろう。それが最後の電話ユーザたちに対しても市場メカニズムのもと実現しようとしている。

これは設備の規模が違うかもしれないが、ちょうど携帯電話がアナログからディジタルに変わるときの状況に似ている。当時、携帯電話会社にとっての最大の悩みはアナログユーザをいかにデジタルサービスに巻き取るかということであったが、ちょっと極端に言えば、競争がそれを実現してしまった。

おそらく今回の日本テレコムKDDIの参入による基本料市場のディジタル化は、国内のネットワーク・インフラを高度化する最終段階として位置づけられ、実は目先の値下げ競争よりももっと重要な意味を持つも競争であると言える。