この本の最大の魅力は、シェアライフを実践している人の手による著書だということだ。自分で経験し、かつ、全国のシェアライフをしている人たちとふれあい、政府の政策に関わる。日々の営みがシェアライフそのものと言ってもいいだろう。
その著者が書いた一冊・・・最初は啓蒙書として読んでいたが、読み進むにつれてこれは啓蒙書というよりシェアライフを通してみた現代社会に対する問題提起の書として読めると思った。
自分らが普段生活している社会、財やサービスをシェアするシステムとしては、市場メカニズムがある。そうなんだよ、日々、お金を払ってモノやサービスを売買しているけど、これは共有するシステムの一種だ。
本書が問うているのは、その社会においてなぜ今シェアライフ、シェアリングエコノミーなのか?ということだ。
本書の構成は以下の通り。
- はじめに
- 序章 私のシェアライフ(60人の家族、100の家、シェアする社会の登場、気づけば、私はずっと「家族」を探してきた、個人の意思よりも組織の理論が尊重される社会への違和感、シェアとは希望である)
- 第1章 新しい時代(前提が失われた時代に生きる私たち、より人間が人間らしく生きるには、個人中心の時代の到来、「豊かさ」のパラダイムシフト、私から私たちへ)
- 第2章 新しい価値観(「シェア」とは?、見えない価値が価値になる、シェアの本質とは「つながり」)
- 第3章 新しい生き方(シェアで「働き方」が変わる、シェアで「住む・暮らし方」が変わる、シェアで「旅」のスタイルが変わる、シェアで「人生100年時代」に備える、シェアで「家族・子育て」の概念が変わる、シェアで「学び」が変わる)
- 第4章 つながりが社会を救う(日本が直面する課題、シェアで地域課題を解決する、世界中で広がるシェアリングシティ、新たなセーフティネット)
- 第5章 シェアするマインド(シェアライフは「信頼」で成り立つ、信頼できる・信頼される自分になろう)
- 終章 シェアの未来(資本主義型と持続可能型2つのシナリオ、ルールと社会制度の課題)
- おわりに
- シェアライフを今すぐ始めたい人へ
章の下の節の見出しまで書き出してみたが、どうだろうか。自分のこれまでの体験から始まり、シェアリングエコノミーが出てきた時代背景を語り、シェアリングエコノミーの実際を語る。用語の使い方は少々甘いところがあるが、それを考慮してもなお読んで自問自答し、考えるための問題提起の書としての価値は十分だ。
4章以降では、シェアリングエコノミーが果たしつつある役割を語り、それを実践するための大切な要素として「信頼」を語る。そして最後にシェアリングエコノミーの将来を考える。著者が訴えたかったこと・・・それを行間から読み取るようにじっくり読みたい。
市場メカニズムがあるにもかかわらず、なぜ今、シェアなのか、市場メカニズムの限界か、あるいは社会のそこここが錆びついてしまったためか、その原因はなんなのか。そうやって考えてくると、シェアリングエコノミーは社会変革のツールであり、ICT分野から見れば、市井の端々までデジタルトランスフォーメーションを行き渡らせる手段でもあり、シェアライフはそれを実践するということだろう。
持続可能な地域のつくり方――未来を育む「人と経済の生態系」のデザイン
- 作者: 筧裕介
- 出版社/メーカー: 英治出版
- 発売日: 2019/05/09
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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シェアライフ、シェアリングエコノミー、シェアリングビジネスという社会変革のツールがなぜ今必要なのかという点を考えるとき参考になるのが、SDGs(Sustainable Development Goals)という考え方だ。
持続可能な地域のつくり方――未来を育む「人と経済の生態系」のデザイン
- 作者: 筧裕介
- 出版社/メーカー: 英治出版
- 発売日: 2019/05/09
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その参考書としては、ここに挙げた「持続可能な地域の作り方」が参考になる。これについてはまた別途ご紹介したい。