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新城カズマ:マルジナリアの妙薬・・・本当に妙薬になるのか?

ハヤカワ新書juiceの中の1冊。この著者はもう一冊ハヤカワ新書にあるが、今回はこちらをご紹介。

ハヤカワ新書juiceシリーズは、その創刊時に「知的な渇きを癒す『新鮮で濃厚な』作品をお届けする」と帯にうたっていたこともあり、どのようなテーマで刊行されていくのか興味があった。この作品はその中の一冊として名を連ねている。

本書「マルジナリアの妙薬」は138ページと非常に薄い。1時間もあれば読めてしまう量だ。そして帯にはこうある。

この世で最後の活字本だとしても、後悔しないぐらいの。
活字と電子の狭間で物語のあり方が大きく変容しつつある現在、その最前線で思索を深める著者が物語的想像力の可能性を問い直す全12話。

具体的な内容は以下のとおり。

  • 第一話 ギルガメッシュ叙事詩を読み過ぎた男−H氏に捧ぐ
  • 第二話 グリーンじゃないし、ゲイブルスもないけど
  • 第三話 愛のために−或るヴィクトリア朝の物語
  • 第四話 少年十字軍、もしくは世界中の水曜日をぜんぶ集めて
  • 第五話 スルタン・イスマーイル・ウズン=ハッサーンと彼の誉れ高き後宮
  • 第六話 世界週末ピクニック

4152091460 マルジナリアの妙薬 ( )
新城 カズマ
早川書房  2010-07-22


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続いて後半は以下のとおり。

  • 第七話 東都奇譚介錯御無用(とかいのふしぎ よみかたはすきずき)
  • 第八話 『ファストフード&スローキラー』シリーズ、著者インタビュー
  • 第九話 サン=ジェルマン=デ=プレのカフェーにて(1938年製作)
  • 第十話 小論(1)−もうひとりのトールキン
  • 第十一話 小論(2)−ロケットでは辿り着けない処 イトウ・シオリ
  • 第十二話 アンケートの時間です

読んだ感想としては、昔、パソコン通信が普及し始めたころに書かれた乗越たかお著「アポクリファ」という小説をなんとなく思い出した。この小説は、内容紹介を引用すると「完全再現パソコン通信小説。新世代のコミュニケーション。虚構×現実(バーチャル・リアリティ)の世界の仲間とラブストーリー。」というもの。このマルジナリアの妙薬は、この系譜に位置づけられるのかもしれない。

もう一つ、なぜかウンベルト・エコの「薔薇の名前」を思い出した。たぶん多少理屈っぽいところがそう感じさせたのではないかと思う。

21世紀初頭、ネットの世界が始まったばかりであり、確かにこういう世界が見え始めているのかもしれないなというのがとりあえずの感想。いくつもの物語が入り組んでいる。そしてバラバラであるようでどこかで繋がっていそう。事実最後の第十二話は「なるほどこういう〆か」と思わず感心してしまった。

そのうち読みなおすとまた違った感想を持つかもしれない。今は、こちらを読もうとしている。

415320014X われら銀河をググるべきや―テキスト化される世界の読み方 (ハヤカワ新書juice)
新城 カズマ
早川書房  2010-07-24

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