前回行ったのが去年の6月だった。いい店だった。また行きたいと思ったが、根岸、近くの駅はJR鶯谷駅というなかなかいく機会がない場所。そんなこんなで今回まで行けず仕舞い。
今回、久しぶりにお邪魔するということでちょっとドキドキしながら向かったが、時節柄、満席で入れないってことはないだろうとタカを括って引き戸を開ける。目の前に現れたのは数人の人が立っている姿・・・ありゃ?と思ったがちょうど入れ替わるところだった。
入り口すぐの角の席ならばすぐに座れるということでそこに通される。着席してすぐに「桜政宗、ぬる燗で」と一言。奥に声をかけて燗をつけてもらう。
お客が入れ替わったばかりで場が落ち着くまでなんとなくざわつく店内。定まらない・・・と思いながらしばし待つ。
お待ちかねの桜政宗が到着。早々にぐい呑みにとととっと注ぎ、グイッと飲み干す。美味い。
どうもこの日はリズムが悪く、お通しが出てくるのもちょっと遅れたタイミングだった。そして鍵屋さんでは初めて食べる心太。これがさっぱりしてていい。
さらに次のつまみは、タイミングを見計って、焼き物を頼む。くりから焼が食べたかったが、それはさすがに売り切れ。残念だけど、とり皮焼き、もつ焼き(レバたれ、ずり塩)をいただく。
鍵屋さんのメニューは有名なこれ。シンプル・・・いつきてもこれだけ。酒を飲みにきているので、これだけでも十分だのだ。今回は頂かなかったが、自分のおすすめは、冷奴。豆腐が美味い。
今回は冷奴ではなく、煮奴を頼もうかと思ったけど、周りのお客人たちが続け様に煮奴を頼んだので、自分はとり皮なべをいただく。注文の時、「とり皮なべください」と頼むと、ご主人があの大きい声で「皮なべね!」と受けてくれて、奥に向けて「皮なべ、一丁!」と言ってくれる。このご主人の張りのある声がまた酒を美味くする。
あま塩っぱい汁に玉ねぎ、お麩、豆腐などが入り、その中に主役のとり皮がいい感じの色に染まって美味しそう。お手しょによそってそこに薬味のネギをちょこんと乗せて食べる。これが美味い。ネギって脇役だけど、これがないと味が締まらない。甘塩っぱい汁にこのネギの味が合う。
この間にもお酒はスイスイ胃袋の中に落ちていく。桜政宗、大関、菊正宗ときて、さて今日はということで菊正をお変わりした。ならばとつまみは合鴨焼きだ。
強火でサッと焼き上げられる串焼きはどれを食べても美味しい。その中で合鴨焼きはボリュームもあり、特別な存在だ。ここでもネギがポイント。ネギと合鴨の肉を一緒に食べて、肉とネギのハーモニーを楽しむ。
そしてお酒をグビリと飲む。口の中に広がる酒の香りと合鴨の残り香・・・いいねえ。鍵屋さんの店内は昭和といっても30年代か40年代、それよりも前かも、の雰囲気がいっぱい。これがまたいい。
この店内の雰囲気だけでも十分つまみになる。そういう雰囲気というか、歴史というか、情景というか、いいものが漂っている。こういうところで飲む酒は格別だ。雰囲気にしばし浸りながら、余韻を楽しむ。
お勘定(女将さんは、お会計という)を終え、名残惜しいが席を立つ。店を出るとこの鍵屋の佇まい。これだけでもほっとする感じだ。
さて次回はいつになろうか。そんなに間を開けずに来たいものだ。
ごちそうさまでした。