日本橋濱町Weblog(日々酔亭)

Quality Economic Analyses Produces Winning Markets

大相撲はウィンブルドンになり得ないか?

昔、2005年の11月5日に「IT産業の
ウィンブルドン化
」という記事を書いた(今ならICTと書くところだが、当時はまだITを書いていた。これも懐かしい)。

この時の記事は、プロテニスの世界4大大会の一つ、イギリスで開催される全英オープンテニスを例に挙げ、大会上位にイギリスの選手はいないが、世界から一流の選手が集まり、そして世界からその選手たちのプレーを観戦しにテニスファンが訪れてくれる。結果、イギリスは経済的に潤う。そういった点から、ブロードバンドというセンターコートを持つ日本のICT産業はその上で売るコンテンツを今後どうするのだろうということを書いたものだ。

全英オープンテニスのようなビジネスモデル(といっていいかどうかはあるが)はいたるところにある。

例えば、米国のプロスポーツは皆このようなモデルだ。まずはプロ野球のMLB。日本からはイチローや松井が参加している。他にも韓国や台湾、中南米の国々の選手が大リーガーとして活躍している。プロバスケもそうだ。東欧やアジアの選手も活躍している。そしてもっとも世界的なスポーツであろうサッカーは一流選手が全世界をまたにかけていとも簡単に移籍する。

つまりもっとも稀少性の高い経営資源であるコンテンツは世界から集める時代になっている。そのような時、日本のブロードバンドのセンターコートにどのような名コンテンツを集めるのか、そのための具体的戦略はあるのかということを述べた。

さて、このような視点から日本の大相撲を見るとどのような含意を得られるだろうか。「IT産業のウィンブルドン化」でも大相撲について触れている。引用すると・・・

国内に目を転ずると、日本の国技と言われる大相撲・・・今の九州場所が行われている。その大相撲の土俵にも最近、いろいろな国の力士が立ち、優勝を争っている。朝青龍琴欧州がその代表だろう。

大相撲も世界のトレンドと同じように、気がつけば、世界中から優秀な力
士を集めてビジネスをするようになった。相撲協会は国内で力士を集めることが難しくなったので、止むに止まれず活路を海外に求めたのだろう。このことは結果として世界から力士を集めるということで自然と力士の出身国に相撲というスポーツを広め、大相撲を日本のローカルスポーツから世界に羽ばたかせるという世界のスポーツと同じビジネス戦略にあったものだったと言えるのではなかろうか。(蛇足だが、伝統あるものが長く続くためには時代とともに変化することも必要なのだとい
うことを誰かが言っていた。)

さて大相撲の場合、順調に進んできたように見えたが、ここにきて限界があらわになった・・・問題は海外からの力士が番付表に目立つようになったその後だった。何が起こったか・・・麻薬事件であり、朝青龍の不祥事だ。このようなことが起こる背景にあるものは何なのだろうか。おそらく大相撲を支える組織がこのような国際化について行けずに機能不全を起こした結果だろうと想像してしまう。この点をしっかり改革していかないと大相撲は日本のローカルスポーツにとどまることになるのではないか。

大相撲のことを考えた時、日本のICT産業はこの大相撲での出来事を他山の岩と言っていられるであろうか。大相撲は日本古来のものであり、そもそも日本独自のものだ。その点、ブロードバンドもその出自は通信サービスであり、一部国際通信を除けば大部分は国内に閉じたビジネスをしてきた産業である。そのような産業の国際化が求められているのだ。

世界最先端のブロードバンド上にどのようなコンテンツ産業を開花させるか・・・自らが描いているビジネスモデルがコンテンツの国際化というトレンド上に乗っていて、そこから収益を上げる仕組みを作り上げていけるのか。世界を視野に入れた戦略が描けるかにかかっている。

このように世界を相手にしなければいけない今日、ICT産業も機能不全に陥っていないであろうか(機能不全が何を指しているのか)。大相撲の国際化の成否は、日本人による対処の一例を示すことになるであろう(そういう点では朝青龍がああいう形で引退してしまったのは誠に残念だ)。それはICT産業の国際化の成否をも占うことになると言ったら言い過ぎであろうか。

なお大相撲という一組織がどのような特徴をもっているかは下記の書物が詳しい。読み物としても面白い。

4480424288
相撲の経済学 (ちくま文庫)

筑摩書房  2008-03-10

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