50歳になったらお遍路さんをやってみようと考えた頃にちょうど出版された四国八十八ヶ所について書かれた本。
著者の石川氏は、ベトナム戦争などを取材してきたジャーナリスト。本書の中にも当時の戦争で命を落とした仲間のことがつづられている。著者も八十八ヶ所めぐりの途中で心筋梗塞になり、生死の境をさまよったこともあり、序の副題にもなっているとおり、本書を読むとそこここから、命の大切さ、生きていることの喜びを伝えようとする著者の気持ちが読み取れる。
四国八十八カ所 カラー版―わたしの遍路旅 (岩波新書 新赤版 1151) 石川 文洋 岩波書店 2008-09 by G-Tools |
さて本書、章立ては以下のとおり。
- 序にかえて−戦争と命を考える旅
- 第一章 冬の阿波(徳島県1番霊山寺〜23番薬王寺)
- 第二章 春の土佐(高知県24番最御崎寺〜39番延光寺)
- 第三章 真夏の伊予(愛媛県40番観自在寺〜65番三角寺)
- 第四章 初夏の讃岐(66番雲辺寺〜88番大窪寺)
- 終 章 晩秋のお礼参り
八十八ヶ所めぐりは4章に分けて四国四県別に書かれている。一気に回ったのではなく、季節ごとに4回に分けて回っており、各所の紹介が季節とともにつづられている。著者はカメラマンであり、飾り気のない文章とともに各所の写真が掲載されており、これがなかなかいい。
本書は、八十八ヶ所の紹介ないし紀行文というよりは、著者の思い「戦争と命を考える」ことが主題であり、ベトナム、カンボジアで斃れたジャーナリストの事、沖縄の事、広島の事などが書かれており、やはりそちらの印象が強く残る。また遍路旅をしている人たちもいろいろな人生を持っており、何かを吹っ切るために八十八ヶ所めぐりを実行している人が多いことも気づかされる。
お遍路さんのことを、八十八箇所のことを知るためよりも、何のために八十八ヶ所をやろうとするのか、もう一度考えさせてくれるきっかけをくれる著書だと思う。