携帯電話がスマホにかわり、家にはパソコンが常備され、会社では1人一台以上パソコン割り当てられ、それが高速のネットワークにつながるこの時代・・・さらにセンサーが発達し、ヒト、モノ、空間あらゆるところからデータを収集し、ネットを経由し、あらゆる情報を24時間クラウドに蓄積できる時代となれば、社会がデジタルトランスフォーメーション(DX)を実行する必要条件は揃ったと言うところか。
その中で勃興してきているのがシェアリングエコノミーだ。シェアリングエコノミーは、その事業形態はバラエティに富んでおり、新規のビジネスもあるし既存のビジネスをDXを利用して個人が事業主となり新しいビジネスとして再構築する動きもある。
最近はそこに既存の大手企業も参入してきており、今後のシェアリングエコノミーの成長が注目される*1。
DXを実現することが今後の世界経済で競争力を維持し、存在感を確保する必要条件だとすれば、シェアリングエコノミーはそのDXを進める上で一つの重要な動きとして位置づけられる。大手企業が進めるDXに対して、シェアリングエコノミーを利用して個人が中心になりDXを進め(スモールDX)、社会全体のDX化を促進することになる。
さて、DXを推進しただけでは、世界経済の中で競争力を高め、存在感を大きくすることはできない。そのためには実際の市場シェアを取らなければならないが、それをするためにはDX後の世界ではその特性をいかに取り入れられるかにかかっている。
DXにより実現できる特性とはなんであろうか。どのような経済性を狙うことになるのか。それは、90年代から注目されている複雑系の分野の中で研究され、ベキ乗則を利用することだということが言われている。例えば、上の「スケールフリーネットワーク」もそれについて書かれている。
ネットワークの世界はこのベキ乗則が成り立つ世界。これについては、90年代の複雑系研究の中で注目され、研究されてきた分野だ。このベキ乗則を利用し、産業全体としてロングテールを形成するエコシステムを作り上げ、そのヘッド部分を取れるかで世界市場での競争力は決まる。GAFAと言われる米国の企業は、ヘッド部分でビジネスを展開している企業と言える。
ならばテール部分はいらないかというとそうではない。テール部分が大切なことはAmazonのビジネスを見ればロングテールがもたらすメリットがいかに大切かが理解できよう。これからDXを本格化させ、いずれかの市場*2でベキ乗則を活かし、ヘッドを取って、エコシムテムを形成できるか、ベキ乗則をビジネスに活かせるかがポイントになると考えられるが、どうすればそれが実現できるか明確には分からない。だから多くの試行錯誤が必要になる。大企業のR&D活動やイノベーション活動だけではなく、ベンチャーやスタートアップの取り組みをいかに活発にするかがポイントになる。シェアリングエコノミーによるDXはその試行錯誤を活発にする役割も担う。
個人や小規模な企業がシェアリングエコノミーを利用してビジネスへ参入することでプレーヤが厚くなり、それがベキ分布のロングテールを構成することになる。それはベキ乗則を活かしたビジネスモデルの試行錯誤を活発にするとともにロングテールを形成しエコシステムの底辺を支えることになる。
シェアリングエコノミーをはじめ、今後、DXを利用してベキ乗則を活かしたビジネスの展開には、ハブとしてより多くのプレーヤと関係性を作ることがポイントなる。そうすると、ビジネスのオープン化が重要*3になり、より多くのプレーヤとのハブになることが戦略の柱の一つになる。そのためには、自分の持つ技術を業界標準として普及させるための戦略が必要になるが、それを実現するためには特許や標準化の役割がポイントであろうことが明確になってくる。
ベキ乗則を前提にしたエコシステム、産業構造の構築を考えると、大企業によるシェアエコ事業者の吸収合併や提携は必ずしも最適戦略ではないのではないかと思わないでもない。