長らく積読資産となっていた1冊。この週末に残りの部分を一気に読んだ。
感想はというと、あとがきを見ると書き下ろしたのが2006年の9月〜10月で、その年の暮の発行だから、適度に時間が経っていて振り返りながら読めたので面白かった。
目次は以下のとおり。
- プロローグ
- 第一章 Winny「私の革命は成功した」
- 第二章 P2P エンド・ツー・エンドの理想型
- 第三章 著作権破壊 ヒロイックなテロリズム
- 第四章 サイバースペース コンピュータが人々にパワーを
- 第五章 逮捕 「ガリレオの地動説だ」
- 第六章 アンティニーウィルス
- 第七章 標準化競争 三度目の敗戦
- 第八章 オープンソース
- 第九章 ガバナンス インターネットは誰のものか
- 第十章 デジタル家電 iPodの衝撃
- 第十一章 ウェブ2.0 インターネットの「王政復古」
- あとがき
ネットvs.リアルの衝突―誰がウェブ2.0を制するか (文春新書) 文藝春秋 2006-12 by G-Tools |
前半はWinnyの裁判をめぐる経緯が説明される。技術と制度の衝突の様をまざまざと描き出していると言っていいだろうか。知っている人にとってはまどろっこしいかもしれないが、その経緯をあまり知らない人にとっては興味深く読めるだろう。
そしてそこで繰り広げられるステークホルダーたちの葛藤。技術と制度がぶつかり合うとき、そこにいくつもの小さな対立が起き、それがやがて大きくなっていく。制度が技術を飲みこむのか、技術が制度を突き崩すのか。あとがきでは小飼弾氏の言葉を引用して、技術と社会の両者が歩み寄るしかないだろうとして結んでいる。
今の日本は、制度というよりもう少し大きく社会が技術にうまく歩み寄れなくて右往左往している感じだろうか。もう少し科学技術教育そのものや科学・技術・社会がどのように関連して変化していっているのかについての教育が必要だろう。
後半は技術の国際覇権をめぐる日本企業の状況と、局面打開を考える政府の技術政策について述べられている。前半に比べると、ページ数の制限か後半はもう少しじっくり読ませてほしいという感じが残る。
僕にとっては、新刊の時には別の面白さを感じたのかもしれないが、今読んだから逆に面白かったと思った1冊だった。