先日の記事で景気循環のサイクルが変化してきており、昔より短くなりつつあるようで、それを低両手データで統計的に検証したいと書いたが、そもそも景気とは何なのかと考えているところいちょうどよい本が出版された。
景気ってなんだろう (ちくまプリマー新書 94) 岩田 規久男 筑摩書房 2008-10 by G-Tools |
何がちょうどいいかって入門書だから、難しいことは書いていなく要点をおさらいするのにはちょうどいい。 内容は以下のとおり。
- 序章 景気とはなんだろう
- 第一章 景気はなぜ良くなったり悪くなったりするのだろうか?
- 第二章 設備投資は南極探検のようなものだ!
- 第三章 日本の景気は海外の景気と同どう連動するか
- 第四章 お父さんの会社は景気とどういう関係があるのか
- 第五章 いろいろな価格は景気とどう関係するのか
- 第六章 景気を安定させる方法はあるのだろうか?
- 第七章 インフレにどう対応するか
- 付録 イワタ流景気動向指数の見方
まずはじめに景気についてその概要を説明する。景気はトレンド周りの動きであること、循環して良くなったり悪くなったりすること、景気の山谷、回復期、好況期、後退期、不況期という基本的な説明。そしてこの循環が起こる背景について、投資(在庫、設備、住宅)、消費、輸出、それぞれついての説明。
GDPの半分以上を占め、人々の消費行動がなかなか変わらないことから消費は景気の下支え、設備投資はその波及効果の大きさから景気を好転、ひいては経済成長を実現する役割として重要であることが本書を読み進むと分かってくる。
そして外需に依存している日本経済が輸出や輸入によってどのような影響を受けるかを説明し、最近の実感なき景気拡大の背景が説明される。さらに実物経済から価格や利子・・・つまり金融経済と景気の関係について説明される。金融に関することがどうも苦手な人間としては、このあたりはじっくり読みたいところ。最後の2章でインフレやデフレに対する政策について解説されている。
景気についてそのメカニズムを知りたいならばお薦めの一冊だ。これを読んで改めて思うのは、昨今の政府による景気対策だ。マスコミは高額所得者への定額給付金をどうするかということを問題にしてよく記事になっているが、その前に問わなければいけないのは、今回の景気対策がどのようなメカニズムを利用して景気を刺激し、回復基調にすることを狙っているかという点ではないかと思う。
そこがはっきりしないのに単純に金持ちに補助をするとは何事か!というような一面的な批判をすることは不毛だ。今の日本経済に最終的に必要なのは、企業の設備投資への積極性を取り戻すことだろう。そのためには何をすべきだろうか。