久しぶりに一冊を読了した。購入したのが6月の半ば、読み終えたのが7月28日で1ヶ月半もかかってしまった。最近の自分の頭の不調具合がよく分かるというものだ。
本書はアメリカの巨大企業GEが製造業として新たにデジタルを身にまといデジタル製造業として生まれ変わったその過程を描いたものだ。インダストリアル・インターネットの実際がよく分かる。著者は、シリコンバレーで直接GEの幹部やGEデジタルの関係者へのインタビュー等を通し、GEが進めたインダストリアル・インターネットの全体像を230ページの中で紹介している。
GE 巨人の復活 シリコンバレー式「デジタル製造業」への挑戦
- 作者: 中田敦
- 出版社/メーカー: 日経BP社
- 発売日: 2017/06/13
- メディア: 単行本
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インダストリアル・インターネット、製造業のデジタル化、IoT、ビッグデータ、AIなど最近よく耳目にする言葉が並ぶ・・・本書を読むとGEの変革を通して今進行しつつあるICTによる変革がどういうものかが理解できる*1。それとともにGEのように長い歴史を持ち、かつ、巨大な企業がこの変革にどのように対応して行ったかも理解できる。
構成は以下のとおり。
- プロローグ:さらばウェルチ、過去と真逆に歩む
- 第1章:設立125年のスタートアップ
- 第2章:GEデジタルはこうして生まれた
- 第3章:目指すはエアビーとウーバー
- 第4章:アイデアはデザイン思考で育む
- 第5章:グーグルそっくりのPredix
- 第6章:デジタルで製造現場も変わる
- 第7章:失敗が心地よい企業へ
- おわりに
本書の中でキーワードとなるものが、リーンスタートアップ、デザイン思考、アジャイル開発などなどよく耳にする言葉たちだ。自分などはこういう最先端の言葉に弱いため、その部分だけでもいい勉強になった。
これらの新しいやり方を貪欲なまでに取り入れていくGEの凄さ。またGEの事例でなるほどと思うのは、経営トップのリーダーシップがICT改革ではいかに大事かということだ。そういう点で日本の企業が未だに導入が遅れ気味であり、せっかく導入してもICTをうまく使いこなせていない現実を考えるとき、その原因の一端は経営トップのあり方が根本的に問題なのではないかと改めて思わずにはいられない。
実際、GEは経営トップが自ら進んでインダストリアル・インターネットを実行するためにその先頭に立って改革を断行した。社内の改革も経営層がまず先頭に立って行うという感じだ。そして社内に広げていく。その先には顧客がいるわけだが、その顧客の開拓にも経営トップが率先して動いたという。経営トップ同士が納得すれば下は動きやすい、あるいは動かざるを得ない。
一方、我が国のICT業界はどうだ?身の回りで聞く話は全く逆だ。あるICTサービスを導入しようとして、担当者間では話が進み、よしこれで行けるとなった瞬間、トップからストップがかかる。いつも同じパターンだ。そこでどうすればいいか、ICT企業の営業マンは悩むらしい。日本のICT企業の経営トップも自ら動けば、日本全体がそもそも変わるのではないかと思わない人はいないのではないか?
印象に残ったのは、上記の話にもあるように経営トップがいかに社内を、顧客を引っ張るかということだ。それから創業125年にもなる古参企業がシリコンバレーに学ぶため、あるいはそこでの成果を生かすため徹底して社内改革を行い、新しい人を取り込んでいく過程は、そこで採用される技術、組織、人等が考え抜かれているように描かれている。実際は様々な困難が本書に描かれていない部分で多々あったのではないかと思う。ピボット経営的な対応も多々あったのではないか。それを乗り越えて実現させてしまうその実行力とそれを可能にする考え抜かれた改革の中身。
インダストリアル・インターネットの側面では、組織横断的なGEdigitalというIT部門が全てを作り上げていく過程、Predixという共通基盤、他社への提供、オープンという考え方、その他様々な要素が密接に絡み合い、GEの改革、インダストリアル・インターネットの推進を可能にしたと言えるだろう。
今、ICTがもたらす影響の一端を知りたいと思っているビジネスパーソン、これから社会に出てこようとしている学生、その他ICTの今に興味を持っている人、誰が読んでも面白く読めると思う。文章も読みやすい。おすすめである。
- 作者: エリック・リース,伊藤穣一(MITメディアラボ所長),井口耕二
- 出版社/メーカー: 日経BP社
- 発売日: 2012/04/12
- メディア: 単行本
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- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2014/05/10
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- 出版社/メーカー: オライリージャパン
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- メディア: 大型本
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*1:ものづくりからサービスの提供へとか言われてるけど、それがどういうことなのかが分かる。