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これは「そこそこ起業」と副題にある通り、起業を考える人のためにちょっと視点を変えてみると意外と自分を活かせる道はあるよってことを気づかせてくれる内容だ。そしてこれは起業ではなく、普通に職を探している人にも参考になる内容ではないかと思いながら読んだ・・・それはつまり自分みたいな退職した後をどうするかを考えている人も含めてだ。
著者は、企業家研究の分野で活躍してきた経営学者だが、そろそろベテラン研究者の仲間にはいるかと行った頃から自分の研究テーマに疑問を持ち始める。それは本書のはじめにに結構詳細に書いてある。自分のやってきたことを振り返り、企業家研究からこぼれ落ちていた部分に気づき、それを「そこそこ起業」と呼び、分析するようになった。同じ頃、海外でも同じような研究視点が提起されるようになり、それは「ライフスタイル企業家」と分類され、分析対象となっていた。
本書はビジネス書としてそのそこそこ起業について優しく書かれた内容となっている。それでも代表的な論文は掲載されているので、学術的な知見を勉強する資料としても読むことができる。そして本書の元になった連載も一部であるが、公開されている。
そこそこ起業ならばその名称の印象から簡単に起業できると考えがちだが、読んでみて、その行間を読めば、そんなに簡単なものではないということも伝わってくる。それでもきっかけとしてのそこそこという発想が、最初の一歩を踏み出しやすくし、その後の苦労も最小限にし、自分の好きなところで社会に貢献することを可能にしてくれることに気づかせてくれる。
多くの人は、新卒でも中途でも退職後でも大企業から中小企業のいずれかに就職し、組織の中で毎日働いていく道を歩む。その道が自分の好きな道であればいいが、そうでない時の一つの選択手段としてそこそこ起業=ライフスタイル企業の道があるということだ。
本書は、12の事例をあげ、それを具体的に示している。12のそこそこ起業をその字面だけでなく、行間を読み、書かれていない背後にあるいろいろな取り組みを考えることで、そこそこ起業に対する可能性とライフスタイル企業としてやっていくことの意義を見出すことができるだろう。目次は以下の通りだ。
- はじめに 流しの大工だった父親が教えてくれた、あえて会社を持たない生き方
- 第1章 音楽と共に生きる沖縄ミュージシャンのビジネス構造
- 第2章 趣味を束ねて楽しく生きていく達人
- 第3章 同人誌の世界に学べ!推しエコノミーの本質
- 第4章 異色肌ギャルメイクから考える「レジリエンス」
- 第5章 最果てのゲイタウンが教えてくれる「商店街活性化」の鍵
- 第6章 伝説のカーショップでわかった「起業がもたらす幸福」
- 第7章 キッチンカーでラーメン屋?屋台が人間を解放してくれる理由
- 第8章 山で生きる祖父が体現していた、本当の意味での「稼ぐ力」
- 第9章 歌舞伎町の飲み屋にいる怪しいオジサンの「ニッチ」な儲け方
- 第10章 シーラカンスのように生き残る日本の1000年企業のスゴさ
- 第11章 魚のさばき屋さんからサービスの「価値」を考える
- 第12章 小説紹介を生業にするもう一つの冴えたやり方
- おわりに ライフスタイル起業を始めるを始めるためには?
興味のある章から読んでもいいし、最初から順番に読んでもいいと思うが、読みやすく、そこそこビジネスの面白さをいろいろな事例を通して知ることができるので、最初から順番に味わって読んでいくのがいいのではないかと思う。
何をやるにも好きであることが1番だろう。自分のやりたいこととはそういうものだろうし、自分の好きなことならば苦労も苦労と思わないだろう。そうするとそこそこ起業はそういう好きなことで何かをしたいと思っている人にとっては可能性を大きく広げることになる。一見レッドオーシャンに見えてもそこそこ起業ならやって行けたりするということも本書を読むとわかる。事業規模をそこそこに抑えることによって、ビジネス上の苦労やリスクも最小限に抑え、それで自分を含めたステークホルダーも無理をせず生活することができる。
本書を読むと、次は自分で実行することを視野に入れた、自分のそこそこ起業を考えている自分を発見したりする。