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Quality Economic Analyses Produces Winning Markets

小峰隆夫、他著:データで斬る世界不況‐エコノミストが挑む30問‐

昨年のリーマンショックから、気がついてみれば、早1年が過ぎた。リーマンショックに端を発した世界不況も一応底を打ち、現状では日本も欧米もアジアその他の新興国も落ち着いているように見える。

バブル崩壊、ITバブル、アジア金融危機など今までもいくつか経験してきたが、今回の経済危機は結局のところどういうものだったのかについて気軽に読めるものはないかと物色していて、見つけたのが、下記の小峰隆夫・他著の一冊だ。

データを豊富に使い、文体は柔らかく、そして冗長にならないように読みやすく書かれている。忙しい中で今回の世界不況についてその全体像と今後を知りたいと思っているビジネスマンにお薦めの一冊。

4822247449 データで斬る世界不況 エコノミストが挑む30問
日経BP社  2009-04-23


by G-Tools

内容は、今回の世界不況についてポイントとなる項目を30問設定し、それを5部に分け、6名で執筆している。その他に2つの補論と付表で構成されている。

  1. 金融危機の発生
  2. 危機の拡大
  3. 政策当局の対応
  4. 日本経済への影響
  5. 世界経済と日本経済はどうなるか

1問をだいたい10ページぐらいで説明しており、各問は独立して読める。そういう部分もあり忙しい人にはお薦め。

執筆時期が2009年の3月ということで経済がちょうど底を打っている時期であり、データとしてはそれ以前のデータを見ているので、今回の世界不況がどれだけ危機的なものであったが、非常に臨場感を持って伝わってくる。

実際、GDPは4〜6月期でプラスに転じたが、それは急速な生産調整から在庫調整が進んだために生産が回復したこと、また米国以外、アジア(特に中国)が持ち直していることなどにより輸出がある程度戻っているためである。来週16日にGDPの7〜9月期の速報値が発表されるが、プラスを維持するのか、それはどの程度なのかなど日本経済がL字型の回復なのか、U字なのかV字は無理なのかという点で注目される。

本書を読むと、世界不況は当初影響は軽微と見られていた日本経済により影響が大きかったこと、その背景には国際分業ではなく、国内に中小企業群を抱えていたため、輸出依存度は必ずしも高くなかったが、内需依存体質だったことが災いしたこと、日本経済はリーマンショック以前の状況を前提にしている限り、本格回復は無理であり、新しい時代に沿った新しい経済運営が必要であるということを最後に述べている。一部引用させていただくと・・・

・・・輸出立国を見直すのではなく、輸出も輸入ももっと拡大させることにより、得意な分野をさらに伸ばし、不得意な分野を海外に委ねていくことが必要だと言うことになりそうです。

実はこの部分を引用したのは、ここを読んだ時、80年代に欧米の企業が新しい世界分業体制を築き、選択と集中によりアウトソーシングを利用して、それにより競争力を蓄え現在に至っていることを思いだし、日本がそれに全く乗り遅れたことがマクロ経済上からも言えるのかと思ったかだ。

日本経済を立て直すには、自国の比較優位がどこにあるのか、あるいはどこで比較優位を発揮しようとしているのか、そのためにはどのような分業体制が望ましいのかをはっきりと構築することであり、それを実現するような各種経済政策を打っていく必要なのだ言うことなのだろう。

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