日本橋濱町Weblog(日々酔亭)

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首都圏最後の水がめと言われた八ッ場ダムが完成した

群馬県西部から流れこむ、利根川の支流、吾妻川に建設中だった八ッ場ダムの本体部分が完成した。まだ周辺施設は建設中のところが結構あるが、ダム本体は完成とのこと。建設中は一度も訪れなかったが、今回、初めて行ってみた。

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これが八ッ場ダム・・・の貯水される側。だから満水時には下の方は水面下になり見ることができない。貯水に1年間ぐらいかかるらしいので、もうしばらくはみられるが、それで見納めとなる。

ja.wikipedia.org

ダムの裏側を見ることはあまりない。自分も今回初めてみた。傍らにはダムの概要を示した写真があり、それとダムを見比べながらあれこれ想像を巡らす・・・だいたい水面はあそこぐらいかな・・・なんて。

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この八ッ場ダムができる場所は関東耶馬渓と言って、吾妻峡のもっとも狭い部分だ。昔は国道145号線がその峡谷をぬって走る場所で、道は細く曲がりくねり、車酔いしがちな者にとっては辛い区間であった*1。下の写真、中央にかかる鉄の橋の残骸?あたりがもっとも狭い部分と想像される。そして手前側が国道が通っていたあたり。往時を知る人が見なければここが関東耶馬渓と呼ばれていた場所だったと気づくことはまずあるまい。

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この八ッ場ダム、計画されたのが終戦後間もなくの頃で、その建設目的は利根川水系の水害対策とか首都圏の水がめとか言われていた。自分の叔父などは当時、激しく反対していたようだ。長野原町全体がほぼ反対だったのではないか?それでも計画は少しずつ進み、自分がまだ小学生ぐらいの頃、吾妻川に赤い線の看板が作りつけられた。その看板を指しながら「ここが満水時水面になるんだよ」と教えられたのを覚えている。その場所は丸山のちょうど反対側になる弁天橋を渡ったところにあった星河商店でのことであった。ま、今となっては懐かしい思い出だ。

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実は、八ッ場ダムを工事中、見にこなかったのは何か恐怖心みたいなものがあったからなのだが、それが何なのかは自分でもよくわからない。この第二の故郷と言っていい場所が湖底に沈む現実を認めたくなかったのかもしれない。今回初めて来てみて、圧倒された。ダムというものは想像以上にでかい。圧倒的なスケールで自分たちの眼前に存在しているその様は異様だ。何とも言えないこの感覚・・・機会があれば水が貯まる前にもう一度ぐらい来てみよう。

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そして目を西、吾妻川の上流に転ずれば、変わり果てた吾妻の景色がそこにある。こう改めて見ると、山深い土地だと思う。東京から200キロ弱でこれだけ山深くなる。その山深さが切り開かれている・・・現在のこの景色・・・土木技術の自然に対する圧倒的な力を感じずにはいられない。このダムの建設が地域の未来にとって無駄にならないようにと思わず考えてしまう。

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丸山も霞んでいたがしっかりと見えた。何年か経つと、この手前の方は湖面になる。景色は全く違うものになるのだろう。

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他の施設が完成し、満水になるまであとどのくらいの期間が必要なのだろうか。この写真の奥には草津温泉浅間山北麓ジオパークがあり、避暑地の浅間高原、スキー場もある。観光地、夏の避暑地、冬の行楽地として東京からも手頃な距離でどのように発展していくか楽しみでもある。

持続可能な地域のつくり方――未来を育む「人と経済の生態系」のデザイン

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一方、開発、発展によってこの山々の自然がむやみに破壊されないようにしてもらいたいものだ。太陽光発電のパネル建設で森の木々が伐採され、どう考えても生態系にマイナスの影響を与えているとしか思えない。ダムの建設自体も生態系にとってはマイナスだろう。今後どこまで開発が進むのか・・・むやみな開発をせず自然とうまく共生してほしいものだ。

そして地域社会としては、東京など首都圏全体も含めて、全てのステークホルダーが損な役わまりにならないように、全体がプラスであるのはもちろん、関係者全員が少しずつでも恩恵を預かれるようにこれからの整備を進めていってもらいたいものだ。

 

*1:耶馬渓周辺は遊歩道が整備され、国道沿いにちょっとしたドライブインがあり、小さい駐車場があった。観光客はそこに車を止め、遊歩道を散策したりしたわけだ。その駐車場の脇には確か檻が置いてあり、熊が飼われていた。檻は何回も見ているが、実際に熊を見たことはないままに今に至る。当然、もう見ることはできない。