日本橋濱町Weblog(日々酔亭)

Quality Economic Analyses Produces Winning Markets

ネットワーク効果(ないし外部性)

情報通信産業の世界で最近注目を浴びている経済性にネットワーク効果というものがある。通信産業の世界では従来より消費の外部性としてその存在は知られてきた。端的に言えば、財・サービスの需要が消費者間で相互依存していることがネットワーク効果の源泉となっている。

経済学の世界では、通常、財・サービスの消費には他の消費者の消費には影響を受けないという前提で分析が進められる。ところが実際、我々はさまざまなものを消費するとき、他者の影響をいろいろと受けている。例えば、小さい子供が友達と同じおもちゃを親に強請るのは良い例である。これは大人の世界にもある。「となりもクーラー買ったから私たちも買いましょう」というはその一例であろう。あるいはある商品が口コミで徐々にその利用者を拡大していくのもその例である。たまたまこのブログを読んでくれている人も自分の身の回りを見回してみれば、これに類することは枚挙に暇がないと思う。要するに、人間の消費とは多くの場合、決して他の消費者から独立で営まれているわけではない。

ミクロ経済学の世界では、しかし、通常はそのような財・サービスを消費する際の相互依存性は無視されている。バンドワゴン効果ヴェブレン効果としてある特殊な場合に分析対象になってきたに過ぎない。しかし、ITが全盛の時代になりつつある今日、ネットワーク効果そのものが商品価値である情報通信産業がこれからのリーディング産業と目されるようになれば、当然、経済学の世界でもネットワーク効果を無視するわけにはいかなくなる。

最近、ネットワーク効果が注目されているのは、競争政策の分野である。最近の事例でもっとも有名なのは、マイクロソフト社のOSとブラウザのバンドル問題であろう。

情報通信産業はレイヤ構造が明確になってきており、マイクロソフト社のような垂直統合の問題やドミナントキャリアを認定する際の基準を考える際の一要因として今後本格的に議論されるようになると考えられる。

有効競争レビューの項もあるが、ネットワーク効果およびそれに関連する需要側の経済性についても今後取り上げていこうと思う。