資本主義、市場経済という同じ経済システムでも、日本、アメリカ、ヨーロッパとでは微妙に異なる。だから経済摩擦も発生する。
その違いがどこから来るのか・・・それをしっかりと理解していることはこれから経済取引がネットの発達によって意識しようがしまいが国際化していくとき、無用な対立や摩擦を引きこさないために重要であろう。
本書「宗教の経済思想」は、そのような経済システムの違いを宗教の観点から眺めたものである。
本書で取り上げられているのは
の4つの視点である。
宗教の経済思想 保坂 俊司 光文社 2006-11-16 by G-Tools |
宗教と経済活動というと、印象としては、対極にあるもののような印象があるが、実はそうでもはないことが本書を読むと分かる。キリスト教、イスラム教(本書の中ではイスラーム教)、仏教さらには日本教の中で、いろいろと経済活動を規定しており、それが現在もかなり生きていることが分かる。
後半では、日本を念頭において、東アジアの仏教(大乗仏教)と日本古来の日本教について、経済活動との関係で述べられており、その宗教を背景に持つ経済倫理や労働倫理の希薄化が最近の日本社会の荒んだ姿をもたらしていると解く。
宗教と経済活動とのつながり・・・という今まであまり考えて見なかった視点だったので、半日程度で一気に読んでしまった。なかなか面白かったと思う。
惜しむらくは、読んでいて、キリスト教世界、イスラム教世界、仏教世界ないし日本について語られている各章がばらばらになっている感が強く、後半の日本を中心とした部分を読んでいるとき前半のキリスト教やイスラム教との対比がもっと綿密にされるとより面白さが増したのではなかろうか。
そこが比較分析の真の面白さだろう。