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半藤一利「昭和史−1926〜1945−」

最近、興味を持っている戦前戦後史に関する本だ。最近読んだこの手の本では6冊目ぐらい。

この本は別に後編があり、そこで戦後について整理されている。

この本は、口述したものを後から文章化したものなので、文体は口語調で普段文章をあまり読みなれていない人もとっつきやすいだろう。

4582454305 昭和史 1926-1945
半藤 一利
平凡社 2004-02-11


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昭和の前半は戦争の時代であったわけだが、そこでの軍部、マスコミ、政府、天皇等の利害関係者がどのような役割を果たしたのか、整理されていて、昭和史を理解するためには非常によい一冊だ。

その中で、まず注目したのはマスコミが演じた役割だ。当時はラジオの勃興期で、新聞との競争が始まりつつあるような状況であった。そこに満州事変である。結果として、マスコミは読者や聴視者を得るために、報道合戦を展開することになる。

特に昭和初期から2.26事件に行く過程で日本全体がどのように戦争に向けて国内が舵を切っていったか・・・マスコミが果たした責任は重いといわざるを得ないだろう。

そして組織の中で良識派と見られる人々が駆逐されてしまう過程は目を覆いたくなるばかりだ。陸軍しかり、良識が最後まで残っていた海軍でさえ似たり寄ったりであった状況が本書を読むとよくわかる。

自分の立場をわきまえない人間が権力を持ったときの恐ろしさ。自分の役割とその立場での責任。要所要所でキーマンとなった人間がいかに適切な判断をする、責任を自覚して行動を取るということに関して無能であったことか。

そしてそれに輪をかけるようにマスコミの世論操作。思想統制・・・軍国主義へまっしぐら。理性とか合理的判断とかいう言葉はあの時代、墨で黒く塗りつぶされていたのだろう。

今の時代、あの戦前の暗黒自体と違うといえる人がどれだけいるだろうか。国家という単位ではなく、企業という単位で見たとき、理性なき、合理的判断なき意思決定が、形だけの議論がそこここで行われているのではないか?あるものは自分をかばい、あるものは自分を正当化し、何を大切にしなければいけないのか、その視点が決定的に欠落している。

そういう企業はきっと危機的な状況に陥っているであろう。

戦前がどういう時代であったのか・・・なぜあのようなことになってしまったのか・・・絶えず問われるべきことだと思う。

この本の見方がすべてということではないであろうが、敗戦までの昭和史を考える上で、いいきっかけを与えてくれる本だと思う。

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